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第二十九話「刑罰」

続アルジェント・リ=イラツァーサ視点

 王城のプライベートルームにて。


「報告書を見せてもらったが・・・エーゼスキル学園出身のお主にも分からん、という事かビアジーニ?」

「恐縮です、何分にもまだ未熟者ですゆえ」


 宰相スタツィオに依頼したシスティナのスキルの正体を探っていたルカーノ・ビアジーニから直接話を聞く。しかし提出してきた報告書の内容の域を出ないものであった。

 余に対してへり下った物の言い方ではあるが、平然とした態度からは言葉通りの感情をもっていないようだ、まだ若いのに随分人を食った男だな。


「控えよビアジーニ、陛下の御前であるぞ!」

「これはうかつでした、私の様な身分では王城のマナーを知る機会がなかったもので」

「いい加減にしろ!不敬罪で投獄されたいのか!!」


「よさんかスタツィオ、確かにこの者の言動には何も問題はなかった・・・だがビアジーニよ、一年間も調べて『何も分からない』では困るのだよ」

「ただただ自分の不甲斐なさを恥じるばかりです・・・恐れながら私見を申し上げて宜しいでしょうか?」


「構わん、申せ」

「有り難き幸せ・・・システィナ・ソァーヴェ嬢は神のごとき治療スキルを持つと言えども所詮ただの無垢な少女に過ぎません、とだけ申し上げます」


「何を言うのかと思えば・・・くだらん、王家にあってそのような感傷は無用のもの・・・ましてや今の国の状況を考えればシスティナの力を手放す事など出来ん、軍にとってシスティナの力は必要不可け・・・」


 思わず口走った事に驚き慌てて口を塞ぐ。この若者のありえない発言から人に聞かれてはならない本音をうっかり漏らしてしまうとは!


 跪いていたビアジーニはゆっくり立ち上がり強い眼差しをもってつぶやく。


「なるほど、それが陛下のご意志ですか・・・システィナ嬢は王太子妃となられる方です、どうかご再考を」


「兵士よ出会え!その者は陛下に不敬を働いた!!捕えて投獄せよ!!」

「「「ハッ!」」」


 気を利かせた宰相の言葉で人払いしていた部屋に3人の兵士が突入しビアジーニを拘束する。何とコヤツは抵抗すらしないで身を任せおった。あまりの呆気なさに拍子抜けしてしまう。

 兵士に後ろ手を取られたままのビアジーニに向かって言う。


「何ともあっさり捕まったものだな、エーゼスキル学園で学んだスキルならば兵士三人など物の数ではないであろうに・・・やはり自分で言う通りに未熟者なのだな?」


 余の嘲りに怒るどころか微笑をもって応えるビアジーニ。


「僕は反逆者にはなりたくありませんので・・・ここで暴れれば僕を処刑する大義名分が出来てしまう、陛下の不興を買うぐらいでは済まされないでしょうから」

「・・・構わん、そ奴を投獄致せ!」


 ビアジーニは兵士によってこの部屋から地下牢へ連行される。謁見の間での狼藉なら周囲の目もあるので処刑も可能だがここはプライベートルーム。そんな事をすれば詳細な罪状を用意せねばならぬ。だがそれは出来ん事だ。

 奴を捕えた側の余が負けたような気分だ。


 そばで様子を見ていた王妃メリッサが珍しく顔を怒らせて語りかけてくる。


「陛下・・・あの者は即刻死罪とすべきです!」


 我が妻ながら随分物騒な事を言うものだ。


「そうすれば溜飲も下がるであろう、しかしあの者の言ったように不敬罪ごときで処刑すれば周囲からどんな反感がくるか分からん・・・うかつな事は出来んよ」

「違います、あの者はあろう事にシスティナに少なからず懸想している模様・・・あの娘はアルクのものです!!あんな者にくれてやる訳には参りません!!」


 更に意外な発言に驚く。ヤツの言葉からそこまで分かるものなのか?女の勘というヤツなのだろうが男の余には理解できん。

 そう言えばメリッサはシスティナとは仲が良かったのだな。婚約者のアルクとは仲良くならないのに不思議な話だ。


「確かに役目とは言えシスティナに近づかせ過ぎたのかも知れんな・・・はてさてどうしたものか」


 どうすべきか思案していると宰相スタツィオが発言する。


「では私めにお任せ下さいますか?陛下のご気分を妨げる事無く、また王妃様にご心配をかける事無く・・・見事にあ奴の口を塞いで見せましょう」


 いつに無く残酷な表情で言ってのけるスタツィオに少し恐怖を覚えるも頼もしくも感じる。奴に任せておけば安心だろう。



◇◇◇



 カヴァルカント学園の卒業式前日にて。


「くそっ!あの馬鹿息子めが!!婚約破棄だと!?人がどれだけ気を使ってるかも知らずに!!!」


 カヴァルカント学園に通う令嬢の親、マルキーゼ=アマート、コンテ=バンフィ、コンテ=カルツァの当主達からの報告だ。


 何故かここ2~3日外泊しているアルクは三人の令嬢に命じてシスティナとの婚約破棄を計画しているようだ。


 更に始末の悪い事にシスティナの義妹ラウレッタ・ソァーヴェをも巻き込んでいる。治療専科の聖女らしいが学園の生徒達からの評判では貴族にはあるまじき無作法で傍若無人との事。何もかも完璧なシスティナとは似ても似つかないそうだ。


 そんな娘を王家の婚約者に据えてどうするつもりなのだあの馬鹿者は!自分の息子ながらここまで愚かだとは思わなんだ!!


 学園は政治とは無関係なので王家が介入する訳にはいかんが、四の五の言っている場合ではない。こうなれば卒業式に強行突入しかない!

 余の怒りをなだめるようにメリッサが口を開く。


「陛下、だったら婚約破棄された可哀想なシスティナを私達で迎えてあげようではありませんか?」

「??どういう事だメリッサ」

「ソァーヴェ家に放った間者によるとシスティナは実家では冷遇されていた様子、そんな所にしか戻るところがないのであれば私達で彼女を保護し、ほとぼりが冷めるまで離宮にて静養させてはいかがでしょう?」


 なるほど、王権を以ってすれば学園など多寡の知れたものだが悪しき前例を作りかねない。ならば婚約破棄は成功させてシスティナを引き取ればいい訳か!


「それは名案だメリッサ!だがアルクが手を出しているラウレッタとやらはどうする?そのまま無罪放免には出来んぞ?」

「彼女には・・・アルクを誑かせたお仕置きを致しましょう」


 そういうメリッサの目は暗く沈んでいた。

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