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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第三章 恋文くわえて

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5.完全に別

「それにしても……」


 ひっくり返ってるビアンカと、毛づくろいを再開したボクを見比べてたフィリベルトが、そっとため息をつくと。


「私の執務中にビアンカと二人きりでまったりできるなんて、なんて羨ましい……!」


 両前足……じゃなかった。両手で顔を覆って、なんかブツブツ言い始めた。


「しかもそんなっ……! あられもない姿のビアンカなんて、私でも滅多にお目にかかれないというのにっ……!」

『……って、言ってるけど?』

『フィリベルトに撫でられるのなら、頭とか背中のほうがいいんだもの』


 それに対するビアンカの反応は、ある意味サッパリとしたものでもあったけど。その気持ち、ちょっとわかる気がする。

 ニンゲンの手で撫でてもらう時って、どのニンゲンかによって気持ちいいとこが違うんだよね。共通していいと思うのは、やっぱり頭かなってボクも思うし。

 フィリベルトはオスだから、手も大きいんだよね。だからビアンカくらい小さいと、全体を包み込まれてる感じになってあったかいのかも。あと包まれてる感じって、安心するよね。


「あぁ、私のビアンカ。やはり猫か? 猫のほうがいいのか?」


 どこか悲しそうな顔で近づいてくるフィリベルトの手に、ビアンカは小さくため息をついてからすり寄っていった。その瞬間、希望を見出したように変化するフィリベルトの顔。


『まったく、なにを心配しているの。大丈夫よ、フィリベルトは特別なんだから』

「あぁっ、ビアンカ~」


 妙に情けない声を出しながら、ビアンカをそっと抱き寄せるフィリベルト。

 ねぇ、コレ(・・)がホントに、セレーナが望んでるオスの姿なの? やっぱりなんか違う気がするんだけど。ボク一応フィリベルトの別の姿も知ってるけど、完全に別のニンゲンじゃない?

 さっき別の場所で他のニンゲンたちと一緒にいる姿を見た時は、すごくキリッとしててカッコイイ感じだったのに。ビアンカの前だと、そのカケラも見当たらないし。


(そういえば、セレーナも時折ボクとの会話に集中しすぎて、他のニンゲンの話を聞いてない時があるかも)


 ニンゲンって、そういうものなのかな? それとも、ボクたちがカワイイから?

 だとしたら、カワイイのってある意味罪だよね。


「ビアンカの毛はふわふわで気持ちいいな」

『当然よ』

「それに小さくてあたたかくて、本当に愛おしい」

『そうでしょう、そうでしょう』


 幸せそうなフィリベルトと、まんざらでもなさそうなビアンカを見てると、別にそれでもいいのかなって思えてくるんだけどね。

 ただ、ビアンカに頬擦りしようとして『それはイヤ』と両前足で拒否されてるフィリベルトの姿は、本当にセレーナの相手として相応しいのかどうか、やっぱり疑問に思えてくる。

 前足を突っ張られて頬が若干潰れてるのに、どこか嬉しそうなその姿を見ながら、ネコ好きならそれでもいいのかな、なんて本気で悩み始めそうになってたボクは。


「……おや? 君、首輪が新しくなっているんじゃないか?」


 フィリベルトのその言葉に、今日ここに来た理由をようやく思い出して。


『そうなんだよ! セレーナが新しい首輪をつけてくれたんだ!』


 よく見えるように、しっかりと背筋を伸ばしてその場にオスワリする。こうすると、セレーナはいつも喜んでくれるんだよね。

 だから、フィリベルトからはどんな反応が返ってくるのかなと、ちょっと期待しながら見上げてたボクだけど。


「……ル、シェ? 君は、ルシェというのかい?」


 予想してたどの反応とも違って、フィリベルトは少しだけ驚いたような顔をしてボクを見てた。



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