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僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
エドとバルドの参観日

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ダンジョン参観日

 その日、学院の授業が終わると、ハルは一目散に冒険者ギルドへ向かっていた。


 ぽかぽかとした午後の陽射しの下、街の賑わいをすり抜けるように走って、

 見慣れた石造りの建物の扉を勢いよく押し開ける。


 今日は、バルドとエドと、ギルドで待ち合わせだった。

 みんなで一緒に行くダンジョンを相談することになっている。


 「こんにちはーっ!」


 カウンターの奥から顔を出したロザが、ふっと微笑んだ。


 「こんにちは、ハルくん。早いわね。今日は……ああ、バルドさんたちね。待合室にいるわよ」


 「ありがとう!」


 軽く頭を下げて、ハルは案内のいらない道を小走りに進んでいく。

 冒険者ギルドの奥には、休憩や打ち合わせのための小さな部屋がいくつかある。

 そのうちの一つ、陽当たりのいい窓際の部屋で、二人はすでに到着していた。


 「お、来たか。早いな、ハル」


 先に見つけたのはエドだった。

 スツールに座って工具袋を整理していた手を止め、にこっと笑う。


 「バルドさん、エドさん! 待たせちゃいましたか?」


 「いやいや。わしらも今来たところじゃ」


 バルドはいつも通りの落ち着いた声で、湯気の立つティーカップを手にしていた。

 ロザから出されたらしいお茶と、小さなビスケットがテーブルの上に並んでいる。


 「うむ……しかし、ここの茶はいつ飲んでもぬるいのう。まあ、飲むが」


 そう言って、渋い顔をしながらも、しっかりとお茶をすすっている。

 エドは肩をすくめて、笑いながら言った。


 「バルド先生、それもう四回くらい言ってますよ」


 「おお、そうだったか?」


 そんなやりとりに、ハルも思わず笑ってしまう。

 その場の空気があたたかくて、どこか安心する。


 「じゃあ……今日行くダンジョン、決めましょうか!」


 ハルがそう言うと、バルドは顎に手を当てて、ちらりとエドを見る。


 「うむ。初心者向けで、実地体験にちょうど良いダンジョン特集が掲示板にあったな。見に行ってみるか」


 「ですね。ハルは強いだろうと思ってるけど、ちゃんとこの目で確かめたいですし」


 「はい!」


 勢いよく立ち上がったハルの目が、キラリと輝く。


 冒険者ギルドの奥にある掲示板の前で、ハルたちは肩を並べて立っていた。


 掲示板には色とりどりの依頼用紙がびっしりと貼られていて、上段には赤い縁取りの張り紙が目立っている。


 《初心者歓迎! 実地訓練におすすめのダンジョン特集(今月号)》


 「へぇ、ギルドって、こんな特集もしてるんですね」


 目を輝かせながらハルがつぶやくと、隣にいたエドがうなずいた。


 「新米冒険者の訓練もギルドの大事な仕事だからね。こういうのは、難易度や安全性がちゃんと調査されてるんだよ」


 「ふむ。ほう……ここに載ってる茶色い紙は、視察済みとあるな。安心して入れるということじゃな」


 バルドは老眼鏡を押し上げながら、じっと用紙を見つめている。


 三人は並んで掲示板を眺め、いくつか目を引く依頼に目を通していった。


 *****


 《草縫いの穴》──自然迷路型

 森の地下にある遺構で、ツタや花粉の香りを辿って進む仕掛けがあるという。

 訓練項目:直感・風感知・観察力


 「ツタで迷路って、ちょっと面白そうですね」


 「だが花粉が厄介じゃ。わし、実は花粉症でな、くしゃみが止まらんようになるからなあ……」


 《錆の手記》──封鎖空間型

 錆びた金属扉と、封印されたノートだけが残る遺跡。記録を読み解きながらスイッチを操作する仕組み。

 訓練項目:推理・記憶・機構理解


 「先生、こういうの好きそうですね」


 「ふむ……これは結構そそられるな。でもハルの戦闘も確認したいからのう。魔物が出ないとなると……」


 その中で、ひときわハルの目を引いた紙があった。


 《星詠の遺跡》──天体モチーフ型

 星の巡りに応じて扉が開く光の遺跡。鏡や反射盤を使って進む謎解き要素あり。

 訓練項目:視認力・光属性操作・座標理解


 *****


 「これ……すごく面白そう」


 ハルは思わず声を上げた。


 「星と光の謎解きって、なんかロマンありますよね。それに、星灯の雫っていう素材も取れるみたいで……」


 「ほう、光の反射盤か。ハルにはちょうどよさそうじゃし、エドもギミック見れるしよさそうじゃのう」


 バルドがふむふむと情報を読み込んでいる。


 「星灯の雫もドロップするのか。あれ、魔導ランプの触媒になるやつですね。僕も見てみたいなぁ」


 エドは目を輝かせながら、すでに何かを考えはじめているようだった。


 「じゃあ、ここに決まりかな?」


 ハルが振り返ると、二人は同時にうなずいた。


 「よし、申請しにいくか」


 三人は、ワクワクしながら、掲示板をあとにし、受付に向かった。


  三人は、わくわくしながら掲示板をあとにし、受付へと向かった。


 カウンターの奥には、いつものように落ち着いた雰囲気のロザがいた。

 彼女はハルたちの顔を見て、ふっと微笑む。


 「もう決まったのね。……何にしたの?」


 「《星詠の遺跡》、お願いします!」


 ハルが勢いよく言うと、ロザは頷きながら手元の書類を確認する。


 「はい。今月は訓練向けの開放日だから、危険度はFランク扱いよ。何かあった時の為に職員も配置しているわ。

  一応、光魔法の適性がある人推奨だけど……問題なさそうね」


 彼女の視線がエドとバルドへ向かう。


 「エドくんもバルドさんも同行ね。パーティーなら安心だわ」


 さらさらと記録用紙にペンを走らせるロザの動きは慣れたもので、

 あっという間に受注手続きが完了した。


 「申請完了よ。ダンジョンの場所は、魔導列車に乗って、三十分くらい。現地に案内板があるはずよ。気をつけていってらっしゃい」


 「ありがとうございます! 行ってきます!」


 ロザに頭を下げて、三人はギルドをあとにした。


 

 必要な道具をそれぞれ手早く整え、昼下がりの陽ざしの中、三人は駅へと足を運んだ。


 魔導列車の車内は、窓の外を流れる風景に包まれて静かだった。


 ハルは座席に腰を下ろしながら、小さく息を吐く。


 (今日は、どんな場所なんだろう)


 星と光の謎。きっと見たことのない景色が広がっている。

 目を閉じると、ほんのり胸が高鳴った。


 列車は、まっすぐに進んでいく。

 その先にある、まだ知らない“冒険”へと向かって――。

明日も23時時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です


⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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