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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第四章 力を合わせて

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3.抗議の声

 でも実は、長いのはこっからなんだよね。

 だって、返事を書くのはあの(・・)フィリベルト。ビアンカから何度も『自分の本心を言葉にするのが苦手』って言われたニンゲンだから。


(また時間がかかるかなー)


 なんて思いながら、今日もゆっくりここでお昼寝でもしてこうかな、って考えてたんだけど。


「……ルシェ、少しだけ待っていてくれないか? すぐに返事を書いてくるから」


 普段だったら、手紙に目を通してからずーっと悩んで、結局呼ばれて出ていっちゃうこともあるくらいなのに。今日はいつもとはちょっと様子が違ってて。

 真剣な表情でボクにそう告げたフィリベルトは、宣言通りすぐに机に向かって手紙を書き始めた。いつもみたいに、頭を抱えたり手が止まったりすることもなく。


『……え。ウソでしょう……? あのフィリベルトが……?』


 さすがにフィリベルトのそんな様子に、ビアンカも驚いたみたいで。目をまん丸に見開いて、ジッとその後ろ姿を見つめてた。

 ボクもボクで、初めて見るフィリベルトの姿にビックリしちゃって。


『……なんか、この部屋の外にいる時みたい』


 思わずそう呟いちゃったけど、驚きすぎてるビアンカの耳には入らなかったみたいで、なんの返事も返ってこなかった。

 というか、ボクたちが会話するヒマもないくらいの、普段では考えられないスピードで手紙を書き上げたフィリベルトが。


「よし。これでいいだろう」


 あっという間に手紙に封をするための液体を垂らして、小さな筒状のモノを押しつけてたから。


『え、え? もう終わり?』

『本当に? 本当に大丈夫なの?』


 むしろ心配になったボクたちは、ソファーの上からその後ろ姿につい声をかけてた。

 だってだって、いつもなら間違いがないかとか、読みにくくないかとか、何度も何度も自分で見直してるんだよ!? そのフィリベルトが、こんなに早く手紙を書き上げた上に封までしてるなんて……! 心配にならないほうがおかしいでしょ!


「ん? 二人とも、どうした?」

『どうした? じゃないのよ!』

『ボクたちは心配してるの!』

「あぁ、これか。私が普段よりも早く書き上げたから驚いているのか? それとも、褒めてくれているのかな?」

『褒めてるわけないでしょう!』

『ホント、話が通じないって不便だなぁ!』


 ボクたちの抗議の声も知らず、フィリベルトはそれはそれは穏やかな顔のままこっちを見てる。というか、むしろ嬉しそうなんだけど。

 あと、いそいそと革袋に手紙を入れないで。ホントに大丈夫なのか、ちゃんと確認して。


「そうそう。ビアンカには前々から話しているけれど、しばらくの間私は留守にする予定だから」

『……え? そうなの?』


 そんな中、急にそんなことを告げられたボクは、思わず抗議してたことも忘れて聞き返しちゃった。

 いやだって、ホントに急すぎるし。ボク、そんなこと今初めて聞いたし。


「もちろんその間も、ビアンカに会いに来てくれると嬉しい。一日でも私が帰ってこないと、部屋の中で一人寂しそうにしていると聞いているからね」

『まぁ、うん。それは、もちろん遊びにくるつもりだけど……』

『……だって、ワタシだけ置いていかれるなんて納得できないもの』


 ボクの返答に隠れて、ビアンカは拗ねたような声でそう呟いてた。

 フィリベルトには聞こえてなかったかもしれないけど、ボクの耳にはちゃんと届いてたからね。これは雨の日以外はちゃんと会いにこないとダメなやつだって、しっかり理解したよ。


「一応ルシェには伝えておこうと思ってね。それと、ルミノーソ侯爵令嬢にも」


 そう言って差し出された、革袋に入った手紙。

 たぶんフィリベルトは、そのことを次の手紙で伝えるって決めてたんだろうね。だから、今回は書き上げるのも早かった。


(内容を決めてたなら、そりゃそうだよね)


 セレーナとフィリベルトの手紙の内容は、いつもボクたちのことばっかりだから。昨日の夜とか、今朝の出来事を書きたくなることもあるみたいで、そうなるとやっぱり先に内容を決めておくことはできないよね。

 でも今回は、違った。きっと出かけることが決まってから、手紙になんて書こうかフィリベルトはしっかり考えてたんだと思う。


「次の手紙は、私が帰ってきてから運んでくれるか? それまで、ルシェの配達はお休みだ」

『ボクは別に、それでいいんだけど……』


 差し出された手紙とフィリベルトの顔を交互に見ながら、ボクはちょっと心配になる。もしかしたら、セレーナが悲しむんじゃないかって。

 でも、フィリベルトはそのことも考えてくれてたみたいで。


「安心してくれ。今回の手紙にしっかりとそのことは書いてあるし、なにより元気になれる私だけの秘密も、待たせてしまうお詫びに特別に伝授することにしたから」


 ビアンカにそっくりな、どこか誇らしげに胸を張るその姿に、ボクも信じていいのかなとちょっとだけ安心する。

 とはいえセレーナがこの手紙を読むまで、完全に安心することはできないけど。


『まぁ、いいよ。手紙はしっかり届けてあげるから』

「ありがとう、ルシェ」


 ボクの言葉が伝わったかどうかは分からないけど、差し出された手紙を口にくわえたら、優しいフィリベルトの声が降ってきた。そのまま、そっと頭を撫でられる。


『あぁ! ルシェばっかりずるいわ!』


 セレーナとは全然違う、大きな手だけど。これはこれで悪くないなと思ったボクは、飛んできたビアンカの言葉に、ちょっとだけおかしくなっちゃった。

 だってさっきは『これで、しばらくはゆっくりできそうね』なんて言ってたのに。構ってもらえないと、それはそれで許せないなんて。フィリベルトのことが大好きで、でも気分屋なビアンカらしすぎでしょ。



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