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奴らの姿が変化するのはよくあることだ

戦術戎物パニッシュマーシャル・『錬俱磁俱(アクロブルア)』」


 エリア4のマスター・カレクトル……プルライダーが壁を掴んでそう唱えると、壁が音を立てて歪み始めた。

 壁は彼の手のひらへ引っ張られるかのように崩れ始め、破片が彼の手のひらに吸い込まれていく。


 プルライダーがもう片方の手のひらを下に向けると、まるで袋から絞り出されるホイップクリームのように、手のひらから銀色の液体が生成され始めた。

 生成された液体は床へ付くと同時に物凄い速度で形成を始め、椅子のようなものが完成する。

 それを4つ生成したプルライダーは、チミー達に座るよう促した。


「物質を高速で組み替える技術だ。ここには椅子が無いんで、これで勘弁してくれ」


 もう1つの椅子を生成したプルライダーがそこに座ると、チミー達もそれに(なら)って着席する。

 プルライダーはチミーのゴーグルと目が合うと、体を大きく揺らして笑い声を上げた。


「話はガルダパンクから聞いてるぜ、お嬢さん! 奴をぶん殴ったんだってな!」


 ガルダパンクの名が口に出た瞬間体が強張るチミーだったが、彼の楽しげな様子から敵対の意思が無いことを読み取って座り直す。

 エリア3のマスター・カレクトル……ガルダパンクは完全にチミーを捕えようとしていたが、プルライダーにはそんな事は無いみたいだ。

 マスター・カレクトルにも、様々な性格があるのか。

 プルライダーは手を広げ、友好的な態度を強調する。


「まあそう警戒するな。俺達はアンタらの味方だ」

「だったら、私達の質問に答えてくれる?」

「ああ。答えられる範囲であれば」


 アリスの言葉に、プルライダーはあっさりと答えた。

 であれば今、最も気になっていることから尋ねてみる。


「さっきここに戦闘機みたいなのが戻ってきたでしょ?」

「戻ってきた。あれを見たのか」

「あれと戦っていたものも、ね」


 プルライダーはその言葉の裏を察して腕を組んだ。

 『あれ』の正体は何なのか。アリスはそれを聞きたがっているのだろう。

 アリスがそれを口にする前に、プルライダーが回答する。


「あの巨大な生き物の事かい?」

「そ。あれは何なの?」

「ありゃあ、ギルガンだ」


 チミー達が見たワニのような顎を持つ巨大生物の正体は、ギルガンだとプルライダーは言った。

 しかし、ビルを遥かに凌ぐ大きさをしたギルガンなんて見たことがない。

 

「あんな大きさのギルガン、見たことないわよ」

「まあ、奴らの姿が変化するのはよくあることだ」


 プルライダーはチミーの指摘に何か補足を付けるわけでもなく、さも当然のことのように言う。

 その言葉に、ビリーが引っかかった。


「なんかギルガンの事をよく知ってるみたいな言い方だな?」


 その言葉にも、当然のことのようにプルライダーは返す。


「俺達は、この星からギルガンを消滅させるために来た」


 来た、という言葉から推測するに、彼らもギルガンと同様、この星の『外』から訪れた存在なのだろう。

 なぜギルガンに続いてカレクトルまで、この星を狙ったのだろうか。


「なんでわざわざ、ギルガンを倒しにこの星へ来たの?」

「さあな。俺はそう()()されただけだ」


 プルライダーは座る姿勢を少し崩してそう質問をあしらった。

『命令されただけ』ということは、彼らマスター・カレクトルにはさらに()の存在がいるということ。

 ギルバートはそれを、彼へ聞くことにする。


「じゃあ別の質問にしよう。アンタらカレクトルの親玉は誰だ?」


 ギルガンを倒す目的をプルライダーが知らないのであれば、彼らのトップに聞けば良い。

 ギルバートの質問に、プルライダーは何の躊躇(ためら)いもなく答えた。


「俺達マスター・カレクトルに指示を出してんのは、俺達の『創造主』様だ。マスター・カレクトルだけでできる事なのに、わざわざこの星に来る変なお方さ」

「その『創造主』とやらに、会わせてもらうことはできる?」

「すまんが、それはできねえな。……っと、これ以上の『創造主』様への詮索はオススメしないぜ」


 今まで素直に答えていたプルライダーは自らの『創造主』の話になった途端、チミー達の詮索を警告した。

 こんなに友好的な彼がこうも一転した態度を取るほど、『創造主』は重要な存在であることを物語っている。


 なおさら、気になってきた。


「アンタ達は私達の事、どう思ってんの?」

「人間は好きだぜ。好意と、敬意を持って接しろとカレクトルはプログラムされているからな」

「へえ……」


 プルライダーの回答に、チミーは少し笑みを浮かべて相槌を打つ。

 だからガルダパンクと交戦した事を知っていても、友好的な態度を取っていたのか。

 であれば、都合がいい。


「だったら、アンタを倒して『創造主』を呼ぶわ」


 チミーがプルライダーにそう言った瞬間、いきなり立ち上がったチミーはプルライダーへ拳を放った。

 金属の軋む音と、破砕音とが鳴り響く。

 

「くっ……!」

 

 プルライダーは『錬俱磁俱(アクロブルア)』を発動し、高速で盾を生成することによりチミーの拳を防いでいた。

 紙屑のように歪んだ盾を分解しつつ、足を引いてチミーが放った蹴りを避ける。


 チミーがチーフ・カレクトルを破壊した時、マスター・カレクトルであるガルダパンクが駆け付けていた。

 であればマスター・カレクトルであるプルライダーを倒せば、その上の存在である『創造主』を引きずり出せるのではないかと。

 チミーはそう考え、プルライダーを()()()()()ことにしたのだ。

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