第十四話 代行
長期休暇が終わってカヴァルカント学園での授業が始まる。生徒達は長い休暇を過ごしてリフレッシュしていたようでやる気を漲らせている。
私も後数カ月の卒業だから単位をとるべく座学に勤しむ事に。理鬼学の勉強も順調だ。
学園で再会したラウレッタは私を無視していた。私が王城で過ごしていたのがそんなに気に入らなかったのだろうか?家にいればお父様達と一緒になって私を遠ざけているのに。
「だからちゃんと仕事しなさいよ!貴方は生徒会でしょ?」
「与えられた役目を放棄して遊んでるなんて・・・いいご身分ですこと!」
「ぅるさい!アルク様が用事で休んでる生徒会なんてつまらないんだから!そんなのアンタ達だけで・・・ぁ」
またもや廊下を歩いていると二人の女生徒とラウレッタが言い争っている。相手に食ってかかっているラウレッタと目が合ってしまった。
それも今度は同じ生徒会のメンバー同士で仲違いを起こしている。ラウレッタは治療術の成績だけで生徒会に推薦されたらしくその業務はお粗末なようだ。
ラウレッタを助けてもまた曲解したお父様に叱られる始末なので正直放置しておきたいところだ。でもそれでトラブルが起きて我がソァーヴェ家の評判が下がる事を考えるとそれも許されない。
「皆さま、ごきげんよう・・・ラウレッタが何か致しましたかしら?」
「し、システィナ様・・・お聞き下さい!彼女ったら生徒会の業務をサボるんです!」
「多くの生徒達から選ばれた生徒会メンバーとして自覚を持って頂かないと!」
「あ、アンタ達!お姉様に余計な事告げ口しないでよ!!」
生徒会のメンバーは口々にラウレッタの怠慢ぶりを語る。ラウレッタが言い返しても否定しないところを見ると事実のようだ。
それゆえにお二方が感情的になっているとはいえ仰る事には反論できない。私は二人に向かって深々と頭を下げる。
「申し訳ありません、それでは僭越ながら私が義妹の代役を致しますわ・・・何でも仰って下さい」
「そ、それはあまりにも・・・」
「システィナ様に恐れ多くて・・・」
生徒会メンバーのお二人は謙遜される。しかし当のラウレッタは彼女達に噛みつく。
「何よ何よ!どうしてお姉様が相手だったらそこまで卑屈になれるのよ!私の時と全然違うじゃない!!お姉様も私の役目を取らないで!!!」
「だったらきちんと自分の義務を果たしなさい・・・貴方が自分勝手に振る舞うと困るのはお父様と義母様なのよ?」
「いつもいつもいつもそうやって私を見下して・・・勝手にやればいいでしょ!私、もう帰るんだから!!」
そう言い捨ててラウレッタは走り去る。あれだけあの娘にはマナー教育が不足していると言ったのにお父様は聞いては下さらなかったのね。
「皆さん、義妹が失礼を致しました・・・さぁ参りましょう」
「ぃ、いえ・・・では恐れながら生徒会室へ」
「・・・システィナ様にご面倒掛けて申し訳ありません」
生徒会室にて書類の整理をする。理鬼学の研究成果よりも内容が分かりやすいので物の三十分程度で作業を終えた。
こんな簡単な仕事を放棄するところを見ると・・・ラウレッタが優れているのは本当に理鬼学の治療術だけという事になる。
私は王太子妃となるからあの家を出るのでソァーヴェ家の後継者はあの娘だけ。お父様達もラウレッタには優しく接するだけでなく、時には心を鬼にして頂きたいものね。