23.ここに来た意味
あけましておめでとうございます!
今年もルシェたちを、よろしくお願いします!
『うん、もう大丈夫! いけるよ!』
立ち上がって、しっかり四本の足で立ってるクロ。うん、ホントに大丈夫そうだね。
『じゃあ、出発しよう!』
『分かった! ついてきて!』
ニンゲンたちがいた上のほうとは逆側、道を外れる下のほうへと走り出したクロを見て、ボクもマルツィオの背中に一緒に乗ってるニンゲンに指示を出す。
『ほら、ニンゲン! 急いでクロを追って!』
「っ! あ、あぁ。すまない。行こう、マルツィオ」
『おうよ!』
ニンゲンがマルツィオのお腹を軽く蹴って、クロの向かったほうへと動き出す。今までとはちょっと違う、ちゃんと整備されてない場所を進むから、さっきまでよりは速度が落ちてるみたい。
でもそのおかげで青毛の横を通り過ぎる瞬間、すぐにおっきなニンゲンが青毛にまたがってるのを見れたんだけどね。
『意外と、動きは早いんだ』
『……言っとくけど、あの青毛に乗ってるのはニンゲンの中でもかなり上位のヤツだからな』
ボクの呟きを拾ったみたいで、マルツィオがそう教えてくれる。
けど、ねぇ。
『ボクには関係ないよ。それよりも、クロのこと怯えさせたイヤなニンゲンって覚えたから』
『お前……意外と、仲間思いなんだな』
『当然でしょ! クロはボクの大事な友達だもん!』
『……そっか。いいヤツだな、お前』
というか、意外って言葉はマルツィオのほうが合ってると思うんだけど。こんなぶっきらぼうで乱暴な喋り方してるのに、実は仲間思いなんだから。
(っていうのは、今は言わないでおこう)
なんかマルツィオ、すっごく嬉しそうだし。もしかしたらこれで、ボクも仲間認定されたのかな?
ボクが黙ったからか、そっからはマルツィオも黙ってクロのあとを追ってくれて。そのまましばらく、山の中を下った時だった。
『あそこ! 地すべりしてるとこだよ!』
『ルシェたちだー!』
『やっと来たー!』
クロが教えてくれた方向から、小鳥たちの声も聞こえてきた。彼女たちはきっとホントにまっすぐここまで飛んできて、ずっと待っててくれたんだろうな。
走る速度を落としたクロに合わせて全員が同じようにゆっくり進むと、目の前が急に開けたんだけど。知らずにそのまま突っ込んでたら確実に危なかっただろうなっていうくらい、ボクが見ても明らかに本来とは違うって分かる形に地面が下に落ちてた。
「なんと……」
「スプレンドーレ公爵を連れてきてくれたのか!」
「フィリベルト殿下! ご無事でしたか!」
その地面の真下、おっきなニンゲンが手を伸ばしても全然届かなそうな場所に、フィリベルトと知らないニンゲンが立ってた。
『先にワタシたちが呼んできておいたのー!』
『そのほうが早いでしょー?』
『うん! ありがとう!』
得意気に小鳥たちが教えてくれるけど、これはホントにありがたかった。こっから下りて探すとか、どう考えても大変すぎるもん。
「その声は、ルシェか……? まさか、君も私を探してくれていたのか?」
『当たり前でしょ! セレーナもビアンカも、すっごく心配してたよ!』
「……なるほど。全く分からないが、少なくともビアンカに私が無事であることだけは伝わりそうだな」
『もちろん! 帰ったらすぐ伝えるよ!』
とりあえずフィリベルトの無事な姿が確認できただけでも、ボクがここに来た意味があった。これでようやく、ちゃんとビアンカに教えてあげられるからね。
ただ、クロがここにボクたちを連れてきたってことは、逆にいうと安全に下りられそうな場所がここしかないってことでしょ? しかも、クロならっていうだけで。
「殿下、この猫をご存じなのですか?」
「私の部屋に時折遊びに来ているからな。随分と頭のいい猫だということも、よく知っている」
いや、ボクのことなんて今はどうでもいいんだよ、おっきいニンゲン。それよりも、こっからどうするのって話をしなよ。




