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クイック・ドロウ・アーミー

肩に置いていた手に万力のような力を込めるリーダーロボット。

筋肉を的確に押さえた指にかけられた圧力に、思わずチミーは上半身をよじってしまう。


った!」


神経を直接つままれるような痛みに顔をしかめ、チミーは自身の肩を押さえるロボットの手を弾く。

間髪入れずに繰り出された反対側の手を後ろに下がって避け、その腕ごと顔面にハイキックをお見舞いした。


何かがへし折れるような音を立て、リーダーロボットが横方向へと大きくよろめく。

チミーは素早く脚を引き、腰を落として手のひらをリーダーロボットに向けた。

手のひらに白い光が発生し、一瞬でソフトボールほどの大きな球体へと変化する。


そして次の瞬間。

一瞬の追い風と、まばゆい閃光が辺りを包み込んだ。


白い球体が引き伸ばされたように変形し、破壊光線レーザービームとなってリーダーロボットを襲う。

リーダーロボットはしなやかな側転によって紙一重の回避に成功するが、背後にいたロボットに直撃。


衝撃波で地をも砕くほどの破壊光線レーザービームを胸部に受けたロボットは、瞬きの間に爆散。

側転によって回避したリーダーロボットは地を蹴り、チミーに接近する。


「危険を確認。戦闘機能を解放。」


前傾姿勢で突進したリーダーロボット。

放たれた素早い右ストレートの拳を、チミーは腕で受け止める。

カウンターとして腹部に掌底を食らわせ、砕けて金属片が弾け飛んだ。


しかし、リーダーロボットは怯まない。

後ろに片足を踏み込んで耐え、掌底を放ったチミーの手首を掴む。

後ろに踏んだ足へ重心を移動させ、チミーの手首を担ぐ形で背後に振り向いた。


斧を振り下ろすかのように、チミーを反対側の地面へと叩き付ける。

硬い地面にヒビが走り、土煙が舞った。


ピピッ!


リーダーロボットは何かを検知したように、すかさず背後を振り返る。

が、それよりも早く回り込んでいたチミーの拳が腹部に突き刺さった。


強烈な一撃を受け、破片を撒き散らしながら後方へ吹き飛ぶリーダーロボット。

だが冷静に一回転し、慣性を殺しつつ丁寧に着地。

急接近し、追撃をかけようと放たれたチミーの脚を腕でガードする。


リーダーロボットが反対側の腕をチミーに向けると、手の甲辺りがパカリと開く。

中から覗かせた小さな筒のようなものが、チミーの首元を狙った。


「っ!?」


サプレッサーのような音を立て、2発の弾丸が小さな筒から放たれる。

既に次なる攻撃へ移っていたチミーは自身のエネルギーを操ることで強引に体を動かし、自身を横方向に吹き飛ばす事で直撃を免れた。


バランスを崩したチミーに迫り、左、右、腰を落として足元にもう一発の打撃。

何とか体制を立て直してそれらを全て防いだチミーに、リーダーロボットは問いかけた。


「何故ここまでして、我々の守護に反発するのですか」

「それ、今更聞くの?」


呆れたように突っ込んだ後、防いだリーダーロボットの腕を弾いて牽制の蹴りを放ち、距離を取る。

チミーは真っ直ぐに立ち、片手を腰に添えながらリーダーロボットを指差して答えた。


「気に入らないのよ。アンタ達が何者なのかは知らないけど、アンタ達が決めたルールに従って、エリアだか境界線だかで不自由な生活を強いられるのが。守ってくれてるのはいいけど、私にはこの世界がどうしてこうなったかを知る必要がある。それを止めようってんなら、無理にでも通してもらうわ」

「......そうですか」


チミーの不満を聞いたリーダーロボットは静かに一言だけ返す。

途端、周囲のロボット達が一斉に小銃を構えた。


電気エネルギー。

周囲のロボット達がほぼ同時に放った、電撃弾が八方からチミーを襲う。

回避すべくチミーが垂直に跳躍した所へ、飛んで先回りをしていたリーダーロボットに腕を掴まれてしまった。


「んなっ!?」


掴んだ腕を引き、もう片方の手でチミーの頬を掴む。


「触んなっ!!」


激高したチミーは前蹴りによってリーダーロボットを突き放し、空気を蹴って距離を詰めつつ一回転。

えぐるような踵落としを放ち、リーダーロボットの頭部を叩き潰した。


空中に留まっていたリーダーロボットの体は、強烈な衝撃荷重によって地面へと叩きつけられる。

半壊したリーダーロボットをカバーする形で2体のロボットが飛び出し、チミーに接近した。


2体の同時攻撃を軽々と避け、掌底で片方の顔面を、後ろ蹴りでもう片方の胸部を破壊。

顔面の壊れたロボットを掴み、もう片方のロボットにぶつける。

派手に砕けた破片を散らしながら、2体のロボットは絡み合って無気力に墜落していった。


「はぁ、はぁ......」


この時チミーは既に、このロボット達からある違和感を感じていた。

破壊された2体のロボットに続いて、先程までチミー達を囲っていたロボット達が次々と向かってくる。


攻撃を避け、ガードし、反撃して、壊す。


「ああ〜もう!しつこい!!」


無尽蔵を思わせるほどのロボットの大群に苛立ちを感じ始めたチミー。

さっさとケリを付けるべく、右腕を大きく上に掲げた。


開いた手のひらを強く握り、能力『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』を発動する。


操るのは、大気が持つ熱エネルギー。


「『爆熱波ホットネーション』ッ!!」


瞬間、チミーを中心として衝撃波が走った。

チミーに向かっていたロボット達は、その衝撃波に触れた瞬間動きを停止させる。

白い装甲がアメのように溶け、外皮としての役割を失ったのだ。

莫大な熱波に侵され、内部の機器も機能不全に。


空中で機能を停止され、瓦礫のように落下していくロボット達。


「おわぁっ!?」


地上にいたビリーは次々と降ってくるそれを必死で避けていく。

壊れたロボット達にはまだ熱が残っているようで、落下したロボットの装甲をよく見るとブクブク沸騰していた。


「何だったんだろうね、こいつら」


ゆっくりと地上に降りて残骸を見渡すチミーに、物凄い勢いでビリーが駆け寄ってくる。


「何してんだバカヤロウ!!せっかくマキシマムの手がかりを見つけたってのに、なーんで倒しちまったんだよぉ!?」


目をむき出しにし、ツバをぶちまける勢いで責めるビリーから逃れようと、気まずそうな表情を浮かべたチミーが顔を逸らした。


「わ、悪かったわよ。動けなくする程度にやろうと思って、つい。......2キロ圏内にいるって言ってたし、代わりに私が見つけてくる」

「おー分かった!!絶対連れてこいよ!?俺は町に戻ってるからな!!あんだけ強けりゃあ、俺がいなくても何とかなるだろぉ!?全くよぉ......」


ギャーギャーと早口で突っかかっていたビリー。

だが途中で急に言葉を止めると、彼の腰辺りから破裂音と共に小さな爆発が起こった。


「!?」


持っていたのはリボルバー拳銃。ビリーは目にも止まらぬ速さで腰の拳銃を抜き、チミーに.....いや、『その後ろ』に向かって発砲したのだ。

チミーが背後を振り返ると、数メートル先でリーダーロボットの倒れる光景が見える。


リーダーロボットがチミーの攻撃に耐え、再び動き出そうとしていた所をビリーが仕留めたのだ。


「気ぃつけろよ」


軽く笑みを浮かべながらくるくると拳銃を回して腰のホルダーに戻し、ビリーはそう言って踵を返した。


「......頑張らないとね」


町に帰ったビリーのため、チミーは2キロ圏内にいる事が分かったマキシマムを探すべく『エリア4』に足を踏み入れる事にした。

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