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番外編4「信念」

 ・・・とこんなものか、あくまで検証や推論ばかりなので結論に書いた通り証拠材料は足りないけど・・・エーゼスキル学園で今後の念属性の研究材料にしてもらえれば幸いだ。


 S氏、ホントは彼女の事など報告書には書きたくはない。しかし念属性の論証のため仕方なく情報を最小限にして書かざるを得なかった。


 一部事実と異なる表記をしたけど問題はないだろう。システィナ嬢が存命であればエーゼスキル学園も彼女を研究対象として保護するだろうし、何より「彼女」はもう理鬼学スキルを使用出来なくなっている。


 別に論文を書いて名を上げたり教育機関の重職に就きたい訳じゃない。今まで論考を学園に提出してきた理鬼学の研究、そして念属性への研究は今後も現れるであろう念属性保持者のためのものだ。


 システィナ嬢のように軍事戦力としてだけに扱われる悲劇を防ぐために。



  コンコン


 ノックの音とともにドアが開かれる。両手にティーセットを持って部屋に入ってくる愛しい奥さん。


「お茶が入りました、ビアジーニ教授」


 少しずつ以前のような淑女らしい振舞になってくるシスタ。アンジョラ専務のマナー教育の賜物だろう。


 ネローニ商会のアンジョラ専務はシスティナ嬢の学友だ。シスタの白髪の姿や記憶を失っている様に悲しむも、これまで以上に親交を深めたいとボナさんと共にシスタの世話をしてくれる。そんな彼女をシスタも気に入ってくれているようだ。


 ひょんなことからシスタにマナー教育を始めるアンジョラ専務。しかしシスタはそれほど苦にもならずあっさり出来るそうな。


「シスタさんにはお教えする事がないですわね、当然ですけど」


と苦笑いしながら言っていた。

 未だシスティナ・ソァーヴェとしての記憶が戻らないが、以前の行動を身体が覚えているようで時折驚かされる始末。


 意外と彼女も慌てふためく僕を見るのが楽しいようだ。



「ぁ・・・ありがとう、でもその呼び方は心臓に悪いよ・・・君だってもうビアジーニじゃないか」


「だってこの方がカッコイイんですもの、それに貴方はもうネローニ商会お抱えの理鬼学講師ですから・・・ご身分を弁えてもらわないと」


 以前港町でシスタがならず者達に襲われそうになった後、ネローニ商会の会長に戦闘術に長けるメンバーを自警団に臨時参加させる事を提案した。

 結果として町の治安が良くなり自警団から戦闘技術を師事される事になった。


 商会に仕事を斡旋してもらった時よりもお給金が上がって生活がしやすくなっている。人にものを教えるこの状況はまるでカヴァルカント学園にもどったような感じだ・・・それでも。


「そんな偉そうな肩書より、僕は奥さんのお茶が欲しいなぁ」

「はいはい、それじゃ『ホウジチャ』をお淹れいたしますね?」


 茶葉の焼けたような香ばしい香りが漂ってくる。この匂いを嗅ぐと気持ちがほっこり落ち着く。僕も彼女もこの香りが好きだ。


 机に向かっていた僕は椅子から立ち上がりソファーに腰を座らせる。するとお茶をテーブルに置いたシスタは僕のとなりに寄り添い、僕の肩に頭を預けてくる。


「私、貴方とこうしている時間が一番好きです」

「僕もだよ、シスタ」


 二度と失わないよう大切な彼女の肩を抱きよせる。



 いつの日か彼女は辛かった過去を取り戻すかも知れない。何百の兵士達や国王、そして自分の家族までその手に掛けたと絶望するかも知れない。


 しかしそうなったとしても僕は彼女シスタを支えていきたい。シスタは僕の助手であり生徒であり・・・愛すべき伴侶なのだから。


<完>

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