表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆ   き  作者: 気衒い
3/10

3.自己紹介

「おじさん、こんにちは」


男が少女と出会ってから一週間が経った。少女は男にとって、初めて話した幻灯町の人間であり、その後町を案内してくれた恩人でもあった。しかしながら、その日を境に毎日毎日、男の元を訪ねてくるこの少女に対して、若干の億劫さを感じていたのもまた事実であった。


「その"おじさん"って、呼び方やめろ」


「だって、名前知らないもん」


ちなみに男が住んでいるのはログハウスのような造りの家だった。金など当然、持ち合わせていない男にとって家を借りることなど決して不可能。であれば、と駄目元で頼み込んだところ、ちょうど運良く誰も使っていない空き家があるとのことで図々しくも使わせてもらえることになったのだ。


(まぼろし)(つかさ)……………それが俺の名前だ」


「へ〜……………なんだか珍しい名前だね」


「俺からしたら、この町の方がよっぽど珍しいわ」


「そうなのかな?」


「どんなところでもずっといりゃ、それが当たり前になる。それの最上級が"住めば都"だ」


「あっ!それ知ってる!"シメはいりこ"!!」


「"住めば都"だ!どう間違えたら、そうなる!」


「そういえば、名前何て呼べばいい?」


「ったく、急に話題が変わるな……………好きに呼んでくれればいいよ」


「そう言われると困るよ〜な。うーん………………はっ!!もしかして、今日のおかずは何でもいいと言われて困るパートナーの気持ちって、こういうもの!?」


男………司の言葉に対して、人差し指を口に当てながら、虚空を見つめた少女は数秒悩んだ挙句、こう口にした。


「じゃあ、間を取って"おじさん"で」


「さっきと何も変わってねぇじゃねぇか!!一体、どこの間を取ったんだよ!!」


「嘘!嘘だよ、司さん」


そう言って、軽く微笑んだ少女は次の瞬間、司の耳元でこう囁いていた。


「私の名前は花見(はなみ)(ゆき)っていうの。覚えてね」


「……………何て呼べば?」


「好きに呼んで!!」


「…………ったく」


司は再度、思った。毎日訪ねてくる恩人、これほど無碍にできない厄介者はいないと。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ