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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第三章 恋文くわえて

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1.新しい首輪

「ルシェ」


 優しくボクの名前を呼ぶセレーナは、この日朝からものすごくご機嫌だった。

 夜は一緒に寝てるボクたちだけど、朝ごはんの時間は別々の場所で食べてるから、セレーナが着替えてる間ボクはいつも自分の部屋に行ってる。ごはんは常にそこでしかもらえないからね。

 でも、その時はまだいつも通りだったはずなんだ。

 それが明らかに変化してたのは、セレーナが朝ごはんを食べ終わって戻ってきた時。ボクが先にセレーナの部屋のソファーで寝てて、帰ってくるのを待ってる間だった。


「ルシェは毎日、お外にお散歩に行くでしょう?」

『うん、そうだね』


 ボクの頭を優しく撫でてくれるから、それが気持ちよくて。満腹なのもあって目が閉じそうになっちゃうけど、せっかくセレーナが話しかけてくれてるのに、まだ寝たくない。

 そう思いながら必死に眠気と戦ってたボクは、どうやら少しだけ話を聞き逃してたみたいで。


「――それでね? 迷子になってもすぐに戻ってらこれるように、新しい首輪を用意したの」

『……ん?』


 たぶん、途中でちょっとだけ寝てる瞬間があったんだと思う。セレーナの話が、ボクが聞き取れた内容だけだと繋がらないような気がするから。


「ちゃんと名前を入れているから、見つけてくれた人がすぐにルシェがどこの子なのかが分かるのよ」


 でもこの感じだと、重要な部分はちゃんと聞き取れてたような気もする。

 つまり、ボクが迷子になったとしてもお家に帰ってこれるように、名前入りの新しい首輪を用意してくれたってことでしょ?


「ほら、ここにルシェって書いてあるの。裏にはルミノーソ侯爵って入れてもらっているのよ」

『そうなんだ。ありがとう、セレーナ』


 ボクのことを心配して、準備してくれたんだよね。正直ニンゲンの文字っていうのは、全く読めなかったけど。赤いリボンに、丸くて薄いものがぶら下がってるのだけは分かった。

 今つけてるのは、ただの赤いリボンの首輪なんだけど。実はこれも、もう五本目だったりする。前までのやつは全部、ボロボロになっちゃったからって変えてくれたんだ。

 ちなみにこの首輪って、ニンゲンの中でも貴族って呼ばれるような数少ないところのお家に住むネコやイヌじゃないと、してないんだってさ。だから目印になるんだって。不思議だよね。


「少しだけ、じっとしていてね?」

『うん、分かった』


 言われた通り、座っておとなしく待ってるボク。その間に、セレーナが素早く首輪をつけ替えてくれる。

 ちなみにボクが今までの首輪のリボンの色を知ってるのは、毎回セレーナが教えてくれるから。ボクには赤が似合うんだってさ。


「できたわ! やっぱりルシェには、赤のリボンと金のプレートが似合うわね」


 ほらね。こうやって、セレーナがいつも教えてくれるんだ。


(……ん? ぷれーと?)


 きんのぷれーとって、さっきの丸くて薄いやつかな? ボクの名前が書いてあるっていう。


「素敵よルシェ。とっても似合っているわ」


 ちょっとだけ疑問は残ったけど、でもセレーナがそう言うのなら間違いない。

 満足そうなその顔を見上げれば、頭を優しく撫でてくれる。それが嬉しくて、気持ちよくて。


『ありがとう、セレーナ』


 一応お礼だけは伝えたけど、また眠たくなってきてウトウトしてきたボクは、そんなに似合ってるなら、みんなに見せに行かなきゃって思って。


(とりあえず、まずはひと眠りしてから)


 きっと遊びに来てるはずの小鳥たちにまずは会いに行って、それからお昼ごろには朝の訓練から戻ってきてるはずだから厩舎(きゅうしゃ)に行って、そのあとはクロのところかな。


(あぁ、あと。ビアンカのとこにも行って、見せてあげないと)


 セレーナが、ボクのために新しい首輪を用意してくれたんだよって。

 そんなふうに、起きてからの予定を考えながら。セレーナのそばで、安心して眠りについたんだ。



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