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仲間との楽しいひととき

本日3回目の投稿です

 POTENハウスに戻る前に、念のため魔導通信機で「もうすぐ帰るよ!」とメッセージを送っておいたのに——


 玄関の扉を開けると、思った以上に真剣な顔の仲間たちが、どっと押し寄せてきた。


 「おかえりハル! 大丈夫だった!? 魔物とか出なかった!?」

 「怪我は!?なにか危ない事なかった?」

 「遅い!もう少しで迎えに行くところだったんだぞ!」


 「え、ええと……どこも怪我してないよ! むしろスライムに癒されてきたよ……!?」


 思わず目をぱちぱちさせるハルに、仲間たちはほっと息をつき、次の瞬間には大騒ぎが始まった。


袋の中のケーキにぽてが一目散に飛びつきそうになるのをナギさんが止め、バルドさんはワインを見て「ほう……」とご満悦の表情。


 その奥、ダイニングの椅子に座っていたのは、久しぶりにPOTENハウスに顔を出していたジンさんだった。

 ツムギお姉ちゃんのお父さんであり、ギミックや細工に強い職人として、エドさんの師匠でもある人だ。


 「よくやったな、ハル」


 ハルの頭にぽんと手を置いて、ゆっくりと言ってくれる。

 それだけのひと言なのに、じんわりと胸の奥に温かいものが広がった。


 その夜の食卓は、いつにも増して賑やかだった。


 「それでさ、ポシェット、なんだか前より軽くなってて……中身が入る量も、なんか増えてる気がするんだ」


 ハルのそのひと言に、場の空気が一気に盛り上がった。


「ほう……進化の気配とは、こりゃまた興味深いのぅ」

 バルドさんがぐいっと椅子を引いて立ち上がると、エドさんも「ハルくん、ポシェット確認していいかな!」と目を輝かせた。


 急遽、検証会が始まり、ポシェットにさまざまな道具や素材が入れられたり、出されたり。ジンさんも「なるほど、重さの分散か……いや、これは本当に軽くなってるな」と真剣な顔で参加している。


 「同じ型のやつ、ちょっと縫ってみるね!」

 ナギさんはすでに作業机に向かい、そっくりのポシェットを手際よく縫い上げていた。


 比較対象としてその新しいポシェットにも同じものを詰めてみると、結果は一目瞭然だった。


 「容量、倍になってる……!」

 「しかも、重さが半分……!」

 「まだ伸びしろあるかもな」

 「これ、もう軽いアイテムボックスってやつじゃん……!」


 目を輝かせて言うエドの声に、場がさらに湧いた。


そこからはもう、軽いお祭り騒ぎだった。


 「もしかして、時間の流れを制御する機能がついてるかもしれないぞ……!」

 エドがそう呟いた瞬間、氷を取り出してポシェットの中にそっと入れ、真剣な顔で時間経過を観察し始めた。


 「気のせいじゃなく、まだ溶けてない……!?これはもしや、時止め効果……!」


 「落ち着けエド、まだそんなに時間は経ってないじゃろうが」

 バルドが苦笑しながらも、手元のノートででしっかり記録をとっているあたり、まんざらでもない様子だ。


 さらにエドは、「もしかしたら、ぽてみたいに“生きてる”ポシェットかもしれない!」と言い出し、

 「やあ、ポシェットくん。調子はどうだい?今日のハルは元気だった?」と、真顔で話しかける始末。


 「いや、エドさん、さすがにそれは……」


 と、ハルは苦笑しつつも、

 ……実は僕も、いつかぽてみたいに変化するんじゃないかって期待して、「今日もよろしくね」とか「荷物、重くない?」とか、つい話しかけちゃってるんだよな……と、内心では思っていた。


 その後、採取してきた魔導スライムの分泌液をツムギお姉ちゃんに渡すと、彼女は目を輝かせて分泌液を観察しだした。


 「これ、すごい綺麗……!保存状態もばっちりだし、ハルくん本当に丁寧に採ったんだね!」


 褒められてちょっと照れつつ、スライムたちの協力のおかげだと思い出して心の中でお礼をつぶやく。


 「でねでね、ツムギお姉ちゃん、魔導スライムがね、すっごくかわいかったんだよ!うす紫でぷるぷるしてて、僕の言葉が分かってるみたいで、縦に伸びたり横に伸びたり!」


 そう力説するハルに、近くにいたナギがぴくっと反応した。


 「えっ?ぷるぷる?意思疎通できるって……それ絶対かわいいじゃん!いいなあ、私も見てみたいな!」


 「危ない場所じゃないから、今度連れていこうか……?」


 「え!いいの?!じゃあ、“可愛いもの愛好部”を作ろうよ!」


 「……え、なにそれ?」


 「今作った!」


 「今!?」


 その後、ナギが勝手に“可愛いもの愛好部”の設立を宣言し、ぽてが当然のように名誉会長に任命され、ハルも半ば強制的に副部長になった。


 その夜、POTENハウスには実験道具と笑い声があふれていた。

 ハルはというと、そんな様子を見ながら、ぽてと一緒に、ちょっぴり誇らしげにポシェットを撫でていた。

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ハルの素材収集冒険記・序章 出会いの工房

https://ncode.syosetu.com/N4259KI/


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

https://ncode.syosetu.com/n3980kc/

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