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僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
父との日々

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健太の提案

 やがて健太が、ぱっと顔を上げる。


 「えっと……例えば、オリハルコン製の防具や武器、

 “パーフェクトヒール”の魔導書、古い文献……

 皆さんが来てからポイントもどんどん貯まっていたみたいで、

 今ある分だけでも、かなりのアイテムと交換できるみたいです!」


 思った以上の豪華ラインナップに、場が一瞬ざわりとする。


 だが——


 サイルは眼鏡を押し上げ、少し困った顔で首を振った。


 「……パーフェクトヒール、ですか。

 いや、確かに魅力的ではありますが……

 それが存在してしまうと“命の理”が崩れてしまいそうで。

 ちょっと……扱うのが怖いですね」


 その隣で、リュカが「うーん」と唸りながら腕を組む。


 「オリハルコンの剣かぁ!

 強いのは間違いないんだろうけど……

 剣だけ強くて腕が追いつかない剣士って、なんか違う気がすんだよな。

 自分の技が伴ってないと、変な話、恥ずかしいというか……」


 カイルは苦笑しつつ、ちょっと胸を張り気味に言った。


 「古文書……喉から手が出るほどに欲しいが……

 少しずつ知っていくからこそ、秘密は楽しいのであってだな。

 最初から全部手に入ると——ありがたみが、変わっちまうんだよ」


 アオミネは大げさに肩をすくめた。


 「オレらはいいな。

 そもそも大して貢献してねぇし、

 身の丈に合わねぇアイテムを手に入れて自滅した奴なんざ、星の数ほど知ってる。

 それに、ぼちぼち集めるのが一番楽しいだろ?」


 クロもぴょこんと跳ねながら、楽しげに言う。


 「そうでござる。いきなり強くなってしまったら、冒険がつまらなくなるでござるからなぁ」


 健太は、全員の予想外に質実な断り方に目を丸くした。


 「ええ……?!

 なんて欲のない人たちなんですか……!

 逆に困る……!

 いや、本当に困る……!」


 その困り顔に、ロザがふっと微笑んだ。


 「じゃあ……POTENの皆さんに、何か新しい素材をいただいたらどうかしら?」


 にこっとロザが視線をハルへ向ける。


 「ねえ、ハル?」


 突然振られ、ハルは「あっ」と小さく声を漏らした。


 「え、えっと……

 でもPOTENのみんな……今ですらすごいの作りすぎちゃってて……

 これ以上扱いの難しい素材が増えたら、どうなるんだろ……って……」


 言葉にしながら、自分でも想像してしまったのか——

 ハルは頭を抱えて悩み込んだ。


 「……なんかすごいことになりそうで……」


 それを見て、仲間たちは思わず吹き出しそうになりつつ、

 互いに目を合わせて、穏やかに笑みを交わした。


 健太はと言えば——


 「つまり……強すぎず、チートでもなく、でも皆さんに恩返ししたと言えるくらいの……

 そんな絶妙なラインのアイテム……そんなの……!」


 頭を抱え、空中の“見えない画面”を睨みつけながらぶつぶつ言っていた。


 「逆に難易度が高い……っ!」


 その必死さが妙に可笑しくて、リュカが肩を震わせる。


 「まあ……悩んでもらうのもお礼のひとつだよな」


 アオミネもにやりとしながら腕を組む。


 「だよなぁ。贈り物ってのは、相手が喜ぶもんを考えて選ぶ——

 そこが一番楽しいんだよな」


 クロがぴょんと跳ね、誇らしげにうなずく。


 「その通りでござる! プレゼントは悩む時間も含めて楽しむものでござる!」


 ロザはくすりと笑い、優雅にティーポットを取り出した。


 「じゃあ、ゆっくり選んでちょうだい。

  私たちはお茶を入れるわ」


 サイルも静かに頷き、ハルは嬉しそうにお菓子を並べ始めた。


 「健太さん、がんばってくださいね!」


 その平和そのものの背中を受けながら、健太はさらに頭を抱えた。


 「もーー……!

 そういう感じですか、そういう感じなんですね!?

 なるほどなるほど……わかりましたよ……!

 負けませんからね! 絶対に、皆さんが喜んでくれるもの——見つけてみせます!」


 ぶつぶつ言いつつも、その顔にはどこか嬉しそうな苦笑いが浮かんでいる。


 そしてみんなのお茶が空になりかけた頃——


 「……あっ!」


 空中を追っていた健太の視線が、ぴたりと止まった。


 目が大きく見開かれ、何かを発見したように息を飲む。


 「おっ? なんかいいもの見つけたか?」


 カイルが声をかけると、健太は少し頬を赤くしながら振り返った。


 「は、はい。……いいものというか、何というか……

 私が欲しいなと思ったものがあって……」


 その歯切れの悪さに、サイルが片眉を上げる。


 「ほう。どんなものなんでしょう?」


 健太は言葉を選びながら、指先で空中の見えない画面をそっと指した。


 「もしかしたら、この世界にもあるかもしれないんですが……

 文字や絵を、離れた相手とやり取りできる装置なんです。

 ワンセットのみなのですが、皆さんが持っていれば……きっと便利だと思って」


 ロザがくすりと笑いながら頷く。


 「それなら、この世界にも魔導通信機があるわ。

  ただ、こういうダンジョンでは機能しないことが多いのだけれど……」


 それを聞いた瞬間、健太の目がぱっと輝いた。


 「じゃあ! これ……いいかもしれません!

 ダンジョン産なら、中に潜っているときでも外とやり取りできるかもしれない!」


 その言葉に、仲間たちが一斉に顔を見合わせた。


 「便利そうだな」

 「確かに……悪くない」

 「通信できたら、探索もだいぶ楽になるでござる」


 口々にうなずく中、サイルがふと視線をハルへ向けた。


 「一番功績を挙げたのはハルくんでしょう。……どう思いますか?」


 「はい! 僕も、それがいいと思います!」


 ハルはそう言ったあと、ほんのりと目を細め——

 イタズラを考えている子供のような声で続けた。


 「……でも、僕、ちょっと試してみたいことがあるんですよね」


 その予告めいた一言に、仲間たちは一瞬動きを止め、

 期待とワクワクが混ざったような気配が、静かに広がった——。

ツムギの物語は水曜日と土曜日、ハルの物語は月曜日と金曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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