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半分は合ってる

 突如として世界が滅んだと同時に出現した、謎の機械集団カレクトル。

 彼らは一体何者なのか。ずっと抱えていた疑問を、チミーは『創造主』であるガンロイドへぶつけてみた。


「何者か、か……」


 ガンロイドは至極落ち着いた様子で顎に手をやり、少し考えるような素振りを見せる。

 静かな夜の館内に駆動音だけが響く中、手を下ろしたガンロイドが答えた。


「異世界からの来訪者、と言うのが正しいかな?」

「異世界からの、来訪者……?」


 思いもよらぬ回答を反芻したチミーに満足したガンロイドは、うんうんと頷きながら詳細を語る。


「そう。実は、今この宇宙とは別の宇宙が、この世にはあるんだよね。僕が見つけられた範囲では今のところ7つ。そのうちの1つから、僕たちはここへやってきたんだ」


 ガンロイドから発せられた話は、到底理解が及ばない話だった。

 宇宙は何もない所から生まれ、それがこの世の全てである。

 そんなチミーたちの常識とは、全く異なる話であるからだ。

 

 しかし、ガンロイドがふざけているようには見えない。

 カレクトルたちの明らかに人類を超越した技術といい、知識で彼らには遠く及ばないのだろう。

 今までの知識をひっくり返されるような話だが、飲みこまざるを得なかった。

 

「アンタたちがこっちの宇宙へ来たから、世界がおかしくなったの?」

「半分は合ってる。けど、僕たちが原因ってわけじゃあないね」


 チミーの質問に、ガンロイドは含みを持たせた返事をする。

 

「どういうこと?」

「おっと、サービスはこれで終わり。いずれ分かるよ」


 続けて投げられた質問をあっさりと打ち切り、ガンロイドはその場を立ち去ろうとした。

 背を向けて歩き出す彼の背後に、チミーが早足で接近する。

 追いついた彼女から、空気すら破る勢いの拳がガンロイドの後頭部に向かって放たれた。


「……!?」


 しかし。

 ガンロイドには、当たらなかった。


「分かりやすいね。力づくで聞こうと思ったのかい?」


 風にあおられた紙の如く自然な回避を行ったガンロイドが、半身でチミーを捉えながら声をかける。

 チミーは連撃を繰り出すが、ことごとく避けられてしまった。


「残念だけど当たらないよ。君はとても早いけど、次に何をするかが分かれば簡単に避けられる。僕はそれを、100%予測することができるんだ」


 『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』によって運動エネルギーを最大限に引き出された拳だろうと、まるで人の手からすり抜ける虫の如く軽々と避けていく。

 手ごたえが全く感じられず、また度重なる疲労によってチミーは再び力尽きてしまった。

 意識が途切れ、ばたんと倒れてしまう。


「君たちが思っている以上に、僕は強いよ。プルライダーやこいつを倒すだけでも一苦労だった君たちに、挑戦はオススメできないね」


 アリスとビリーへ警告するようにそう伝えると、ガンロイドは再度その場を立ち去るべく背を向けた。

 と同時に、ガンロイドからため息のような音声が聞こえてくる。


「お客さんが多いなあ」


 彼がそう呟いた瞬間。

 屋敷の入口が爆砕し、煙幕に紛れて侵入した影がガンロイドの前に現れた。

 みしりと床板に体重を乗せ、現れた影が煙を払う。


 現れたのは、全身を赤い日本甲冑で覆い尽くした、背の高い大男であった。

 太刀を携えた男は直立不動で立ち、ガンロイドと睨み合う。


「あの男……」


 チミーは現れた大男に、どこか既視感を覚えた。

 無意識に記憶を探っていくと、その男の正体を思い出す。


「アンタ、桜と一緒にいた……!!」


 思い出したチミーは彼を指さすと、明らかに動揺を見せていた。

 そう。彼はこの世界がこうなる前、かつてチミーの命を狙っていた幼馴染、桜に協力していた、『サムライ』と呼ばれていた男だったのである。

 突然現れた知っている人物に動揺していたチミーだったが、彼を見たガンロイドの一言でさらに混乱することとなった。


「ギルガン風情が、僕の前に立つんじゃあないよ」

「……ッ!?」


 ガンロイドは彼を、ギルガンと呼んだのである。

 ひたすら沈黙を続ける『サムライ』は、どう見ても人間の姿だ。

 全くギルガンには見えない。

 だが、ガンロイドの言葉には妙な説得力があった。


「……」


 『サムライ』は無言のまま、握った太刀を持ち上げる。

 ゆったりとした動きで掲げたかと思った次の瞬間。

 ごうん! という重苦しい音を奏で、振り下ろされた太刀が床を砕いた。

 時間が飛んだのかと錯覚してしまうほどの速度だったが、ガンロイドは既に半身になることで回避している。

 

「我々の『王』を、どうするつもりだ」


 太刀を下ろした状態のまま、『サムライ』が口を開いた。

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