表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
忘れ谷編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/178

ダンジョンの朝と考察

 ——そして翌朝。


 「……えっ」


 ハルが目を覚ました瞬間、思わず声を漏らした。天井だと思っていた夜空はすっかり姿を変え、まるで本物の太陽のような光が、草原全体に降り注いでいる。星に包まれた空間がそのまま朝を迎えるとは思っていなかったハルは、眩しさに目を細めながらも、その光景にしばし見入った。


 「ようやく起きたわね」


 ロザが穏やかな口調で声をかける。すでに身支度を整え、朝食の準備を進めていた。


 「ふふっ、よく眠れたみたいですね」

 サイルも優しく微笑みながら、湯気の立つカップを手渡してくれる。


 「お、おはようございます……」


 寝起きのハルがテントの外へ出ると、涼やかな風が頬をなでた。


 「おーい、ハルー! 見てろよー!」


 外では、リュカの元気な声が響いていた。草原の一角、帰還陣のそばでは、彼がクロを相手に稽古の真っ最中だ。


 「そらっ、そこっ!」


 「くっ、なんでそれを避けられるんだっ……!? クロ師匠すげえ!」


 跳ねるように動くクロは、スライムの身体をしなやかに操りながら、リュカの突きを見事にいなし続けている。


 「拙者の動きは、読んでも捉えきれぬようにできておるでござる」


 「ずるい……ぬるぬる反則だー!」


 「戦場に“ずるい”も“反則”もないでござるよ、リュカ殿。さあ、次はどうくる?」


 「やってやるぞーっ!」


 アオミネはその様子を少し離れた場所から見つつ、つぶやいた。


 「……朝から元気すぎるな、あいつは」


 ハルはそんな光景を見つめながら、ぽかんと口を開ける。


 (いつの間に、クロさんは“師匠”になったんだろう……)


 そんな素朴な疑問を抱えたまま、ロザが差し出してくれた水桶の前にしゃがみこむ。


 「顔を洗うと、すっきりするわよ」


 「……はい、ありがとうございます」


 冷たい水が肌に触れた瞬間、眠気がふっと引いていく。朝の光と草の匂い、遠くから聞こえる元気な掛け声——


 ハルは静かに目を開け、今日という新しい一日を感じていた。


 ここがダンジョンの中だということを、すっかり忘れてしまうほどの、穏やかで平和な朝だった。


 「さて。そろそろ、二階層での情報整理といきますか」

 テント前で腕を組んでいたサイルが、場を締めるように口を開いた。


 その声に応えるように、仲間たちが次々と集まってくる。


 「本当に、不思議なダンジョンよね」

 ロザが、まだ湯気の立つカップを手にしながら言った。

 「よく考えられていて、私たちに“解かせよう”とする意志すら感じるわ。やっぱり、自然発生というより……人為的なものかしらね?」


 「……俺も思ってた。あのギミックの精度、どう見ても自然発生じゃない」

 アオミネは腕を組んだまま、目線だけを下げて言葉を続ける。

 「作り手の意図が透けて見えるっていうか……“試されてる”感じがしたな」


 少し間を置いてから、彼は手元の包みを軽く叩く。


 「ま、とにかくドロップ出してみよう」


 それぞれが、自分の前にそっとアイテムを置いていく。


 リュカが取り出したのは、洋館の書斎で見つけた、水色に光る液体の瓶。

 「これは、幻だらけの棚の奥に置いてあったやつです。……毒じゃないと思うけど、なんか怖くて中身は触ってません」


  ハルは、慎重な手つきで一冊の本を取り出した。古びた装丁に刻まれたタイトルが、淡く光に浮かび上がる。


 「《歪時空干渉術における多重因果操作と収束転位》……これが、魔導士が現れるスイッチになっていました」


 その言葉に、周囲の空気がわずかに張り詰める。


 一方で、サイルは腰のポーチから布に包まれた小片を取り出し、そっと地面に並べた。


 「こちらは、昨日みんなで手分けして集めた魔導鉄の破片です。おそらく、あの魔導士たちの残骸……もしくは、装備の一部でしょうね」


  金属の破片には、それぞれ異なる形と魔力の残滓があり、光を反射してかすかにきらめいていた。


 その様子を見つめていたロザが、静かに腰のポーチから一束の紙片を取り出す。


 「これも、見ておいて損はないと思うわ。洋館の書斎のテーブルに置かれていたメモ……空間転移や時空干渉、それに“魔物の発生過程”に関する仮定が書き連ねてあるの。手稿というよりは、実験記録の断片みたいなものね」


 彼女が差し出したメモは、紙の縁が少し焦げていたり、魔力の干渉で文字が歪んでいたりと、使い込まれた研究資料の雰囲気を漂わせていた。


 それを見ていたアオミネが、腕を組んで目を細める。


 「……妙な構成だな。液体の瓶に、古書、魔導鉄の破片に、それからその手稿……偶然にしては、素材の組み合わせが“できすぎ”てる」


 彼は唇の端をわずかに吊り上げた。


 「偶然とは思えませんね」

 サイルが膝をつき、瓶を光に透かして眺めながら、静かに言った。

 「このダンジョン自体が、何らかの“実験場”だった……そんな仮説すら浮かんできます」


 会話の中に、探究と不安が交錯する。


 「確かに、“実験場”って考えると、しっくりくるわね」

 ロザが細く目を細め、重ねるように呟いた。

明日も23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

https://ncode.syosetu.com/n3980kc/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ