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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第五章 幸せになる権利

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8.路地裏へ

 ということで、翌日は朝から出かける準備。といっても、ボクじゃなくてセレーナが、だけどね。

 その間ボクはやることもないから、厩舎に行ってジョヴァンニやマルツィオに、フィリベルトを助けるために手伝ってくれたお礼を言いに行って。小鳥たちにはクロに、お昼前には会いに行くからって伝言をお願いして。

 そうして、全部の準備が整ったら。


「ルシェ、お願いしていいかしら?」

『もちろん! ついてきて!』


 ボクを先頭に、まずは馬車が停めてある場所まで向かって。セレーナは中に乗り込んで、ボクは外の台に座ってるニンゲンの隣に乗って、クロのいる路地裏の場所まで指示を出す。

 指示って言っても、曲がる場所になったらそっちの手を軽くたたくだけなんだけどね。最初は不思議そうにしてたニンゲンも、到着する頃には慣れてくれてたからよかったよ。

 ちなみにセレーナだけじゃなくて、今回たくさんのニンゲンがボクのことを信じてくれたのは、フィリベルトを助けに行ったのを全員が知ってたからみたい。そうじゃなかったら今でも信じられないって、誰かがポツリとこぼしてたからね。


『ここだよー』


 一応ひと声かけてから、ボクは台から飛び降りた。そのまま、いつものクロがいる路地裏へ向かって歩き出す。


「まぁ……。こんなところに、あの子が……?」

「お嬢様、お足元お気をつけください」

「えぇ、ありがとう。それと、誰か周辺住民への聞き込みに行ってくれる? もしかしたら、近くに飼い主の方がいらっしゃるかもしれないから」

「承知いたしました」


 後ろからそんなやり取りが聞こえてきたから、とりあえず振り返ってセレーナが追いついてくるのを待ってみる。小鳥たちに伝言を頼んではあるけど、もしクロが奥のほうで寝てたりしたら、先に行きすぎたボクをセレーナたちが見失っちゃうかもしれないからね。


「ありがとう、ルシェ。行きましょう」

『うん』


 ただ気になるのは、ボクたちの声も足音も聞こえてるはずなのに、クロが出てくる気配が全然ないってこと。もしかしてニンゲンがたくさんいるから、驚いちゃってる?

 そういえばボク、お昼前には会いに行くって伝言を小鳥たちにお願いした時、セレーナも一緒だよって言ってなかったかも。


(ボクの中では当たり前だったから、すっかり忘れちゃってたなー)


 失敗したかもと思いつつ、でもここまで来ちゃったらもう引き下がれないし。とにかく、クロが出てきてくれることだけを信じて。


『クロー。約束通り会いにきたよー』


 路地裏の奥のほうへ、声をかけてみた。

 いつもあの暗闇と同化してるから、もしかしたら今日もそこで寝てるか、もしくは息を潜めてるかもしれないって思ったんだ。

 そしたら、やっぱり。


『……ルシェ、こんなに大勢連れてくるなんて、僕聞いてないよ』


 耳も尻尾も垂れた状態で腰も低くしながら現れたクロは、ちょっと怯えた感じでボクにそう言ったんだ。

 これは完全にボクが悪かったから、ちゃんと謝っておかないと。


『うん、ごめん。ボク、伝え忘れちゃってた』

『ルシェ……』


 困ったような顔でこっちを見つめてくるけど、クロのそんな様子を見てるニンゲンたちも驚かさないようになのか、急に近づいてこようとはしない。むしろその場で立ち止まって、気配を消そうとしてるみたいだった。ボクたちよりもずっと体がおっきいから、狭い路地裏では目立ちすぎちゃうし、そんなことできるわけないんだけどね。

 でも努力しようとしてることは、クロにも伝わったみたいで。そろそろと顔を上げて、ゆっくりとボクの後ろにいるセレーナに目を向けてくれたんだ。


「ルシェのお友達でしょう? 急に大人数で押しかけて驚かせてしまって、本当にごめんなさい。でも、どうしてもあなたにお礼がしたくて、ルシェにお願いをして連れてきてもらったの」


 セレーナも、そんなクロに気づいたみたい。ボクのすぐ後ろにしゃがんで、クロと目線の高さを近づけてから話しかけてたから。

 前に一度会ってるし、その時に挨拶は済ませてるからかな。セレーナが差し出した手を、クロはしっかりとニオイを確かめて。そこでようやく安心してくれたのか、その場でオスワリしてセレーナの話を聞く態勢を取ってくれたんだ。



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