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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
忘れ谷編

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出発の朝

 早朝のPOTENハウスは、すでに活気に満ちていた。


 「無事に帰ってこいよ。イヤーカフはあるけど、声も聞かせてくれると安心するからな」


 玄関先でバルドがそう言いながら、ハルに保冷温魔布ほれいおんまふに包まれた、お弁当を手渡す。その中には、5人分のお弁当——ジューシーなステーキと彩り豊かなサラダ、食後の甘いおやつ(抹茶味)に、ハルの大好物である特製ジュースまでぎっしり詰まっている。


 「重くない? けっこう量入ってると思うけど……」と心配そうなツムギが、イヤーカフの魔導回路をチェックしている。


 「うん、大丈夫! 僕のポシェットすごいから!」とハルが胸を張ると、ぽてが「ぽてぇっ♪」と元気よく跳ねた。


 「こっちも確認済みだ。装備、問題なし」エドが工具をしまいながら一言。肩には油染みがついていたが、表情は満足げだ。


 「これ、持って行け。保存性の高い高位ポーションと、非常用の魔力ポーション。必要なときだけ使え。無理はするな」エリアスが手渡してくれたポーチは、ずしりと頼もしい重みを感じさせた。


 玄関の奥では、ナギが手を振り、イリアが小さく微笑み、リナがぽてと並んで小さな手をふる。


 ジンは無言のまま手を軽く持ち上げたが、その瞳はしっかりとハルを見据えていた。

 「……困ったら、ちゃんと連絡してこいよ」


 「じゃあ、行ってきます!」


 ハルが声を張ると、みんながそれぞれの方法で応えてくれる。


 小さな見送りの光景に背を押されるように、ハルは扉を開けた。


 外の空気は澄んでいて、旅立ちにふさわしい朝だった。


ハルが声を張ると、みんながそれぞれの方法で応えてくれる。


 小さな見送りの光景に背を押されるように、ハルは扉を開けた。


 POTENハウスを後にしたハルは、ゆっくりと街道を歩いていく。朝露に濡れた石畳が足元でやわらかく光り、通りを行き交う人々もまだ少ない。肩にかけたポシェットには、大切な人たちの想いが詰まっていた。


 城下町の南門近く——冒険者たちがよく集合する広場には、すでに何人かの姿があった。


 一番に目に入ったのは、灰青のマントを羽織ったサイル。いつもと変わらぬ穏やかな微笑みで、ハルに軽く手を振ってくれる。


 その隣には、黒髪のアオミネが腕を組んで立っており、頭上にはちょこんと乗ったクロがぴょこぴょこと跳ねていた。


 「おっ、来たな。良き朝でござる」


 「うん、クロおはよう!」


 ハルが笑顔で返すと、アオミネも小さく頷いた。


 ほどなくして、城下の裏道からリュカが駆け足でやってくる。


 「はあっ……ごめん、ちょっとだけ寝坊した!」


 「ギリギリセーフ。大丈夫、間に合ってるよ!」


 ハルの言葉に、リュカはほっとしたように笑った。


 その後、ロザが静かに姿を現す。


 受付とはまるで違う、戦闘用の外套に身を包み、腰には細身の魔導杖。凛とした気配をまといながら、柔らかく歩いてくるその姿に、場の空気が自然と引き締まった。


 「ふふ、全員揃ったようね。時間通りにでられそうね!」


 こうして、6人のパーティが無事合流した。


これから向かうのは、忘れわすれだに

ハルとリュカが見つけた副ルートへの、本格的な探索が始まる——


 ハルはポシェットをぎゅっと握り、心の中で呟く。


 ——絶対に、みんなで帰ってこよう。


 仲間の顔を順に見渡してから、ハルは小さく息を吸った。


 「じゃあ、出発!」


 新たな挑戦が、静かに始まろうとしていた。


  それから二時間あまり。


 朝の空気に包まれた森を抜け、“忘れわすれだに”は姿を現した。


 薄い霧がゆらめくその谷は、かつて魔導鉱山として栄えていた名残をところどころに残しており、崩れた石の門柱が静かに彼らを出迎えた。


 ハルとリュカが以前発見した“副ルート”の入り口は、壁のようにそびえる岩のひとつに隠された仕掛け——古い魔法陣による起動ボタンだ。


 「このあたりだったよね……あ、あった」


 ハルがそっと魔石を押すと、石の紋様がわずかに光を帯び、鈍く沈んだ音とともに、岩壁の一部が横にずれて開いていく。


 谷の奥、少し離れた岩壁の一部が、前回と同じように、ぎぎ、と音を立ててわずかに開き、古びた“扉”が姿を現す。

苔と湿気のにおい、そしてうっすら漂う魔力の気配が、明らかに“外”とは異なる空間であることを告げていた。


 「……ここが、例の副ルートか」


 ロザが一歩前に出て、まなざしを鋭くする。


 「結界、ちゃんと生きてるわ。中の気圧と魔力圧がしっかり遮断されてる。入口としては問題なしね」


 サイルも内部の様子を確認する。アオミネとクロも無言で頷いた。


 早速、一階層へと足を踏み入れる。道順は、以前と同じだった。


 記憶を頼りに迷わず進むハルに、リュカやサイルが感心したように声をかける。


 「おお、さすがに覚えてるな」

 「ちゃんと覚えてるのすごいですね。わたし、絶対どこかで曲がり角間違える自信ある……」


 道中、現れた仕掛けも、以前ハルとリュカが二人で解いたときと同じものだった。


 それを見ていたロザが、ふっと微笑む。


 「この謎、二人だけで突破したの? なかなかやるじゃない」


 「うん、少し時間はかかったけど、リュカと協力して……」


 ハルがそう答えると、ロザは「ふふ」と頷いて、軽く背中を叩いた。


 「頼もしいわね。……さ、もうすぐよ」


 そうして一行は、ほとんど足を止めることもなく、一階層のセーフティゾーンへとたどり着いた。


  そこは以前と変わらず、ライトストーンの柔らかな光が空間を包んでいた。


 岩壁に広がる“魔石だまり”には、前回採取した部分の再生はまだ見られなかったが、それでもなお、色とりどりの魔石がぎゅっと詰まるように並び、微かにきらきらと輝いている。


 「……やっぱり、きれいだね」


 ぽつりと漏れたハルの声に、リュカも静かに頷いた。


 魔物の気配はない。空間は静まり返っており、魔力の流れも穏やかだ。


 ただ一つ、奥の壁際にぽっかりと開いた小さな階段が、前と同じように闇の底へと続いていた。あの先が、次の階層。未知と危険が眠る深淵——そう思わせる冷たい空気が、そこからじわりと漏れ出していた。


 ロザが一歩前に出て、振り返る。


 「さあ、ここからは未知の領域よ。気を引き締めていきましょう」

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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