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番外編1「出国」

ルカーノ・ビアジーニ視点4

 王太子殿下と別れてから数時間後、イラツァーサ三山の近くで巨大なスキルが辺り一帯を包みこんだ。その中心にシスティナ嬢がいたのを僕の並外れた視力は見逃さなかった。


 スキルの使用者は彼女だった。鬼力を使い果たした彼女はそのまま仰向けに倒れ込む。居ても立っても居られなくなった僕は鬼力で身体全体を強化して森の中を走り抜ける。


 僕の鬼力は「光属性」、粒子と波動を併せ持つ性質を利用して移動速度を上昇する事が出来る。あっという間にシスティナ嬢のいる場所までたどり着いた。


 システィナ嬢は無事だったが・・・黒く艶やかな髪は真っ白となっていた。あれだけ巨大なスキルを使ったんだ。力を使い果たしたとしてもおかしくはない。とにかく一刻も早く彼女を休ませなければならない。


 急いでこの場を離れようとするも何故かこの一帯で理鬼学スキルが使えなくなっている?三山の付近にそのような話は聞いたことがなかった。


 彼女を背負ったまま徒歩でイラツァーサを後にする。この騒ぎで僕の行く手を阻む者は一切なかった。



 未だ放置されていた自分の家からお金を持ち出し、当てのないまま東の隣国コルムーへ入国する。ここには港町もありいざという時は海上に出る事も可能だ。

 もっとも幸か不幸か、後からイラツァーサ王国は解体する事になったので逃亡生活の必要も無くなった。


 システィナ嬢を医者に見せると幸いにして鬼力は安定しているとの事。後は目覚めるのを待つばかりだそうだ。しかし寝たきりとなった女性の世話は僕には到底できない。


 町中で世話役を募集してみると一人の三十代の女性ボナが名乗り出てくれた。何でも高貴な貴族の元でメイドをしていたのだとかで身元は安心だ。

 眠っているシスティナ嬢の元へ案内すると驚き叫ぶ。


「こ、これは・・・システィナお嬢様じゃありませんか!貴方一体お嬢様に何をしたんですか!!」


 突然僕に怒りをもって掴みかかるボナさんにこれまでの経緯を語る。彼女は次第に嗚咽をもらす。


 驚いたことに彼女は以前ソァーヴェ家でシスティナ嬢の養育係をしていたらしい。システィナ嬢の実母フランカ夫人の侍女であり親友でもあった彼女は、入り婿であるルビカント・ソァーヴェが再婚した時に屋敷を追い出された使用人達の一人だった。


 そんな彼女ならシスティナ嬢を無碍には扱わないだろう。ボナさんは喜んでシスティナ嬢のお世話をしてくれる。



 システィナ嬢をボナさんに任せた僕は仕事を探す事に。残念ながらこの国では知り合いもいないので職業を選んでいる余裕はない。持っていたお金もすでに底を尽いている。


 とりあえず仕事を斡旋してくれそうな「ネローニ商会」を尋ねる事に。商会の若き専務が僕の履歴書を見る。


「ルカーノ・ビアジーニさん・・・ええっ?もしかしてカヴァルカント学園のビアジーニ教授ではありませんか!」


 久しぶりに呼ばれた名前だ。商会の専務はカヴァルカント学園卒業生のアンジョラ・ヴィスコンテ=ネローニ嬢だった。


 聞けばシスティナ嬢の婚約破棄騒動の折りは彼女を必死に守ってくれたようだ。しかし力及ばずシスティナ嬢の国外追放を見届けた後、イラツァーサに愛想を尽かしてこの国に一家で移住したのだそうな。

 彼女のお父上はヴィスコンテの爵位を捨てても商売のツテがあったのでこの国で商会を立ち上げるに至る。


 僕がシスティナ嬢との経緯を話すと喜んで仕事を斡旋してくれることになった。僕は我が身の幸運に感謝した。



「お兄ちゃん・・・だれ?」


 そして目覚めたシスティナ嬢は・・・すべての記憶を失っていた。彼女を襲う残酷な運命に怒りを覚えるが、不安になって泣いている彼女を見てしっかり励ます。


「君はシス・・・シスタだよ?もう大丈夫だから、何も心配いらないよ!」


 僕の言葉を聞いてますます幼い子供のように泣きだすシスタ。でもこれでいい、システィナ・ソァーヴェとしての過去はあまりにも辛い事ばかりだった。


 彼女にはこれから幸福になる権利がある。無理にシスティナ・ソァーヴェであった事を思い出す必要はない。

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