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僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
冒険者の装備品

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リュカはじめてのPOTENハウス

 学院の鐘が鳴ると、教室のざわめきが一気に廊下へと流れ出した。


 ハルは荷物をまとめながら、隣の席にいるリュカに声をかける。


 「ねえリュカ、今日はこのあと、POTENハウス一緒に行くよね?」


 「もちろん!」

 リュカは椅子から勢いよく立ち上がり、笑顔で答えた。「今日、魔石の契約書も受け取るって話だったよな?」


 「うん。それと、エドさんたちと装備品の打ち合わせもあるよ!きっと二人のことだから、すっごい装備になるはずだよ。楽しみだよね」


「ほんとほんと、ハルのポシェット、すっげえ便利だし、なんか生きてるみたいだしさ。俺、ずっと羨ましかったんだよな〜! もしかしてさ、俺の装備も“俺に合わせた変化”とか“合体”とか、そんなすごいことになったりしてさ。……もうワクワクして、昨日寝れなかったんだから!」


 そう言って、リュカは両手を広げ、まるでヒーローのポーズでもするようにくるくると回る。目を輝かせてはしゃぐその姿に、ハルは思わず笑ってしまう。


 「うんうん。アイテムの変化って、使っているうちに少しずつ起きるんだけど……エドさんとジンさんが作るなら、きっと何か面白い変化があるかもね」


 そんなふうに話しながら、二人は賑やかな生徒たちの波を抜けていく。学院の門をくぐるころには、陽の傾き始めた午後の光が街道を染めていた。


 そして自然と、足元に広がる石畳のリズムに合わせて、最近の冒険の話が始まった。


 「でさ、どうだったの? エドさんたちと行ったダンジョン! 星なんとか?」


 「星詠の遺跡。光のギミックが多くて、ボスは透明になってくるカブトムシみたいなやつだった。姿を見破って……ツノ、折って倒すんだけど、結構大変だったよー」


 「うっわ、いいなぁーカブトーンだろ?絶対カッコいいボスだよなぁー。俺もそっち行きたかったなあ〜」


 リュカは拗ねたように唇を尖らせたかと思えば、すぐにケロッとした顔で続ける。


 「俺もけっこう行ったよ? 先週は三回もダンジョン潜ったんだぜ! ちょっと強めのグループにも混ぜてもらって、二回も死にかけたけど、いい経験になった!」


 「それ、あんまり威張れないよ……やっぱり、丈夫な防具がリュカには必要だなぁ……」


 「いやいや、無事だったからセーフ! それに、倒した敵が落とした素材がちょっと良くてさ〜、今度見せてやる!」


 そんなふうにじゃれあいながら歩いていると、POTENハウスの屋根が見えてきた。ハルの胸に、少しずつワクワクが湧いてくる。


 「ただいまー!」


 ハルが玄関のドアを開けると、リュカもそれに続いて「おじゃましまーす!」と元気に声を上げた。


 リビングにはあたたかな空気が流れていた。窓から差し込む陽の光に照らされた大きなテーブルには、すでにお茶の準備が整っている。二人が椅子に腰を下ろすと、ちょうどタイミングを見計らったように、奥の作業室からバルドが現れた。


「おお、帰ってきたか。今日は装備品の打ち合わせじゃったな? わしも、あとでちょっと顔を出させてもらうとするかの」


 にやりと笑ったバルドの手には、湯気の立つカップとクッキーの乗った小皿が載った盆。陽に透ける白髪とふくよかな笑みに、リビングの空気が一段とやわらぐ。


 「まあまあ、まずはこれでも飲んで一息つけ。熱いから気ぃつけるんじゃぞ」


 カップをそっと二人の前に置くと、椅子の背にもたれて、バルドはふうとひと息ついた。


 「……おぬしがリュカ君じゃな。ハルがいつも世話になっとる。話はよう聞いておるぞ。ありがとの。わしはバルド。この家で飯を作ったり、皆を見守っとるただのジジイじゃ」


 「はじめまして、リュカと申します。ハルには、仲良くしてもらってます。POTEN創舎の方とお話しできるなんて……こちらこそ、よろしくお願いします」


 「はは、そんなにかしこまらんでええ。ここには、言葉づかいを咎めるような堅物はおらんからの。普段どおりで話してくれたら、わしは嬉しいぞ。ハルなんぞ、わしのこと“おやつをくれるジジイ”くらいにしか思っとらんからな」


 軽口に、ハルは苦笑い。けれどその目は、どこか誇らしげだ。


 「そういえば、こないだは魔石集めに付き合ってくれたそうじゃな。ほんとうに助かった。礼を言わせてくれ、リュカ」


 バルドはそう言って、真顔になり、ゆっくりと頭を下げた。


 そのとき、廊下のほうから「パタパタッ」と軽やかな足音が響いてきた。


 「ツムギー! イリアさんとリナとの打ち合わせ、そろそろだよー! 準備できたー??」


 声と同時に、勢いよくリビングの扉が開く。明るい笑顔を浮かべて飛び込んできたのは、ナギだった。


 中にリュカとハルがいるのに気づき、ぱっと表情がはじける。


 「……あっ! ハル! 帰ってきてたんだね! おかえりー! ちゃんと勉強してきたー? あんまり無理しちゃだめだからねー?」


 茶化すような口ぶりに、ハルは照れたように頬をかいて苦笑する。


 「それに……はじめまして、リュカ君!」


 ナギはぴょこんと頭を下げると、リュカの目の前まで近づき、ぱっと明るく笑った。


 「私はナギ! この間はたくさん魔石とってきてくれてありがとうー! すっごい量で、見たときほんとびっくりしちゃったよ!」


 「あ……こちらこそ、お世話になっています。リュカと申します。いつもハルには、いろいろ助けてもらっていて……。お会いできて光栄です」


 リュカは少し緊張しながらも丁寧に頭を下げた。


 ナギはその様子に「まじめ〜!」とでも言いたげな笑顔を浮かべると、楽しそうに言葉を続けた。


 「いまね、ツムギと一緒に、リュカ君にも“特製のお守り袋”を作ってるの! 超おしゃれで、超すごいやつだから、楽しみにしててねー!」


 「……えっ、それは……すごく楽しみです!」


 リュカの顔に、思わず笑みがこぼれる。目を輝かせて、小さくうなずいた。

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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