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第一話 俺の転生初日がすでにカオスな件について


「ふう……とりあえずこれでマシにはなったな」


全裸転生から数分後。

俺は今、落ち葉と蔓と謎の白い粉(正体不明)でできた“精霊印の即席服”を身にまとっていた。


「なあルナ。これ……すごいけど……なんかチクチクするんだけど」

「贅沢言わんの。てかアンタ、そもそも“全裸でスライム囲まれて”たやん。人としての尊厳ゼロやで?」


「それ言わないで」


助けてくれた恩人(?)に向かって文句も言えず、俺は微妙にチクチクする服を直しながら、森を歩いていた。


「とりあえず水が欲しいな……。喉カラッカラだ」

「ちょうどええ池があるで。案内したる」


ルナの指(前足?)さす方向へ向かうと、小さな池がひっそりと佇んでいた。


「助かる……ゴクッ……ぷはあっ……!」


命の水。生き返るとはこのことだ。

だが、ふと水面に目をやって──


「…………誰?」

「いや、アンタやがな」


そこには、見たことのない男が映っていた。

青い髪、金色の目、そこそこ整った顔立ち──え、俺、こんな顔だったっけ?


「俺……転生して……少しかっこよくなってる……!? 社畜やめたら人生、整いすぎでは……!?」


「たまーにおるんよな。魂の性質に体が引っ張られるタイプ。まあ、その顔やったら悪いことにはならんやろ」


「悪いことって何だよ……?」



そのまま池のそばで休憩していた俺に、ふと疑問が浮かぶ。


「なあルナ。なんでお前、俺を助けてくれたんだ?」


「んー……面白かったから?」


「軽っ!!」


「だってアンタ、全裸で転生してスライムに囲まれてパニクってんのに『誰か助けて』って叫んでるの、ちょっと笑ってまうやん?」


「死にかけてたんだけど!?」


「でも、そのへんのやつと違って、目が死んでなかったんよ。なんやろ、“まだ諦めてない人間”って感じしたわ」


「え……」


「せやから……そういうの、ちょっと見てたいなーって。別に深い理由ちゃうけど、悪くはないやろ?」


そう言って、ルナはふわっと俺の肩に飛び乗った。


「……で、本題やねんけど。アンタ、うちの使い魔にならへん?」


「え!? 逆じゃないの!? 精霊って、人間の使い魔になるんじゃ!?」


「うちの世界では、精霊が契約主になんねん。おもろいヤツにだけ、特別に声かけるんよ。つまり、うちはアンタをスカウトしたってわけや」


「いやいや、重すぎない!? なんか試されてない!?」


「安心せい。“使い魔契約”って言うても、そんな大したことやない。ちょっと魔力流し込んで、念を込めるだけや。副作用もないし、パワーアップもできるし、うちとも話しやすくなるし、お得やで?」


「完全に勧誘文句じゃねぇか……」


「いややったらええけど、契約切ってから死んでも知らんで?」


「脅し入ってんじゃねーか!」


──そんなこんなで、言葉巧みに説得され、俺は“使い魔契約”という謎儀式を結ぶことになったのだった。



そしてその数時間後。


「なあルナ、なんか人の気配しないか?」


「うん……向こうの路地に……あれ、誰か倒れてるで」


ルナが指さした先、木の影にうずくまる小柄な少女の姿。

赤い髪、細い手足、ボロボロの服。見るからに衰弱してる。


「おい! 大丈夫か!?」


俺が駆け寄っても、彼女はうっすら目を開けるだけで、ほとんど動かない。


「……た、食べ物……」


「うわ、ガチでヤバいやつだこれ。ルナ、何かないか!?」


「果実持ってるで。ほれ」


ルナから受け取った果実を少女の口元に持っていくと、彼女はゆっくりとそれをかじり──


「……ありがと。……私は、セレナ・ビスマルク。……滅ぼされた……魔王の、娘……です……」


「………………は?」


その場に吹きすさぶ風。


「ちょっと待て。魔王って……倒されたって、え、マジで?」


「うん、わりと最近の話やで。え、アンタ知らんかったん?」


「初耳だよ!!! ていうかそれ、ファンタジー世界的には超重大ニュースじゃね!?」


──転生早々、精霊と契約し、裸でスライムに囲まれ、

倒れてた女の子は魔王の娘で、魔王はすでにこの世にいない。


俺の異世界人生、出だしからカオスすぎる──。


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― 新着の感想 ―
Xから来ました! 全裸転生はわろた 精霊も何で訛ってるねん! まぁ悪い奴じゃなさそうだし、どうなることやら(´・ω・) ブクマ、星付けておきました!
ここまで、本当に一気見してました! 文体が読みやすくて、いいですね! あと、ギャグが面白いです! 個人的に「全裸転生」「……滅ぼされた……魔王の、娘……です……」が思わず、声を出して笑ってしまいまし…
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