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第四話「入婿」

ルビカント・ドゥーカ=ソァーヴェ視点

 俺はルビカント・ドゥーカ=ソァーヴェ、天下の公爵様だ。王族以外なら最高位の爵位を持っている。領地も広大だが全てを把握してはいない。そんなものは家令や執事の仕事だ。高貴な貴族が直接手を下す事じゃない。


 若かりし頃、親同士の縁談で決められた婚約者は代々続くドゥーカ(公爵)の爵位を持つ家のフランカ・ソァーヴェだった。目が青く髪は黒いありふれた顔立ちだ。

 俺の実家は辺境の伯爵に過ぎず三男坊の身分としては破格の条件だった。入り婿ながら二つ返事で了承する。


 しかし結婚してみて分かったが妻となったフランカは物静かな性格で面白みの無い女だった。教養が足りないのか話は長く続かず、暇があればハンカチに刺繍をしている。自然と同じ部屋にいる事も少なくなっていた。


 そして俺との間に出来た子供は娘。この国で爵位を頂くには男子である事が必要なため、俺の時のように入り婿を取らなければならない。全く面倒な事になったものだ。


 領地経営をソァーヴェ家に代々仕える家令に任せて王城で働くも、特に実績も無かったためか物資の搬送を行う兵站の仕事を仰せつかる事になった。

 周辺諸国との諍いが続くこの国で軍の仕事に食いはぐれはない。しかし日の光は裏方作業をこなす役よりも敵を討って手柄を立てる人間に当たるものだ。


 なぜ俺には兵站なんて端役しか仰せつけられないんだ?あまりに高い爵位を持つからか?同じ公爵位のヤツラは宰相や軍務卿など晴れがましい役職に就いているのに。


 それともあれか、所詮は入り婿だからと軽く見られているのか??


―――


「ぷはぁぁぁ、全くどいつもコイツも頼りにならねェ・・・そう思わないか?」

「ぅふふ、旦那様はいい飲みっぷりですこと!さぁもう一杯飲んでイヤな事は忘れましょ!」


 王城勤めを始めて一年経った頃、仕事が終わると町の居酒屋で一杯ひっかけるのが習慣となった。

 家に帰っても面白みのない生真面目な妻と同じく大人しい娘が相手では憂さも晴れない。家ではハメを外すと奥ゆかしい妻が俺を糺す前に口うるさい家令がとんでくるので窮屈だ。


 そこへ来るとこの居酒屋では気遣う事無く酒が飲める上にウェイトレスと夜の商売を務めるこの女との会話が楽しい。

 コイツは俺に逆らう事が無く、かといって話を聞き流す訳ではなく俺の考えに合った意見を言ってくれる。女とはこうした包容力が必要なものだ。

 俺はこの女・パトリツィアに溺れる事になった。



 そんな生活を繰り返している内に妻フランカが流行り病で亡くなってしまっていた。さすがに家に目も向けず遊び過ぎた事が悔やまれる。


 本来俺は入り婿だから実家の貴族籍に戻られなければならないが、ソァーヴェの血を引くシスティナはまだ成人前なのでソァーヴェ家の当主代理としての身分を与えられる事になる。ひとまずは安心だ。


 しかしそれ以来真面目に家に帰っても非難めいた目をする家令や使用人達がいる。ますます家に帰るのが億劫になってしまう。



「ルビカント様、これが私と貴方様の娘・ラウレッタです」

「と、父様ぁ・・・」


 三ヶ月ぶりにやけ酒を飲むべく居酒屋に入った俺を待っていたのはウェイトレスのパトリツィアとその娘だった。

 風貌から見るに7~8歳ぐらいか。大きい瞳や顔立ちはパトリツィア似だが茶色の髪や鼻が少し高いのは俺と良く似ている。


 俺との子供かどうかは正確には分からんが8年前の頃はよく通い詰めた上に夜通し過ごしていたからなぁ。今更責任を取らずに逃げる訳にもいかん、どうしたものか。


 そうだ、今の家には娘のシスティナしかいないではないか!パトリツィアと再婚すれば母親の代わりになってくれるだろうし、ラウレッタも引き取る事が出来て一石二鳥じゃないか!!そして隠居した前ソァーヴェ公爵夫妻はすでに亡くなっている。俺に文句を言えるヤツは誰もいない。



 その日は酒を飲むことなく家に帰り、翌朝パトリツィアとラウレッタを法務局に連れて行き婚姻承諾書を書く。2人とも俺と一緒に暮らす事が出来るのが嬉しいようで見ているこちらまで楽しくなってきた。

 家に帰るとシスティナと2人を引き合わせる。


「システィナ、今日から私達の新しいお母さん『パトリツィア』と妹となってくれる『ラウレッタ』だ・・・挨拶しなさい」

「し・・・システィナさん・・・これからよろしくね?」

「お、お姉さまぁ」

「はい・・・宜しくお願いします」


 システィナは予想通りわがままを言わず挨拶を返す。しかし寝る前に家令と使用人達がパトリツィアとの再婚に反対してきた。コイツらは前ソァーヴェ家からの家臣達だから新参者のパトリツィアが気にくわないのか。俺にとっては最高の妻なのに。


 一向に聞き入れない使用人達を一斉に解雇してやった。新たな使用人達を雇い家を一掃する。こういう時は貴族同士のツテが役に立つというもの。王城務めもバカには出来んという事だ。


「貴方、システィナさん・・・にはどうすればいいのかしら?上手くは言えないけどあの子は近寄り難くって・・・」

「気にする事はない、時間が解決してくれるさ」


 パトリツィアはシスティナにも愛情を向けようとしてくれるがどうも効き目がないようだ。まだ子供だから仕方がないにしてもこういう融通の利かないところは母親そっくりというか。

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