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プロローグ:過労死、異世界、そして全裸


──人は、何のために働くのか。


金のため?

生活のため?

夢のため?

──それとも、会社のため?


安心院直樹あじみ・なおき、28歳。

気づけば俺は、週7勤務・月残業150時間・年休ゼロのブラック企業戦士として、生きる屍みたいな日々を送っていた。


今日も変わらず、誰もいない深夜のオフィス。

キーボードを叩く指が震える。目の奥がズキズキ痛む。

横では、同じく終電を逃した茶髪の同僚──いや、幼なじみの興梠律こうろぎ・りつがコンビニ飯をすすっていた。


「なあ直樹、今の人生に10点満点中、何点つける?」

「マイナス50点」

「草」


──他愛もない会話だった。

だけどその瞬間、ふっと世界の色が薄れていく。


あれ? おかしいな、急に息が……できな──



気がつくと、俺は……森の中で寝転んでいた。


いや、森の中で──

全裸で寝転んでいた。


「…………は???」


意味がわからない。

パニックになる頭の隅で、異常に澄んだ空気、どこからか聞こえる小鳥のさえずり、そして目の前にぷるぷる震える謎の生き物。


「スライム……!? え、マジで?」


状況が把握できないまま、ぞろぞろとスライムが俺の周囲を取り囲む。


うわ、これ、完全に詰んだやつ。

転生して即再死亡コースとか、冗談じゃないんだけど!!


「誰か……誰か助け──」


──そのときだった。


空に、一筋の風が走った。

そして、ふわりと宙に浮かぶ、小さな影が現れる。


「はぁ……しょうがないなあ。お前、なんか……おもろいし、助けたるわ」


見下ろすように現れたのは、

薄紫色のふわふわした毛並みに、ピンクのリボンをつけた子猫のような生き物──いや、精霊?


「誰だよお前……」

「ルナ。風と水と変化を司る精霊様や。アンタ、見た感じ転生者やろ。ウチと会えるなんて超ラッキーやで?」


呆れたように言いながら、彼女──ルナは手(前脚?)をかざすと、スライムの群れを一瞬で吹き飛ばし、落ち葉から器用に布を生成し、俺の裸をとりあえずカバーした。


「すげぇ……すげぇけど……」

「ほら、ぼさっとしてんと行くで。転生したってことは、なんか理由があるんやろ?」


理由、ねえ。

思い当たる節は……山ほどあるよ。


だけどひとつだけ、確信してることがある。


──俺は、もう二度とあんな働き方はしない。


そう誓ったばかりの俺に、

このあとさらなる“ブラックな現実”が待ち受けているなんて、

この時はまだ、知る由もなかった──


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― 新着の感想 ―
ルナをもふもふしたい欲求は一先ずおいて置くとして。 興梠さん?ここで終わりじゃないよね!? ここで終わるにはインパクトが強すぎた!!この先に必ず出てくることを信じて!!読みます!
Xから伺いました! 精霊様のルナちゃん、子猫のような見た目でなんで関西弁……笑 この先が気になる始まりですね。労基とかなさそうな異世界で、ぜひホワイトな職場を作ってもらいたいです!これからも楽しみにし…
Xから来ました。 突然死は本当に洒落にならないので、働き方改革が上手く進むことを切実に願います。 あらすじに出てきた律さんとの再会が愉しみです♨ 今後も追うべく、ブクマさせていただきました! 良…
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