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第十五話 ギルド設立申請!



「──というわけで! 我らが新しいギルドの名は……」


律が両手を広げて宣言する。


「“ブラック企業撲滅ギルド”!!」


「却下ァァァァッ!!!」

俺は律の頭にすかさずチョップ。乾いた音が響く。


「痛っ!? え、いい名前じゃね? めっちゃ魂こもってるし!」

「それ、看板に書いたら敵しか寄ってこねぇだろ!」

「じゃあ“セレナちゃんファンクラブ”は?」

「もっとダメだわ!!」


セレナが顔を真っ赤にして慌てふためく。

「ふ、ファンクラブって……そ、そんなの……!」

ルナは尻尾を揺らしながらニヤニヤ笑っていた。

「まあ名前は後で決めよか。まずは形にせんと」



俺たちは町の役所へ向かった。

中は石造りの荘厳な建物で、受付には上品な制服を着た女性職員たちがずらり。


「はぁぁぁ……天国か」

律が鼻の下を伸ばして前のめりになる。


「お前、態度に出すな!」

俺は小声で牽制するが──遅かった。


律は迷わず窓口に突撃し、にっこりと笑顔。

「お姉さん、冒険者カードにサインしてもらえます? できれば“僕のハート”にも」


「は、はい??」

職員の女性が固まった瞬間──


「律ゥゥゥ!!! 何してんだバカ!」

俺は律の後頭部に容赦なくチョップを叩き込んだ。


ゴンッ。


「ぎゃあああ!? 頭割れるぅぅ!」

「す、すみません! こいつ病気なんです! 社交性の病気で!」

俺は必死で頭を下げた。


セレナは顔を覆って穴に入りたいといった表情。

ルナは机の上に乗ってお茶を飲みながら、くすくす笑っていた。


「ほんま、ええコンビやなあ」



なんとか騒ぎを収め、申請書に必要事項を書き込む。

代表者名「安心院直樹」、活動目的「冒険者の安全と健全な労働環境の確保」。

書きながら、妙に背筋が伸びる。


(……いよいよだな。俺たちの“ギルド”が形になる)


職員が書類を受け取り、にこやかに告げる。

「審査には数日かかりますが、問題なければ正式にギルドとして登録されます」


俺たちは揃って深々と頭を下げた。



次に向かったのは、不動産屋。

カウンターには丸眼鏡の小太りな中年男性が座っており、帳簿をめくりながら俺たちを見る。


「ギルド拠点を探してる? ふむ、条件は?」


「広さはそこそこ。仲間で集まって休める場所と、ちょっとした訓練場がほしいです」


「なるほどなるほど……では、こちらなど」


提示されたのは──


・郊外の廃屋(安いがボロい)

・町外れの古い倉庫(広いけどジメジメ)

・元酒場の建物(二階建て。厨房あり。ちょっと高い)


律が即座に叫んだ。

「酒場だろ! 絶対ここ! 居酒屋兼ギルドとか最高じゃん!」


「お前が飲みたいだけだろ!!」

「でもさ、酒場って冒険者集まるし拠点にピッタリじゃね?」


ルナがうんうんと頷く。

「確かに。雰囲気あるし、あんたららしいやん」


セレナも小さく笑った。

「私……みんなと一緒にごはん作れるなら、いいな」


──それを聞いた瞬間、俺は決めた。


「……よし。俺たちの拠点は、元酒場だ!」


不動産屋の親父が満足げに笑い、契約書を差し出す。

「いい選択だ。ここから新しいギルドが始まるんだな」



契約を終え、外に出ると──

空は夕焼けに染まり、街の喧騒が心地よく耳に入る。


律は拳を握りしめ、にかっと笑った。

「やべぇ! ついに僕たちのギルドができるんだな!」


セレナは少しはにかみ、胸に手を当てた。

「なんだか……夢みたい」


ルナは尻尾をゆらゆらと揺らしながら、にやり。

「さて……ここからほんまに、“戦い”やで」


俺は胸の奥で強くつぶやいた。


(ジークさん……俺たち、必ずこのギルドを本物にしてみせます)


夕焼けの光の中、俺たちは未来に向かって歩き出した。


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