第二十四話 相談
「・・・無い!どこに行ったのよ私の教科書・・・」
廊下でラウレッタが落ち着きなく騒いでいる。
「・・・ぷっ」
「くすくす、教科書ですって?」
「座学なんて全然やる気ないのに・・・」
そのはしたない様を見て笑っている三人の令嬢。とりあえず黙って様子を見る事に。
「あ・・・またアンタ達なの?私にこんな嫌がらせばっかりして・・・」
「あら、何をおっしゃるの?」
「私達、貴方に何か致しましたかしら?」
「言いがかりはよして欲しいですわ」
いつもならラウレッタを助けるべきなのだろうけど助けても感謝はされないだろう。それだけなら構わないけどあの娘は物事を曲解するところがあるからどう受け取られるか分からない。
諍いを横目にその場を去ろうとすると三人の令嬢の一人が話しかけてきた。
「あ、これはソァーヴェ嬢・・・ごきげんよう」
先に声を掛けられてしまった以上無視する訳にはいかない。
「皆さんごきげんよう、ラウレッタも」
「・・・・・・ふんっ」
ラウレッタは私から顔をそむける。当然だけどまだ根に持たれているか。謝罪しようとしても相手が受けないのだからこれ以上はどうすることも出来ない。
「システィナ様・・・いいところにいらっしゃいました、是非お話を伺いたいのですが」
「??一体どのようなご用件でしょうか?」
「ここでの立ち話も何なので・・・治療専科の応接室までいらして下さいな」
「ちょ、ちょっと!聖女の私に許可なく何勝手に応接室使おうとしてるのよ!!」
「あらあら・・・なんてはしたないお言葉」
「貴方だけの応接室ではありませんわ聖女様」
「そういえばお探し物があったのではなくて?」
三人の挑発するような物の言いように今にも喰ってかかりそうなラウレッタ。これ以上騒ぎを大きくしないためにも場を移すべき。
「承知しました、では参りましょう」
「う・・・勝手にしなさい!後でアルク様に言いつけてあげるんだから!」
◇
治療専科の応接室にて。三人のご令嬢と向かい合わせになってソファーに座る。
「それで・・・お話とは?」
「失礼ですが・・・ご姉妹のラウレッタ様では聖女は務まりません」
「私どもとしては治療専科の聖女をシスティナ様になって頂きたいのですわ」
「貴方様ならばご身分・実力共に認められる事間違いなしです」
「恐れながら、お断りさせて頂きます・・・私は皆さんとは違い普通科生、治療専科の重職につくのはあきらかな越権行為です」
「っ、どうしてですか!システィナ様のスキルは神のごとき・・・」
「現在私は普通科においても理鬼学の学習や実習から外れておりますので」
「で、でもっ・・・先日の国防軍との作戦では」
「あれは緊急事態だったので差し出がましい事をしたまでに過ぎません、貴方がたには代行のアンジョラ・ヴィスコンテ=ネローニ様もいらっしゃいます・・・彼女も大変優秀でございますわ」
「だって彼女の家はヴィスコンテ(子爵)じゃない!私達のような格上のコンテ(伯爵)の令嬢がいるのに聖女は相応しくありません!!」
「残念ながら理鬼学で貴族の上下は関係ありません、ラウレッタもネローニ様もお気に召さないのであればご自分で聖女を目指してはいかがでしょうか?」
「そ、それができれば・・・」
「・・・苦労はしませんわ」
「私達は理鬼学なんて教養として学んでいるだけで・・・はっ!」
私は部屋の隅に置かれていた一般教養の教科書を拾い上げる。本の後ろには「ラウレッタ・ソァーヴェ」の文字が書きなぐられていた。
「とにかく普通科の私に依頼するのは筋違いというものです・・・後妹ラウレッタの無作法は姉として申し訳ない事ですが、彼女に対しての『嫌がらせ』は認めておりませんので・・・それでは失礼致します」
私の警告に物も言えない三人には構わず応接室を後にする。
部屋のそばではラウレッタが立っていた。
「お姉様、私から聖女の役を奪うなんて許さな・・・それ、私の教科書じゃない!返してよ!!」
私が差し出すと奪うように受け取るラウレッタ。
「聖女の役目はお断りしました・・・ラウレッタ、自分のモノぐらい自分で管理なさい・・・自分の荷物を失礼にも人に運ばせているからこんな目に遭うのよ?」
「何よ何よ!私がどうしようと勝手じゃない!私をひっぱたいたクセに偉そうに言わないで!!」
「・・・貴方は私が謝罪しても許せないのでしょう?だったらこれ以上謝罪しても意味がありませんから」
「ぅぅ・・・アンタが学園に来てから全然上手くいかなくなったのよ!アンタが来るまでは皆私に文句なんて言わなかったんだから!そんなに父様や母さんに愛されてる私が憎かったの!?」
「ここは学園です、家庭の事を持ち出すのはマナー違反よ」
「ぅるさいうるさいうるさい!いっつもマナーマナーマナーばっか言って・・・それしか知らないの!?父様に言いつけてやるっ!!!」
そう言って走り去るラウレッタ。もうあの娘とは分かり合えないのが分かってくる。陛下のご命令とは言えこの学園に来た事が間違いだったのだろうか?




