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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第二章 ビアンカとフィリベルト
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1.小鳥たち

『ちょっと聞いてよー!』


 セレーナが『しゃこうかいでびゅー』に出かけて行った、翌日。ボクはあまりのショックに、庭に遊びに来る小鳥たちに話を聞いてもらいにきてた。


『あらあら、どうしたのー?』

『なにかお困りごとー?』


 普段は、好き勝手におしゃべりだけして帰っていくこともあるペアだけど。彼女たちは自由にあっちこっち行ける分、本当にたくさんの情報を持ってる。

 だからきっと、知ってると思ったんだ。


『ボクのセレーナが、ニンゲンのオスに恋しちゃったんだよー!』


 そう、あれは確実に恋だった。

 思い出すたびに柔らかい笑顔を浮かべて、とろけちゃいそうな目をしてるのが、恋ではなくてなんだっていうのか!


『あらあら! ステキー!』

『ニンゲンのメスだもの。ニンゲンのオスに恋するのは、普通のことよー』

『そうかもしれないけど!』

『それでー?』

『あなたのセレーナは、どうしてそのオスに恋したのー?』


 聞かれるがままに答えるボクは、セレーナが話してくれた内容をかいつまんで説明した。

 どうやら初めての場所で、緊張してたせいで道が分からなくなって迷子になってたところを、そのオスが助けてくれたらしい。しかもそのあとも、色々と質問されて困ってたところを助けられたりしたんだって。

 そんな話を、他のニンゲンがいない空間で聞かされたボクの気持ちたるや!

 あの時間はいつも、ボクとセレーナだけの幸せな空間になってるのに……!


『まぁまぁ! ステキなニンゲンじゃないのー!』

『それのなにが不満なのー?』

『だって、おうたいしさま? なんて昨日会ったばっかりの、全然知らないニンゲンのオスなんだよ!?』


 セレーナが言うには「淡く優しいブルーの瞳をお持ちの、腰ほどまである長いプラチナブロンドの髪を、リボンを使って後ろの低い位置で一つにまとめているお方」なんだとか。

 恥ずかしくて自分からは話しかけられなかったらしいし、「大勢の方に囲まれていたの」って言ってたから、優秀なオスなのかもしれないけどさ……!


『あらー!』

『王太子様って、フィリベルト・ディ・パーチェのことよねー?』

『フィリベルト……?』

『知らないのー?』

『この国の王子様よー?』


 小鳥たちの話では、どうやらセレーナが恋した相手はこのあたりの縄張りの中で、将来ボスになることが決定してるニンゲンのオスなんだって。

 そう言われて、逆にセレーナは見る目があるんだなってちょっと感心しちゃったけど。


『確か、他国の王女様との婚約話があったはずなのよねー?』

『でも相手に問題があって、話自体がなかったことになっちゃったのよねー』

『だから、今はフリーじゃないー?』

『そうねそうねー! 今が狙い目よねー!』


 ようするに、セレーナが恋するオスとしては問題ないってことでいいのかな?

 彼女たちだけでピーチクパーチク楽しそうに盛り上がってるけど、ボクにとって一番大事なのはそこだから。

 セレーナはニンゲンのメスだから、ニンゲンのオスに惹かれるのは仕方がない。これは、ボクだって納得してる。

 でも本当にいきなりだったから、ビックリしちゃったんだよ! しかも昨日初めて会ったばっかりの、少ししか話したことのない相手に!


(こうなったら……)


 ボクがこの目で、実際に確かめに行こう。

 小鳥たちの話を疑ってるわけじゃないけど、本当にセレーナに相応しいのかどうかは、きっと彼女たちだけじゃ分からないはずだから。


『ルミノーソ侯爵家の令嬢なら、王子様とお似合いじゃないー?』

『そうよねー! 身分も問題ないしー!』


 まだ楽しそうに話してる彼女たちならきっと、どこに行けば会えるのか知ってるはず。


『ねぇ』

『なぁにー?』

『どうしたのー?』


 そう思って声をかけたボクに、面白そうだからと案内役を名乗り出てくれた小鳥たちだったけど。道中もずーっと楽しそうにおしゃべりを続けてたのには、さすがのボクもちょっと困る時があったよ。

 途中で追い出されるようなことはなかったけど、何度かニンゲンたちに見つかっちゃったからね。もう少しでいいから、ボクが見つからないように気をつけてほしかったなって思った。



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