番外編2「帰国」
土木工兵アリキーノ視点(第二話・第三話・第二十一話参照)
「おぅ、見えてきた見えてきた!お前ら、あれがサダン・ダグラド・バィワの三山だ」
「あれかぁ・・・何だ、はげ山じゃないっスか」
「ぜぇぜぇ・・・こんな山道乗り越えて来たかと思えば」
「ここに来たら儲かるんじゃねぇんですかい??」
俺っちはアリキーノ。元イラツァーサ王国の土木工兵だった男よ。
若い時にガストーニ砦で仕事やってたらモンスターに襲われちまったっての。命からがら助けられたけど右腕が千切れちまって死にそうだった。
そんな俺っちを助けてくれたのが青い目の長い黒髪のお嬢様だった。顔を拝ませてもらった時ぁ女神様かと思っちまったよ!
で気づいた時にゃ右腕は元通りで他の傷も綺麗に塞がっていた。コイツぁ礼を言わねぇと男が廃る!そん時来ていた王様の命令でお嬢様に会った。
その態度は男なんて初めて見ましたってもので箱入り娘ときたぁ。俺っちの回復アピールも受けなくてちっと寂しかったぜ。もっと頑張ろうとすると年の若い王子様に耳ひっぱられて追い出されちまった。
あ!俺っちとした事が恩人の名前聞くの忘れちまってたぜ!砦の隊長さんも王様と王子様は知ってるがお嬢様の名前は知らないっつってたしなぁ。
◇
土木工兵は結構使われる。今度ぁ西のフィロガモ砦で作業することになった。
珍しく真面目に仕事してると赤毛のメガネの男がやってきた。何でもカヴァルカントって学園の先生だとか。若ぇのにスゲぇこった。
俺っちが無くした右腕を生やしてもらった話を聞きてぇそうなので多少尾ひれをつけて武勇伝にしてやったぜ!先生の受けは悪かったけど。
そうだ、この先生なら知ってるかも?
「学園の先生よぉ、俺っちの恩人の名前を教えてくれよ~いつか礼がしてぇんだ」
「彼女はシスティナ、システィナ・ソァーヴェ嬢ですよ」
「システィナ様かぁ、ずいぶんべっぴんサンだったよなぁさすがは俺っちの女神様だ!!」
「忠告しておきますが彼女の家はドゥーカ(公爵)でやがてはこの国の王太子妃になられます、不用意に近付くと命の保証はありませんよ?」
学園の先生は難しい事言ってお礼のお小遣いをくれて帰った。よし、臨時ボーナスも入った事だし今日は一日ぶりに飲みに行くかぁ!
◇
あちこちの砦を修理して回った俺っちは国を出る事にした。騎士でも貴族でもねぇからこの国に腰を下ろす必要はねぇ。だったらもっとお給金の高いトコに引っ越してやる!目指せ高所得者階層!ってか?
・・・などと考えてた時期が俺っちにもあったぜ。西隣のウィザースじゃ散々コキ使われる割にお給金はスズメの涙。これじゃ晩酌を一日置きにガマンしなきゃならねぇ。そう考えながら居酒屋でエール5杯目に突入した時だった。
「おぉい!隣のイラツァーサが国を捨てちまったぞ!ウチのウィザースはあの領土の3分の1もらえるんだとか!」
「マジかよ!だったら俺らもおまんま食い放題!!」
「なワケあるかーい!潤うのは王様やお貴族様達だけだろ?俺らにゃ関係ねぇわ」
俺っちの出身イラツァーサがなくなった?!こうしてはおれん、店の支払い済ませてハシゴするぞ!!
翌日もその翌日もイラツァーサの話で持ち切りよ。
「領土分けは無事に終わったが・・・あの三つのはげ山だけはどうにもならねぇそうだ、コルムーもオヴロも手をださねぇ」
「なんだよ、山ン中にゃお宝があるってのが相場だろ?」
「あの山の周りじゃ理鬼学スキルが使えんらしいぜ?元々あの山はお宝どころかモンスターの棲み処だからスキルも使えないのに行くのは自殺しにいくようなもんさ」
三つの山、ってのはサダン・ダグラド・バィワの事か。俺っちのいた頃は草木ボーボーの山だったハズだがスキルが使えんでは確かに危険
・・・でもねぇか、俺っち理鬼学のスキルってのはどうも苦手なんだよな。腕っぷしは誰にも負けねぇんだが。
そうだ、俺っちみてぇなスキル苦手族を集めてあの山を管理できねぇかな?仕事場のアイツとコイツにソイツ、まずはこの三人をピクニックに連れてってみよう!
◇
という訳でイラツァーサの三山に野郎4名のむさいパーティーで視察にきたって事よ。ホントに何もねぇトコだな。
同行していた2名もつまらなさそうな顔して山を眺めていた。コイツはハズレかぁ?もう一名はどこに・・・なにやってんだアイツぁ!
「てめぇ、何リュックサックに顔突っ込んでやがんだ!キモいなぁ!!」
「へへ、アリキーノ兄ぃも嗅いでみます?めちゃくちゃイイ匂いッスよ!」
言われるままにリュックサックの中を嗅いでみる。甘ぁい香りが漂ってきてこりゃたまらん、一体何が入ってやがるんだ?たまらず手を突っ込んで荷物をぶちまける事に。
「ああ~!何てことしやがんだよ兄ぃ!俺がガレキの中で見つけて来たのに・・・」
中身は・・・女物の下着と兵隊の服だった。
「てめぇ変態か!女の荷物パクりやがって・・・何だこの包みは?」
30センチメートルほどの薄い板が丁寧に包まれている。包みを破ると出てきたのは絵・・・この顔は・・・俺っちの女神システィナ様だぁ!!
「ああああ!やっと会えたぜ!!これぞ俺っちの女神様!!!こいつぁ幸先いいぜ!これでここの事業も成功するにちげぇねぇ!!」
「ちょ、ちょっと兄ぃ!俺の見つけてきた荷物なのにずるぃっスよ!!」
「分かったわかった!ちゃんとお小遣い払ってやるから・・・ほらよ!!」
「うひょー太っ腹・・・って全部銅貨じゃねぇすか!」
俺っちは決めたぜ、ここで鉱山ビジネスを始めてやる。スキルの使えないヤツラを集めりゃ一攫千金も夢じゃねぇ!!
―――――
追記
土木工兵アリキーノ氏がタダ同然で買い付けたサダン・ダグラド・バィワの三山。鉱山産業と地場の影響かスキルの使えないこの地理を利用して犯罪者を働かせる鉱山となる。
時代を経て元の「イラツァーサ」が訛って「イラザス鉱山」と呼ばれる事になる。
この話も次世代の「決死のタイムリープ(エピローグ)」と「緋き牙と碧き路(デルト視点1)『こんな戦術があるのか・・・!!』」に続く設定となっております。
「決死のタイムリープ(エピローグ)」
https://ncode.syosetu.com/n5573hl/16/
「緋き牙と碧き路(デルト視点1)『こんな戦術があるのか・・・!!』」
https://ncode.syosetu.com/n5104hw/9/




