第三十九話 「行脚」
アルカンジェロ・プリンチペ=イラツァーサ視点4
「王様に王妃様、こんにちは!いよいよこのお城が私の物になるのね!北の離宮の暮らしも悪くはなかったけど!」
北の離宮から連れてこられたのは・・・やはりラウレッタ嬢だった。きらびやかなドレスに身を包んでいる。
「な・・・こ、これは!」
「ぅそ、システィナさんがどうしてここまで無作法に・・・」
「違います、彼女は義妹のラウレッタ・ソァーヴェ嬢です!連行した兵士達が取り違えたんですよ!システィナと!!」
「で、ではシスティナは・・・」
「砦の任務から帰って来た兵士によると彼女は名前を抹消された上で衛生兵として働いています、今はエスポージト砦にいるようです!」
「な、なんて事・・・」
母上が卒倒する。憎きラウレッタ嬢に施した罰がお気に入りのシスティナに降りかかったから当然だ。
「父上、俺は今からエスポージトへ行きシスティナを迎えに行きます!反対されても無駄です!!」
「分かった、許可しよう!急ぎシスティナを引き取るのだ!!近衛兵、この偽物を投獄致せ!!」
「「はっ!」」
「ちょ、ちょっと!私は未来の王妃様よ!!アンタ達が勝手に触れていい身分じゃ・・・アルク様ぁ!!!」
叫びまくるラウレッタ嬢を置いて王城から出る。2人の兵士を同行させて東部のエスポージト砦に向かう。強行軍だがここから馬を乗り継げば3日で辿り着くハズ。
◇
「衛生部隊『ルーチア』?アイツらならもういませんよ、次の作戦で西部にあるフィロガモの砦に向かいましたから」
なんて事だ、すでに逆方向に向かっていたとは!大きな時間を食ってしまった!!
「急いで西部のフィロガモに向かうぞ!」
「なりません、馬がもう限界です!ここは一度王城に戻って馬車にて向かうべきかと」
「それでは時間が掛かってしまう!このまま乗馬でいい!!」
「恐れながらソァーヴェ嬢を確保した時にどうなさいます?乗り慣れてない女の身で乗馬は難しいですよ?」
「くっ・・・仕方ない、一度王都に戻る!」
またもや3日間かけて王都に戻り馬車にて西部のフィロガモ砦に向かう。国境付近なので馬車で行っても4~5日は掛かる。
焦る一方で時間は過ぎていく。衛生兵は戦闘職でない上に後方待機だから命の危険は少ないが戦場ではどうなるか分からん。
◇
5日間掛けてフィロガモ砦に辿り着いた頃には衛生部隊「ルーチア」は移動していた。つまりシスティナもいない。
「何と間の悪い・・・それで?衛生部隊はどこにいった?」
「はい・・・北のガストーニ砦だった、ように思います・・・いや南のドゥランテだったか??」
「何だその頼りない言い方は!それでも砦の司令官か!!」
「す、すみません!司令官は任務交代で出張っておりまして・・・それにどっちの砦も戦火が激しく救援が必要で・・・」
「分かった、俺はこのまま北のガストーニに行くとしよう・・・リベリオ、貴様は王都に戻り『システィナは南のドゥランテ砦にいる可能性あり』と陛下に報告しろ!」
「はっ!!直ちに・・・」
従士リベリオは俺の命令を受けて馬を走らせた。
仮にガストーニにシスティナが居なくとも伝令で伝えておけば父上は配下の者を寄こして下さるに違いない。彼女を戦地に行かせる父親には協力を仰ぎたくはないが、この際贅沢は言ってられん。
◇
またもや6日間掛けて辿り着いたガストーニ砦にシスティナはいなかった。フィロガモから派遣されたのは衛生部隊「ルーチア」ではなく大半が元罪人達で占める特殊部隊「マラコダ」のようだ。
「わざわざ王太子殿下にお越し頂き恐縮です、お蔭でわが砦は無事でしたぞ?」
ガストーニの司令官が威張った口調で言う。何でもマラコダを突撃させた上で防御の陣形にて砦を守ったのだとか。聞こえはいいがその後マラコダの兵隊が戻っていない所を見ると見殺しにしたんだろう。元罪人達とは言え無駄死にさせるとは。
砦の司令官を問い詰めたいところだがこちらにはやる事がある。今は一刻も早くシスティナを保護しなければ。
◇
馬車を走らせていた俺は砦から離れた場所で人間がうずくまっているのを見逃さなかった。慌てて馬を止めて抱き起こす。
「はぁはぁ・・・なんてこった、せっかく生き延びて出会ったのが貴方だとは」
そう言い捨てて倒れる兵士。ボロボロの装備で一瞬判別できなかったが・・・これはカヴァルカント学園のビアジーニ教授?




