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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第三章 恋文くわえて

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8.届けてあげる

 そもそも誰宛てに手紙を出せばいいのかも分かってないなら、ボクがフィリベルトからの手紙が届いたことを知ることはないかもしれない。

 でもホントはこれ、チャンスなんだよね。


(このままセレーナとフィリベルトが手紙のやり取りをするようになれば、もしかして……)


 セレーナの恋が、叶うかもしれない。

 ビアンカと一緒にいる時のフィリベルトをたくさん見てるせいで、どうしても本当にこのオスでいいのって思っちゃうけど。


(この部屋から出ると、ちゃんとしてるんだよなぁ)


 他のニンゲンの前では、ちゃんと真面目な顔で対応して。真剣な雰囲気で、内容はよく分からなかったけど、すごく大事そうなことを話してた。

 そういう姿も知ってるから、これ以上はボクが判断することじゃないような気もしてて。だからいっそ、直接会って話せばいいのにって思ってるんだけどさ。


『ニンゲンって、色々よく分かんないよね』

『急にどうしたのよ?』

『だってさ、ボクたちみたいに自由に会いに行けないんでしょ?』

『そうね』

『それって、不便だし面倒じゃない?』

『まぁ、ねぇ』


 気になるなら直接会いに行けばいいのにって思うんだけど、ニンゲンはそういうことを簡単にはできないんだって。同じニンゲンに対して、会えるニンゲンと会えないニンゲンが決まってて、そこからさらに会えるニンゲンのとこに行くためには、色々時間がかかるらしいんだ。

 ホント、ニンゲンってよく分かんない。


「そうか! いっそ、ルシェの飼い主のあなたへ、としてしまえばいいのか!」


 もっと簡単に会えるようにしちゃえばいいのにって考えてたボクの耳に、なにかを思いついたらしいフィリベルトの声が聞こえてきた。

 さっきよりも明るい感じだから、これで少しは進むのかな?


「突然のお手紙、失礼します。……いや、硬いか?」


 あ、これまだ進まないやつだ。

 呟いた言葉と様子に、そう判断したけど。結局ああでもないこうでもないと、まだまだ悩み続けるフィリベルトに、いい加減飽きてきたボクは。


『フィリベルトって、いつもこうなの?』

『本心を言葉にするのが苦手らしいわ』

『え!? なにそれ!?』

『ニンゲンの中でも、フィリベルトは特別なのよ』


 完全にフィリベルトの存在を意識から外して、ビアンカとのおしゃべりに集中することにした。

 そこで知った新しい情報としては、フィリベルトは将来ボスになることが決まってるから、昔からたくさんのニンゲンに囲まれて暮らしてきたってことと、それ以上にたくさんのメスにアプローチされてきたってこと。


『最近は、どっかの王女との婚約話が白紙になったからって、なおさら近寄ってくるニンゲンが増えたらしいわ』

『それって、イヤなことなの?』

『フィリベルトは疲れるって言ってたわね』

『そうなんだ』


 そういえばセレーナも、夜会から帰ってきたときに言ってたかも。ちょっと落ち込んでる感じで、「大勢の方に囲まれていて、王太子殿下のところに向かうことすらできなかったのよ」って。

 でもそっか。セレーナだって出かける前は「少しでもお話しできるかしら? お礼だけでも伝えられたらいいのだけれど」ってちょっと楽しそうだったのに、帰ってきたら「お話しできなかったの」って悲しそうにしてたんだから、それだけたくさんのニンゲンが寄ってきてるってことだもんね。

 なんか、フィリベルトもフィリベルトで大変なんだね。


「よし、できた! これでどうだろうか」


 どうやらボクたちがおしゃべりしてる間に、ちゃんと進んでたみたい。ようやくできあがった手紙を両手で持って、真剣な顔で見つめてる。

 そんなフィリベルトの様子に、これでもう大丈夫かな、なんてちょっと安心した。

 なのに。


「……いや。これを出すのか? 本当に?」


 まだウジウジ迷ってるから、さすがにボクもガマンできなくなって。


『いい加減にして! そんなに迷うくらいなら、ボクが直接セレーナに届けてあげるよ!』


 間にあった小さいテーブルを足場にして、フィリベルトのいる机に飛び乗る。

 結局出すことを諦めたのか、保留にしたのかは分からないけど。とりあえずキレイに折ってた途中のその手紙を、フィリベルトの手から奪い取って。そのまま隣の部屋に繋がる、少しだけ開けられてた扉のすき間を通り抜けて、窓枠へと飛び乗った。


「こらルシェ! 待つんだ!」

『いいわよ。やっちゃいなさい』


 フィリベルトとビアンカから正反対の言葉をかけられるけど、ボクはボクのやりたいようにやるって決めたんだ。それにボクって結構運動神経いいから、ニンゲンじゃあ追いつけないよ。


『ヤダ、待たない。じゃあビアンカ、またね』

『えぇ、また。次回、結果を楽しみにしてるわ』

「こら! せめて手紙を返してから……! 待てルシェ!」


 フィリベルトが必死に手を伸ばしてくるけど、外の木に飛び乗っちゃえば、こっちのもの。ここまでは追いかけてこれないって、知ってるからね。それにビアンカだって納得してるんだから、これが正解なんだよ。

 ウジウジ悩んでばっかりのフィリベルトの声を背中に浴びながら、ボクはまっすぐにお家に向かって走り出した。

 待っててね、セレーナ! 今、フィリベルトからの手紙を届けるから!



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