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第十二話 試練の襲来



森に夕陽が差し込み、影が濃くなる。

今日の修行も終わりかと、俺たちがぐったりしていたその時だった。


──ズシン。


地響き。枝葉がざわめく。


「っ……来るぞ!」

ジークが槍を構えた瞬間、森を割るように巨大な影が現れた。


全身を黒い毛で覆った、二メートル超えのオーガ。

手にした棍棒を振り下ろすと、地面が砕ける。


「おいおい! これ訓練の範囲超えてない!?」

俺が慌てて叫ぶと、ジークは冷ややかに言った。


「いい機会だ。──お前たちの成果、見せてみろ」


そう言って一歩下がる。

完全に、試験扱いだ。


「ちょ……師匠!? 置き去りにしないで!?」

律が青ざめる。セレナは震える手で杖を握った。

ルナだけが「ほらほら、デカい玩具きたで」と楽しそうに尻尾を揺らしている。


俺は息を吸い込み、叫んだ。

「行くぞ! ここが踏ん張りどころだ!」



最初に飛び出したのは俺だ。

木剣を握りしめ、足元に石を拾って投げつける。


「おらぁッ!」

石がオーガの額に当たり、ほんの一瞬、動きが止まる。

その隙に間合いへ──


「ぐっ!」

棍棒の一撃。風圧だけで吹き飛ばされ、俺の背中は木に叩きつけられた。


肺から息が抜ける。視界が揺れる。


(やべぇ……! このままじゃ──)


「直樹ッ!!」


俺の目の前に飛び込んできたのは律だった。

彼の詠唱が光となり、オーガの腕を弾き返す。


「てめぇに直樹は触らせねぇ!!」


イケメンすぎるだろコイツ。

思わず「お前、主人公かよ!」って言いそうになった。


その後ろで、セレナが杖を掲げる。

翠の瞳が真剣に光った。


「今です……! 《ファイア・ランス》!!」


炎の槍が一直線に飛び、オーガの脚を貫く。

巨体がぐらりと揺れ、膝をついた。


「ナイス、セレナ!」


俺と律は視線を交わす。言葉は要らなかった。

一緒に駆け出し、俺が囮になって正面に飛び込む。

棍棒が振り下ろされる瞬間──


「今だ律ッ!!」


「任せろォッ!!」


律の詠唱が炸裂。

爆裂の光がオーガの頭部を弾き飛ばし、その隙に俺の木剣が渾身の力で突き刺さる。


「おおおおおおッ!!!」


二人の力が重なった瞬間──

オーガは轟音を立てて崩れ落ちた。



……静寂。

森に残ったのは俺たちの荒い息と、倒れた巨体だけだった。


「……勝った、のか」

俺が木剣を杖にして立ち上がると、律が横で笑った。


「ははっ……やっぱ僕ら、最強タッグだな」

「言ってろ……でもありがとな、律」


セレナはへたり込みながらも、嬉しそうに微笑んでいた。

「よかった……みんな、無事で……」


ルナは尻尾を揺らし、にやり。

「ふふ。ようやったやん。ちょっとは冒険者っぽくなったやろ」


ジークは腕を組み、静かに頷いた。

「……合格だ」


その言葉に、俺たちは思わず顔を見合わせた。

疲労でボロボロだが、胸の奥は熱く満たされていた。


(ああ……ここからだ。俺たちは、もっと強くなれる)


夕暮れの森。

俺たちは確かに、一歩前へと進んだ。


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