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第0話 辿り着いた春
春の暖かい日差し。
少し傷がついてしまったオルゴールを二人で聴いていた。
隣のエルリックに話しかける。
彼も気持ちよさそうに目を閉じて、私の肩にもたれ掛かっていた。
そのつむじをツンツンとつつきながら話しかける。
「そういえば、入学式の時さ。結構無茶苦茶な事言ってたよね?」
「言うなよ……。必死だったんだ」
少し音が外れたオルゴール。
桜の花びらがそれに落ちた。
「でもビックリしたんだからね。いきなり知らない人に声かけられたと思ったら春樹だったなんて」
一際、強い風が吹いた。
私は思わず自分の髪を抑えた。
見ると、巻き上げられた花びらが彼の髪に乗っていた。
取ってあげようとする。
けれど。
エルリックの耳が真っ赤で笑みが溢れる。
もっと照れさせて……安心させてあげよう。
彼が、あの時抱えていたすべてを癒してあげられるように。
「でもね、あの時は言えなかったけど。また会えて運命的だなって……そう思ったんだよ」
――それは数年前のこと。




