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第六話 社畜、改善案を提出する


──ギルドの片隅、薄暗い会議室。

机の上には山積みの報告書と未処理の依頼票。

俺はその中で、腕を組んで深くため息をついていた。


「……で、この書類の山、何日分だ?」


受付嬢が死んだ魚のような目で答える。


「えっと……今月分です。先月分も……物置に……」


律が机に手を置き、にやっと笑う。


「おー、直樹の好きそうな地獄案件だな!」


「お前、俺の性癖をブラック企業仕様にすんな」


ルナは壁にもたれて、面白そうに俺を見ている。


「ほら、あんたの“社畜魂”見せどころやん?」


「やるしかねぇだろ……!」


──ガタンッ!

椅子を引き寄せ、机に座り、俺は書類を仕分け始める。



【社畜魂・発動】

・依頼票を重要度別に自動色分け

・期限切れ依頼の破棄提案

・人員配置シミュレーション



「……なんで色がついてるの?」


セレナがきょとんと尋ねる。


「視覚的に優先度がわかるようにだ。赤は緊急、黄色は要確認、青は定期業務」


「なんかギルドじゃなくて事務所みたい……」


「言うな、それが一番刺さる」


律は暇そうに足をぶらぶらさせながら、

「じゃ、僕はお菓子買ってくるわ」と出て行こうとした。


「お前も働け! “仲間”だろ!?」


「僕、仲間ってポジションだから! 作業員じゃないから!」



──午後。

依頼掲示板前で、俺は提案書をギルド幹部に叩きつけた。


「これ、なんだ?」


「改善案。依頼管理を効率化して、報酬ピンハネを半分に減らせる仕組みだ」


幹部が鼻で笑う。


「……誰がそんなもんやるかよ。俺らが損するだろうが」


「損? 違ぇな、将来の利益だ」


ルナが後ろから、わざと大きな声で煽る。


「まぁ、目先の小銭のために人材潰すアホもおるけどな」


幹部の目が細くなり、空気がぴりっと張り詰めた。


「……テメェ、潰されてぇのか?」


セレナがすっと前に出る。

その翠眼が一瞬、獣のように鋭く光った。


「直樹さんは……間違ったことを言ってません」


幹部は一瞬たじろぐが、

「……覚えとけよ」と吐き捨てて去っていった。



──その日の夜、宿の一室。


律がベッドに寝転びながら、呑気に言う。


「なぁ直樹、明日の依頼どうする? またゴブリン?」


「いや……もうちょっと金になるやつがいいな。ピンハネあっても残るくらいの」


セレナは膝を抱え、少し俯きながら呟く。


「……私、もっと強くなりたいです。あの日みたいに、守れなかった後悔はもう嫌だから」


ルナは窓際で月を見上げ、ニヤリと笑った。


「おもろいなぁ、あんたら。転生者って、ほんま運命に振り回される生き物やわ」


「運命ねぇ……」


俺は天井を見上げ、拳を握った。


「じゃあ、振り回されるんじゃなくて……振り回してやるさ」


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