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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第四章 力を合わせて

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12.一番は

 とはいえ、フィリベルトが行方不明かもしれない事実は変わらないわけで。

 お家に帰ってきたボクは、とりあえずお昼ごはんを食べてから、そのことはゆっくり考えることにして。まずは部屋の中にある紐を引っ張った。


 それが、お昼寝する前のこと。

 結局色々疲れちゃって、しかもお腹もいっぱいで眠くなっちゃって。もうこれはガマンできないなって思ったボクはセレーナのとこにも行かずに、部屋の中のクッションの上で寝ちゃってた。

 たぶん雨が降るからっていうのもあったんだと思う。ちょっと体が重く感じてたし。実際、目が覚めた時はすでに外は暗くなり始めてて、耳をすませてみれば、水が地面にあたる音がしてたから。


『とりあえず、セレーナのとこに行こうかなー』


 う~んと上半身を伸ばして、次に下半身を伸ばして足を伸ばして。最後にあくびを一つしてから、ボクはクッションの上から飛び降りて、寝る前と同じように紐を引っ張った。

 この部屋から出るにはニンゲンを呼ばなきゃいけないから、仕方ないんだけどさ。外と部屋の出入りが自由な分、ちょっと面倒くさいよね、待ち時間があるっていうのが。


「どうしました?」


 ボクのことが大好きなニンゲンが、優しい声と顔で扉を開けてくれる。その隙を見逃さずサッと部屋の外に出て、その足に頭をこすりつけた。

 これでもう、このニンゲンはボクのお願いならなんでも聞いてくれる。


「あぁ~……! 可愛いですっ、ありがとうございますっ……!」


 嬉しそうにしてる姿に、満足してるだろうから大丈夫だろうなって判断して、ボクはセレーナの部屋に向かって歩き出す。そうすると、すかさずニンゲンがボクの後ろをついてきて。


「お嬢様のお部屋に行きたかったんですね! 分かりました! お供します!」


 こうやって、ちゃんとボクがなにしたいかを理解してくれるんだ。

 これがなにも理解できないニンゲンだと、道中ずーっとどこに行きたいのかって聞いてくるんだよ。答えても理解できないのに、面倒くさいでしょ?

 その分、理解が早いニンゲンだとホントに楽。時折後ろから「可愛いなぁ」とか「賢いなぁ」とか聞こえてくるけど、それだけだし。ホントのことだから、全然問題ないし。

 なにより楽なのがね、一番大事だからね。


「お嬢様、ルシェがお部屋に入りたいそうです」


 こうやってセレーナの部屋が近くなってきたタイミングで、ボクより先に部屋の前に行って確認してくれる。これがホントに、すごくいいの!


(やっぱり、セレーナの次にボクのことを理解してくれてるのは、このニンゲンのメスだよね)


 ボクのためにって色々やってくれたから、そのお礼にもう一度足に頭をこすりつけてあげれば、嬉しそうに小声で「ありがとうございますっ……!」って答えてくれる。これだけ喜んでくれれば、ボクとしても嬉しいよ。


「お帰りなさい、ルシェ」

『ただいまー!』


 でもボクの一番は、やっぱりセレーナなんだけどね。

 両手を広げて優しい声で迎え入れてくれるから、ボクは当然なんの迷いもなくセレーナの腕の中に飛び込む。そのまま頭を撫でてくれる、声と同じくらい優しい手。


「今日は大冒険だったのかしら? それとも雨の前だから、お友達にご挨拶に行っていたのかしら? ルシェがこの時間までお部屋で眠っているなんて、珍しいものね」


 ある意味間違ってないセレーナの言葉に、でもボクはなにも答えられなくて。

 だって……! セレーナがアゴ下を撫でてくれてるから……! 気持ちよすぎて喉が鳴っちゃうし……!


(まだもうちょっと、そこ撫でててほしいもん……!)


 だから、今日ボクが外でなにをしてたのかは、またあとで教えるね。



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