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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第二章 ビアンカとフィリベルト
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3.王子様?

 気持ちはすごくよく分かるから、せめて少しでも慰めてあげようと口を開きかけた、その時だった。


「それでは、後ほどお迎えにあがります」

「あぁ」


 突然部屋の扉が開いて、誰かが入ってきた。

 正確に言えば、扉を開けたニンゲンはそのまま出ていって、残ったのは一人だけ。

 聞こえてきた声は両方ともニンゲンのオスのものだったし、もしかしたらフィリベルトかもしれないと思って、ボクはとりあえず様子を探ろうとしたんだけど。

 それよりも先に。


「ビアンカ~」


 それはそれは甘く優しい声で、そのニンゲンがこっちに近づいてきた。そのまま、白っぽいネコに頬擦りして。


「あぁ、ビアンカ。執務で疲れた私の心を、君の可愛さで癒しておくれ」

『仕方ないわねぇ』


 ビアンカと呼ばれたネコも、まんざらではなさそうな顔で頭を寄せてた。


(というか、あの子ビアンカっていうんだ)


 今さらだけど、名前を聞いてなかったことに気づいて。でもそれ以上に、目の前で繰り広げられる会話と光景に、ボクは驚きを隠せなかった。


「あぁ、ビアンカ……! 服に毛がついてはいけないからと、君を抱き上げてあげられない私を許しておくれ……!」

『分かっているわよ。それに、フィリベルトは十分頑張っているわ。だから大丈夫。夜にしっかりとワタシを構ってくれれば』

「あぁっ、ビアンカ……! 可愛いよビアンカ……! 私の天使……!」


 背中にニンゲンの顔が埋まってるのに、気にもしてないネコと。愛情表現の激しすぎる、ニンゲンのオス。

 しかも、よく見れば。


(長い毛を、リボンで一つにまとめてる……)


 つまり目の前の、このニンゲンのオスが、セレーナの恋のお相手ってことになるはず。そもそもさっき、ビアンカがフィリベルトって呼んでたもんね。

 将来このあたりの縄張りで一番偉くなる予定の、フィリベルトって名前のニンゲンのオスが、そんなにたくさんいるはずないんだから。

 ってことは、だよ?


「ビアンカ~。たまには二人でゆっくりしたいと思わないか?」

『あら、ステキね。可能ならそういう日を作ってほしいわ』

「そうかそうか、君もそう思うか」

『当然でしょう。一人でここに残されるワタシの身にもなってみなさいよ』


 不思議としっかり会話はかみ合ってるけど、それはそれは甘い声でビアンカに話しかけながら、だらしない顔をしてるこのオスこそが、セレーナが恋した相手。


(う~ん……)


 コレが、セレーナを二度も助けてくれた、王子様?

 確かに聞いてた特徴と、完全に一致はしてるけどさ。


「うんうん、そうだね。ビアンカも私と一緒にいたいよね」

『ワタシを連れて行けばいいのよ?』

「私もビアンカとずっと一緒にいたいよ!」

『だから、ワタシを連れて行けばいいじゃない』


 あ。やっぱりこの会話、微妙にかみ合ってなかったかも。ビアンカの言葉、正しく伝わってないもん。

 というか、セレーナに聞いてた印象とかなり違いすぎて、ボク困惑してるんだけど。本当に、同じニンゲン? フィリベルト違いじゃなくて?


「……おや?」


 ちょっと信じられなくて、疑いの眼差しを向け始めてたボクだけど。目の前の光景に色々とついていけなくなって、固まってたら。


「そこにいるのは、どこの子かな?」

「っ!!」


 偵察しに来たはずなのに、その本人に見つかっちゃった。

 いや、まぁ。この姿はさすがに、ここまで来ないと見れないものだったんだろうけど。


「いったいどこから……あぁ、寝室の窓か。ビアンカは逃げる子じゃないし、人間が忍び込める高さではないからと、油断していたな」


 ただ、侵入経路が簡単に見破られたことは、今後に影響するかもしれないし。

 さて、どうしようかな。



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