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できるとすれば、私しかいない

 ギルバートは四方から襲い来るカレクトルを捌きながら、聞こえてくるビリーの声を聞く。

 向かってきたカレクトルを一刀両断し、反対側から襲ってきたカレクトルを蹴飛ばした。

 ビリーは指示の詳細を、ギルバートへ告げる。


「お前が今蹴飛ばしたカレクトルの方向に走れ。しばらく走ってりゃ、十字路が出てくる。そこを左に行け」

「十字路を左、だな。アリスに怪我させたら、承知しねえからな」

「うるせえ。さっさと行け!」


 ギルバートはビリーの言葉に従って、先程蹴飛ばしたカレクトルの残骸を飛び越えて廊下を走った。

 後ろからカレクトル達が放ってくる弾丸を、スライディングで回避する。


 十字路を左に曲がってしばらく走っていると、2メートルほどの四角い穴が開いた壁を発見した。


「ここだな!?」


 ギルバートはビリーの返事を待たずに、その穴を潜り抜けて内部に入る。

 

「ああ、そこが『エネルギー供給室』だ」


 またどこかからビリーの声が響いた。

 ギルバートが入った部屋を見渡すと、正面に巨大な装置が(そび)えている。

 その装置を中心として、周囲に小さなパネルが並んでいた。

 パネルに近付いてみると、大小様々なボタンで埋め尽くされている。


「あー……分かるか? それ」

「とりあえず、なんかやばそうなボタンがあるのは分かる」


 パネルに取り付けられているボタンは全く使い方が分からなかったが、一つだけ異様なボタンが存在していた。

 他のボタンよりもひときわ大きく、赤いボタン。

 それを見たビリーは、ギルバートにそのボタンを押すよう指示をする。


「よし、そいつを押してみろ」

「はあ?」

「多分、大丈夫よ。ここまでの科学力を持ってるカレクトルが、ボタン一つで危険な状態になる装置を作るはずがない。試してみたら?」

「アリスまで……」


 2人に言われたことで折れたギルバートは、赤いボタンを押し込んだ。

 するとパネルが勢いよく回転し、裏側が露わになる。

 裏側には一つ、大きなレバーが取り付けられてあった。

 そしてその隣には、四角く細長い穴がある。


「その穴は何だ……?」

「分からねえ。何かを入れるための穴みたいな……そうだ」


 細長い穴を睨んで考えていたギルバートは、その穴の形に何かを思い出した。

 腰に手をやると、装着してあった四角い物体を取り出す。

 剣使いのチーフ・カレクトル……809と戦った際に手に入れた、薄く四角い端末のようなものだ。

 その形は丁度、穴に差し込める大きさになっている。


「これ。チーフ・カレクトルから手に入れた物だ。こいつを入れりゃあ、なにか反応するかもしれねえ」


 そう言いながらギルバートが端末を差し込むと、端末が強く発光した。

 連動する形で大きな駆動音が鳴り、巨大な装置が赤く光る。

 そしてレバーの取っ手部分も、同じ光を明滅させていた。


 仕組みは分からない。だが同じ光を発していることから、装置とレバーとが何かしら連動している事が分かる。


「!」


 その時、アリスが何かを見つけた。

 建物全体が映し出されたパネル上の、ギルバートが今いる部屋の位置で。


 『SHUTDOWN IS READY(シャットダウンの準備をしている)』の文字が映し出されていた。

 今、変化が起きたとすればギルバートが端末を挿入したくらい。

 つまり……。


「そのレバーは、この施設全体のシャットダウンができるってことか」


 ビリーがそう、推測を呟いた。


「じゃ、こいつを下ろせば……」

「待って待って待って! カレクトル達の事だから、きっと予備の電源を持っているはず」


 即座にレバーを下ろそうとしたギルバートを、アリスが呼び止める。

 今シャットダウンを行っても、即座に予備の電源が動き出すだろう。

 だからアリスは、一つの行動に出た。




 場所は移り、建物の外。

 プルライダーと戦闘を行っていたチミーは、かなり体力を消耗していた。

 対するプルライダーは、無限に再生を続けている。


「君が強いのはよく分かったが、俺が強すぎた。その強さで色々動かれても困るし、捕らえさせてもらうとするかね」

「くそっ……どうすりゃいいのよ」


 プルライダーの放った拳を避けたチミーは飛行し、彼の顔面に蹴りを放った。

 あまりの威力にプルライダーの顔面が砕けるも、砕けた部品は即座に集まって元に戻っていく。

 埒が明かない状況にイライラし始めたチミーの耳へ、聞き覚えのある声が聞こえた。


「チミーちゃん! 聞こえる!?」


 夜空に響き渡ったのは、アリスの声だった。

 アリスは監視室のマイクを通して、プルライダーの外装から声を放ったのである。


「今からこの施設の電源をシャットダウンさせる。カレクトル達へのエネルギー供給は止まり、そいつの再生能力も失われるはず……!」

「何ッ!? あの装置にアクセスしたのか!!」


 響くアリスの声を聞き、プルライダーが動揺の声を発した。

 彼の反応に構うことなく、アリスが言葉を続ける。


「けど、すぐに予備の電源に切り替わると思う。その切り替わる一瞬で、決着を付けられる?」

「そんな無茶な……」

 

 アリスの言葉を聞いたチミーは腕を組み、軽くため息を吐いた。

 だがその表情はすぐに切り替わり、決意を固めたように口元を強く結ぶ。


「でも、やらなきゃいけないんでしょ。できるとすれば、私しかいない」

「ふふ。頼んだわ」


 チミーの言葉にそう返したアリスは、装置前で待機しているギルバートの姿を確認した。

 そしてチミーとギルバートの両方に聞こえるようにマイクを設定し、言葉を放つ。


「準備はいい? いくわよ!」


 そう言った後、アリスは3カウントを行った。

 ゼロを聞きとげたギルバートが、レバーを下へ強く引き下ろす。


 施設内のあらゆる駆動音が、時を止めたように停止した。


 チミーを捕えようと動いていたプルライダーの腕が、直前で急停止する。


「!」


 途端、チミーは全速力で飛行してプルライダーの胴体に向かって突っ込んだ。

 腕を伸ばし、胴体に激突する。


 再起動が行われ、止まった施設が元に戻った時には。

 プルライダーがチミーによって、施設から突き破られていた。

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