第三十三話 襲撃
次の日、朝一番に鬼力の循環運動-いわゆる準備体操を始める。これをやっておかないと鬼力の循環が悪くなりスキルが上手く扱えなくなる。
「ん・・・あれ?鬼力が流れない??」
今日はいつもと違って身体の中を流れる鬼力が流れない、というよりも鬼力があるのかすら分からない??これじゃ治療スキルが使えない・・・
「ドーディチのお嬢さん、何やってるのさ?早く支度しないと置いてかれちまうよ!」
「え、はい!今すぐ参ります!!」
そう、今日は衛生部隊がここフィロガモ砦を引き払う日だ。ここからの南に位置するドゥランテ砦にてモンスター戦での死傷者が増えたためだそうだ。
だから今日は移動だけなので治療スキルを使う必要はないハズ。ドゥランテ砦についてからセッテさんに相談してみよう。
荷物のまとめは昨日から準備はしていたので問題ない。もともとトランクにあったのは最低限の着換えのみで後はトランクと一緒に処分している。大事なものと言えば理鬼学の教科書数冊とお母様の肖像画ぐらい。それらをリュックサックに詰めている。
「よし、衛生部隊・・・出発だ!!」
「「はっ!!!」」
隊長の号令とともに衛生部隊10人がフィロガモ砦を後にする。南下するのに森の中を通る事に。いつモンスターが出てくるかわからないので警戒しながらの行軍だ。
◇
歩くこと2時間、ドゥランテ砦が見えてきた。さっきまでいたフィロガモ砦よりは小規模な建物だ。
「開門、我らはフィロガモから要請を受けた衛生部隊だ!砦の隊長殿に取り次いで欲しい!!」
隊長の呼びかけにもまったく応じないドゥランテ砦。普通なら平時でも見張りの兵士がいるハズなのにそれも見当たらない・・・もしかして!
「Gururu・・・Woooooaaa!!!!!」
我々が通ってきた道から数十体ものモンスターが飛び出してきた!その姿は赤い毛色をした狼。うなり声を上げながら迫ってくる。
「隊長!やべぇぜ、こっちは戦闘要員じゃねぇ!早く砦ン中に逃げねェと!」
「わ、分かった!みんなで門をこじあけるぞ!!力を貸してくれ!!!」
隊長の指示通りに門の扉に手をかける。
「いくぞ、ウーノ、ドゥーエ・・・トレっ・・・あ?!」
号令と共に力を入れるとあっけなく扉は開かれる。中にいたのは・・・前足が異様に長い猿達が待ち構えていた!
「Kiaaaaaa・・・・・・KisyaaaaaaaAAAAA!!!」
こちらも何十体もの猿が長い腕を使って石を投げてくる。私達が砦に入ってくるのを待っていた?
「くそがっ!門を閉めろ!!おらぁあああっ!!」
隊長の指示通りに4人の衛生兵が開けた扉を再び閉める。お陰で石はこちらに当たらなかったけど運悪く石が当たったのか1人の兵士が倒れていた。
「急いで治療を!」
「ダメだドーディチの嬢ちゃん!コイツは即死だ・・・ここは逃げるぞ!殿になって俺らが守ってやる、セッテ!嬢ちゃんを引っ張ってやんな!!」
「あいよ!ほら、ぐずぐずしないで逃げるよ!」
セッテさんに手を引っ張られるも隊長達を置き去りに出来ない私は声をかける。
「で、でも!隊長さん達が・・・」
「気にすんな、俺らもコイツらと道連れはゴメンだ・・・適当に相手して逃げてやる!」
「隊長達もああいってるんだ・・・野郎の覚悟を無駄にするんじゃないよ!」
後ろ髪をひかれつつもセッテさんと一緒に獣道に入りこむ。命がけで走っているからどれが正しい道なのかなんて考えていられない。
何とか森の中を抜けてようやく広場に出たと思いきや、
「Gururururu・・・・・・」
三体の赤い狼が後を追ってきていた。それを見るなり私を背に庇って杖代わりの棒を構えるセッテさん。
「ぜぇぜぇ・・・こんなとこでくたばってたまるかぁ!!」
狼たちはセッテさんの絶叫にひるんだかに見えたけどその内の一体が彼女に襲いかかり飛びかかってくる!
「せぃやぁああああああっ!」
セッテさんの棒はがら空きになった狼の胴体を打ち抜く。倒れた狼はすぐさま足を揃えてたちあがろうとするも、何故か再び倒れてしまう。
「へへっ、理鬼学治療術の悪用さね・・・棒に鬼力を込めて突いた部分を止血すりゃアイツらの血液の流れを止められるってワケさ・・・ぁぐぅ!!」
「セッテさん!」
セッテさんのスキを突いたもう一体の狼が彼女の左腕に噛みつく。慌てて狼を引きはがそうとするもセッテさんに突きとばされてしまう。
更にその間に最後の一体がセッテさんの首筋に噛みつく。
「っ・・・・・・くそったれがぁああああああああああああああ!!!」
次の瞬間、棒が風車のように振り回されたかと思うと二体の狼はふっ飛ばされた。起き上がらないところを見ると事切れたようだ。
血塗れとなったセッテさんもその場にうずくまる。




