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第十八話 試される旗 その一


森の奥。戦いの火蓋が切られた。

「黎明の旗」の前に立ちふさがったのは、既存の中堅ギルド《鋼角の誓い》。

その一団を率いるのは、かつて俺に「希望を抱くな」と言い放った、中年職員──ダグラスだった。


彼の背中は今も疲弊したまま、しかしその視線は鋭く俺たちを射抜いている。

「……言ったはずだ、新参ども。ここで夢を見るなと。だが……もし本気なら、示してみろ」


ダグラスがそう告げると、彼の若い部下二人が前に出た。

一人は全身を重厚な鎧で固めた巨漢戦士。

もう一人は漆黒の弓を携えた鋭い眼差しの女弓使いだ。


「律、セレナ……行けるか?」

俺が問いかけると、律は胸を張って親指を立てた。

「任せろ直樹! イケメンの見せ場はここからだ!」

「わ、私だって……! もう怖がってばかりじゃいられません!」

セレナが震える指先で杖を握りしめ、決意を込めた瞳を向ける。


律VS鎧の戦士


「ガハハッ、ガキが一人で俺に勝てると思うか!」

鎧の戦士が大剣を振りかぶる。空気が震え、律は慌てて飛び退いた。


「うおっ!? ちょ、でけぇなこの人!?」

光の障壁を展開する律。しかし衝撃で地面が裂け、障壁に亀裂が走る。


「力押し……律の苦手な相手やね」

ルナが横で呟いた。

確かに、賢者である律の光魔法は支援・防御向き。真正面からの膂力勝負は分が悪い。


「うおおおっ! まだまだぁ!」

律は光の槍を形成し、突撃する。しかし鎧の戦士は盾で受け流し、重いカウンターを叩き込んできた。

「ぐあっ!」

律の身体が地面を転がり、木の根に背中を打ちつける。


「律!」

俺の声が響くが、律は苦笑して立ち上がった。

「……っへへ、直樹。ちょっと痛いけど……まだイケる!」

その笑顔の奥に、焦りの色が混じり始めていた。


セレナVS女弓使い


一方、セレナの前では女弓使いが弦を引き絞っていた。

「火の魔女か……相性は最悪ね。私の矢で、その火を掻き消してやる」


「なっ……!」

セレナが放った火球が、矢羽根に仕込まれた氷魔法によって弾き飛ばされる。

ジュッ、と蒸気が立ち昇り、互いの魔力が拮抗する。


「ひぃっ……!」

次々と射られる矢に、セレナは必死に防御魔法を張る。

だが、氷の矢は火の盾をすり抜け、頬を掠めた。白い肌に赤い線が走る。


「セレナ!」

俺の叫びに、彼女は怯えた瞳をこちらに向ける。

けれど、その足はもう逃げ場を探していた。


「……やっぱり、お前たちはまだ未熟だ」

腕を組んだダグラスが、冷たく言い放つ。

「希望を掲げるには、力が足りん」


その言葉が、胸に重く突き刺さる。

律は押され、セレナも追い詰められていく。

まるで「黎明の旗」が試されているかのように──。


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