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僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
エドとバルドの参観日

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漆黒の闇と光

2日も更新時間が遅れてしまいました申し訳ありません。

 転送陣の光が消えた瞬間、三人を包んだのは——闇だった。


 視界が閉ざされ、音すらも吸い込まれたような静寂。全方向が均一に暗く、どこが天井で、どこが壁なのかもわからない。


 「……真っ暗すぎる……」

 ハルがわずかに体を縮こませると、バルドが静かに言った。


 「まずは光じゃな。……《ライト》」


 続けて、ハルとエドも魔力をこめる。


 「《ライト》」


 「……ライト」


 三人の掌に灯った小さな光が、かすかな輪郭を浮かび上がらせる。だがその光は、まるで霧の中にあるように拡散せず、数歩先すら曖昧なままだった。


 「思ったよりも……進みにくいね」


 ハルが足元を確かめるように前へ出ようとした、そのとき——


 「待って!」


 エドが声を上げた。ライトを掲げながら、ハルの右腕をとる。


 「……今、少し前の壁。光が跳ね返ったような……もうちょっと右に……そう、そこ!」


 ハルが導かれるままに腕を動かすと、ライトの光が反射し、わずかに奥の壁を照らした。


 「ほんとだ……!」


 バルドも自分の光をかざし、ゆっくりと動かしていく。すると、二つ目の反射が生まれ、一瞬だけだが、奥行きのある道がぼんやりと見えた。


 「……これは……鏡か?」


 「あるいは反射性の高い鉱石かもしれません。でも、これ、きっと“仕掛け”です。光を順に反射させていくことで……先に進めるようになってるんだ」


 エドの声は、いつになく興奮に満ちていた。


 「反射させながら進むダンジョン……すごい……!」


「まずは、反射する鉱石の位置関係を調べよう」

 エドが真剣な表情で言い、ライトを掲げながら周囲を見回す。


 三人はそれぞれのライトを手に、壁際をゆっくりと移動していく。ほんの僅かな光の返しや、角度によってきらめく鉱石の輝きを見つけては、立ち止まり、確認しあう。


 「……ここ、反射する。浅い角度だけど、ちゃんと返ってくる」

 「こっちもだ。高さがちょっと違うけど、同じ石みたいじゃな」


 ハルはポシェットからノートを取り出し、ライトで手元を照らしながら、鉱石の位置を丁寧に記録していった。


 壁の模様、床の段差、光の当たり方。手早く、けれど正確に。


 (この光の道、ぜったいに繋がるはず……)


 おおかた書き込み終わると、三人はそのノートを囲むようにしゃがみ込む。暗がりのなか、わずかな光を頼りに、顔を突き合わせて反射角を考える。


 「ここの反射は、次の石まで届いてるけど……時間が経つと途切れるのは、間に遮る何かがあるのかも」

 「あるいは、反射の持続時間に限りがあるのかもしれんのう。魔力の蓄積量……とか」


 ふと、バルドが苦笑いを浮かべた。


 「にしても、ハルも立派な“メモ魔”になってきおったな」


 「そりゃあ、バルド先生に教わりましたから」

 ハルが小さく笑って、ノートを掲げる。


 「それに、ジンさんとか、ツムギお姉ちゃんを見てたら、自然とこうなりますよ」


 「わかる……」と、エドも苦笑した。「ジンさん、ああ見えてめちゃくちゃメモ取るもんね。忘れっぽいってわけじゃないのに、全部書く」


「昔は全くメモを取らずに突っ走って、えらい失敗をしてきたからな。懲りたんじゃろう、あやつも」

 バルドが顎をさすりながら、どこか楽しげに目を細めた。


 そういえば、ジンさんは昔、バルド先生の弟子だったそうだ。長く下宿もしていて、酔った夜には、ふたりでその頃の話に花を咲かせている。


 ふとした会話が、薄暗い空間に、小さな灯のようなぬくもりをともす。


 その輪の中心で、ノートを開くハルのまなざしは、確かに未来を見据えていた。


鉱石の位置と反射角を記したメモを三人で囲み、何度も確認しながら話し合いを重ねた。


 「……たぶん、これだ。第一の鉱石は、ここ。こっちの角度からライトを当てれば……」

 エドが慎重に線を引き、メモを指差す。「計算上は、このルートで全部、光が繋がるはずだよ」


 「よし……!」

 ハルは小さく息を吸い、手のひらで額の汗をぬぐうと、エドに示された鉱石の位置へとライトを構えた。


 手のひらに込めた魔力がじわりと光を宿し、細く繊細な光の筋が生まれる。

 そして、ぴたりと角度を合わせるようにして、その光を——照射。


 「……いけっ!」


 光が鉱石に当たった瞬間、

 ポッ——やわらかな輝きが跳ね、

 ポッ、ポッ——連鎖するように反射の道が走る。

 ひとつ、またひとつ、石の表面で光が舞い踊り、やがて奥へ、奥へと繋がっていく。


 「き、来てるぞ……!」

 バルドが声を低く震わせた。


 そして——最後の鉱石が光を受けた瞬間、


 ワァァン……!


 静寂を破るような、鈍く柔らかな共鳴音とともに、奥の壁に沿って光が走った。

 道の輪郭が一気に照らされ、長い暗闇の回廊が、まるで夜が明けるように照らされていく。


 「……つながった……!」

 ハルが思わず声を漏らす。


 手のひらに灯っていた光を、そっと握るように包み込むと——

 小さく息を吐くのと同時に、魔力が静かに解かれていく。


 ふわりと揺らいだ光は、ぱちんと弾けるように消えた。


 エドは少し呆然としたあと、顔を綻ばせて

 「うわ、本当にいけた……すごい……!」と小さく笑った


 「さすがジンの弟子、やるではないか!」

 バルドが嬉しそうに手を叩いた。「わしら三人、なかなかの連携じゃぞ」


 照らされた先には、光に包まれた道がまっすぐ続いていた。

 三人は顔を見合わせ、自然と足が前へと動き出していく。

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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