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僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
冒険者の装備品

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最強の仮パーティー、始動

 ロザは微笑みながら、ドアのほうに視線を向けて声をかけた。


 「どうぞ、入ってちょうだい」


 その声に応えて、扉が静かに開く。


 先に入ってきたのは、灰青のマントを羽織った、すらりとした男性——サイルだった。穏やかな微笑みを浮かべ、慣れた所作で室内に一礼する。


 「お久しぶりです、ハルくん。リュカさん、はじめまして」


 「サイルさん……!」

 ハルはぱっと表情を明るくし、嬉しそうに立ち上がった。「星詠の遺跡ではアドバイスありがとうございました。今回ご一緒できるなんて、本当に心強いです!」


 その後に続いたのは、黒髪に引き締まった表情の青年、アオミネ。そしてその頭の上には、つやつやとした漆黒のスライム——クロが、ぴょこりと乗っていた。


 「アオミネさんにクロ……!」


 ハルが驚きとともに名前を呼ぶと、クロは軽やかに跳ねて返した。


 「久しぶりでござるな、若き冒険者よ」


 「あっ……ほんとに、また会えるなんて……!」


 ハルが目を輝かせるのを見て、アオミネもわずかに口角を上げた。


 「お互い、覚えていてくれたなら光栄だ」


 そんなやりとりを見届けてから、ロザが微笑みながら二人を紹介する。


 「サイルとアオミネは、どちらもA級冒険者。経験も豊富で、それぞれが確かな実力を持っているわ」


 「サイルは、光属性の回復魔法だけでなく、罠感知の魔法にも長けているから、初めて挑む階層では特に心強い味方になるはず」


 「アオミネとクロは、連携力が抜群なの。前衛としても頼りになるし、魔物との立ち回りにも柔軟に対応できるのよ」


 ロザの紹介を受けて、クロがぴょこんと跳ねながらひとこと。


 「我らの刃、君らを守るために振るわれようぞ」


 「……か、かっこいい……!」とリュカがぽそっと呟くと、ハルも思わず笑ってしまった。


 そのやり取りを見届けたロザが、ふわりと穏やかな笑みを浮かべて口を開く。


 「最後に、私ね。普段はギルドの受付を担当しているけど、実は水と氷の魔法を使えるの。私たち三人、普段から一緒にパーティを組んでダンジョンに潜ってるのよ」


 「……えっ!?」

 ハルとリュカが、まるで声を合わせたように驚きの声をあげた。


 「ロザさんって、受付じゃなかったんですか……!?」

 ハルが目を丸くする。


 「うん。普段はね」

 ロザはおかしそうに肩をすくめる。


 その横で、アオミネが補足するように口を開く。


 「俺たち三人は、もともとA級パーティだ。いまは支援や教育任務も多いが、一応現役だ。腕もそれなりに立つつもりだよ」


 「ふふ。リュカ君もハル君も、安心して背中を預けてくれていいのよ」


 そう微笑むロザの表情には、確かな自信と温かさが宿っていた。


 「挑戦は……そうね、半月後くらいを予定してるわ」

 ロザが手帳を開きながら、カップに口をつける。

 「その前後で他の予定との兼ね合いもあるけれど、大体そのあたりで調整できそうよ」


 「半月後……ちょうど良さそうですね」

 リュカが頷く。


 「ただし、長期戦になる可能性もあるの。早ければ一日、でも運が悪ければ、一ヶ月くらい籠ることになるかもしれないわ」

 ロザはまっすぐ二人を見つめる。

 「だから、学院には事前に届出を出しておいてね。滞在証明は私たちが後で発行するから、心配しないで」


 「……はい!」


 「食料や回復薬、基本的な備品は冒険者ギルド側で支給するわ。ただ、個人的に必要なものや、お守り代わりのアイテムなんかは自分で用意しておいてね」


 ハルとリュカが小さく頷いたそのとき、サイルがやわらかく微笑んで言葉を添える。


 「休息の合間に、魔力量の整え方も一緒に見ましょう。長丁場になるかもしれませんから、一緒に鍛錬も出来るといいですね」


 その穏やかな声に、ハルも「はい、お願いします」とまっすぐに応じた。


 続いて、壁際に立っていたアオミネが、腕を組んだまま目を細めて言った。


 「迷宮は、油断した者を喰らう。準備は、過ぎるほどでちょうどいい」


 「うむ、それが肝要かんよう


 頭の上のクロが、ぴょこりと跳ねながら補足する。


 「持ち物は己の命綱。ぬかりなく整え、万全の態勢で臨むべし」


 「……はい!」


 リュカも背筋を伸ばして、真剣な表情で返す。


 そんな真面目なやりとりのあとは、クロがこっそりハルの方へ顔(?)を向けて、小さな声で囁いた。


 「できれば……非常食は、ちょっとだけ甘いものもあると嬉しいでござる」


 「……え、クロくんって甘党なの?」


 「拙者、抹茶味が特に好きでござる……」


 吹き出しそうになるハルの横で、ロザが笑いを堪えながら、


 「じゃあ、おやつ係はハル君に任せるわね?」


 と、茶目っ気たっぷりに言うのだった。


 「——任せて! バルドさんのおやつは最高に美味しいんだよ!」


 なぜか自信満々に胸を張って言い切るハルに、リュカがすかさず突っ込んだ。


 「作ってもらうのかよ! 自分で作るんじゃないのかよ?」


 「えっ……僕が作ったら、たぶん、味の冒険が始まると思う……」


 「それはやめておこう!」


 そんなやりとりに、ロザもサイルもアオミネも笑みを浮かべる。室内には、これから始まる冒険の気配と、少しだけ早い団欒のぬくもりが広がっていた。


 「じゃあ、また半月後に。しっかり準備しておいてね」


 ロザのやわらかな声に、ハルとリュカはそろってうなずいた。


 それぞれの想いと期待を胸に、次なる挑戦へ向けて、物語は静かに動き出していた。

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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