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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
忘れ谷編

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臨時拠点の設置

 その頃、ハルとリュカはというと——

 草むらに膝をつき、夢中で魔導鉄の破片を拾い集めていた。


 「この色、見て! ちょっと青みがかってるよ!」

 「おっ、本当だ!これは前のとは違うかもな。もしかしたら合金かもな? エドさん、絶対テンション上がるやつだろ、これ!」


 ハルは袋の中身をそっと整えながら、ふふっと笑った。

 「これでまた、何か新しい発明ができるかも……。ツムギお姉ちゃんにも見せたいなぁ」


 その時——


 「ハル君、リュカ君。ちょっとこっちに来れるかしら?」

 ロザが優しくも芯のある声で呼びかけてきた。ふたりが振り向くと、帰還陣の近くで手を軽く振っている。


 「はーい!」

 リュカが元気よく立ち上がると、ハルもすぐに続く。


 ふたりが帰還陣のそばまで駆け寄ると、ロザはその目をふたりに向け、穏やかに語りかけた。

 「魔導士戦お疲れ様。よく頑張ったわね。……それでMP回復も兼ねて、2、3日ほど、このセーフティゾーンで休もうかと思っているのだけれど、どうかしら?」


 彼女の声には、緊張を解きほぐすような柔らかさと、長い戦闘の疲れを労わる気遣いが滲んでいた。


彼女の声には、緊張を解きほぐすような柔らかさと、長い戦闘の疲れを労わる気遣いが滲んでいた。


 「はい……確かに、僕もMPかつかつです……」

 ハルが苦笑いを浮かべながら、頭をかいた。


 「実は、私もギリギリで……」

 サイルもやや困ったように笑い、そっと自分の指先を見つめる。

 「みんなにヒールをかけたいのですが、少し休まないと、回復の魔法もうまくいかないかもしれません」


 「それなら、無理せずいこう」

 アオミネが腕を組みながらうなずいた。

 「マナポーションも使えば減る一方だ。温存できるときは、温存した方がいい」


 「えっ、俺はまだ動けるけど?」

 リュカが元気よく手を挙げ、にかっと笑う。

 「魔法もたぶん、あと何発かいけるかも!」


 その勢いに、ハルとサイルが顔を見合わせた。


 「……体力お化けだな」

 アオミネがぼそっと呟き、隣でクロがこくりと頷いた。

 「確かに。回復も早ければ減るのも遅い……まこと、天賦の資質でござるな」


 リュカは嬉しそうに笑いながら、「褒められてる気がする!」と自信満々に胸を張った。


  「じゃあ、早速——このあたりに臨時拠点りんじきょてんを設けましょうか」


 ロザが帰還陣の近くまで歩み寄り、足元の草を踏みしめながら周囲を見渡す。柔らかな月光のような星の明かりが地面を照らしており、視界は思った以上に悪くない。


 「こういう時はね、万が一の事態に備えて、帰還陣の近くに野営地を構えるのが基本なの。すぐに撤収できるし、緊急時の対応も早くなるから」


 ロザの声は穏やかで、それでいて指先はすでに手際よく荷物の中を探っていた。


 「なるほど……確かに、そう言われてみれば!」

 ハルが感心したように目を輝かせる。


 一方で、リュカはロザたちの装備に目を丸くしていた。


 「……え? それ、テントなんですか? あんな小さな袋に入ってたのに!?」


 「うむ、小型収納魔具こがたしゅうのうまぐの一種でござるな」

 クロが軽やかに解説する。

 「対象物を一定サイズまで圧縮し、所定の封魔符で保持する技術……“無限収納”の類とは違うが、普及はしておる」


 「すごい……魔導具ってほんと便利だなぁ……」

 ハルは地面に広げられた寝具を見つめて、思わずつぶやいた。


 テントの骨組みは、まるで自動展開するかのようにぱたぱたと立ち上がり、布地が自然に張られていく。ほんの数分で、六人分が入れる居住性のある拠点が完成していた。


 「わー……これ、絶対みんなが好きな仕組みのやつだ……」

 ハルはぽつりとそう言いながら、周囲の構造をまじまじと観察していた。


 リュカは地面に腰を下ろしながら、自分のくたびれた荷物袋をぽすぽすと叩いていた。

 「俺のもこんな風にならないかなぁ……。パッと開いて、シャキーンって立って……かっこいいし、便利だし、最高じゃん……」


 そのつぶやきに、アオミネが腰の袋から火打石を取り出しつつ、苦笑いで応じた。

 「……魔導具は高いぞ。こういう収納型だと、いいものは百……いや、下手すりゃ百五十万ルクくらいはする」


 「えぇ!? 百万ルク!?」

 リュカが叫ぶように振り返る。


 「これは、私たちのパーティーで共同購入したものなんです」

 サイルは設営の手を止めずに、淡く微笑んだ。

 「個人で持つには少し重すぎる価格ですからね。でも、その分だけの価値はあります。……こういう便利な魔導具は、ダンジョン由来のものが多くて、総じて高額なんですよ」


 「いつか絶対欲しいな〜……」

 リュカは星空を見上げながら、いつかの未来を思い描くように目を細めた。

 「その点、ハルはいいよなー! あのポシェットがあるからさ!」


 「あ、うん……でも、この子も限界はあるよ……」

 ハルは少し苦笑いしながら、自分のポシェットをそっと撫でた。

 「ずっと一緒に来てくれてるから、労ってあげないとね」


 ロザがそれを聞いて、目を細める。

 「“この子”って……まるで生きてるみたいに話すのね」


 「たまに、僕の声に反応するみたいに震えたりするんです。……本当に、意思があるみたいで」

 ハルは不思議そうに、けれどどこか愛おしげにポシェットを見下ろした。


 「……そのポシェット、カイルが作っていたやつだろ?そんな仕掛けはなかったはずだが……」

 アオミネが火を灯しながら、眉をひそめて言った。


 「はい!父と母が作ってくれたものなんですけど、ずっと使っていたら、ボロボロになっちゃって……それをツムギお姉ちゃんが直してくれて……」

 ハルは少し照れくさそうに笑う。

 「その時に相結そうゆいが起きたみたいなんです。進化するポシェットになって……あの、ツムギお姉ちゃんの創術ってすごいんです!」


 サイルがハルの背中越しにそのポシェットを覗き込むようにして、感心したように頷いた。

 「さすが、POTEN創舎……。聞けば聞くほど、魅力的ですね。羨ましい限りです」


 クロは星空を見上げながら、「創舎の名は伊達ではないでござるな」と、しみじみと呟く。


 テントの中からは、穏やかな光が漏れている。明日を迎えるその場所には、ただ静かで優しい時間が流れていた。

明日も23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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