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頼庵のエッセイ集

断る勇気

作者: 藤谷 K介(武 頼庵)

※経験談です。

 

 お立ち寄りいただき感謝です。

 今回のエッセイのテーマは『断る勇気』について。

 色々なテーマにて書いてきましたが、今回も経験談を語ろうかなと思っています。宜しければお付き合いください。


 今から四半世紀前のことにはなりますが、私はとあるサッカーのチームに所属していました。そのチームは同級生のお兄さんたちが中心となって、そのお兄さんの同級生同士が声を掛け合い、一から作りだしたチーム。

 その立ち上げメンバーとして声を掛けて頂いたのです。


 わたしが住んでいる地域は、正直なところ当時県内でもレベルはそんなに高くなかった。でもその中でも県内リーグに出場しているチームなんかもあって、サッカー熱は高かった印象があります。


 お兄さんたちが作ったチームは、経験者も含まれていたものの、サッカーから離れてしまっていた時間が長すぎた事もあって、初めは練習する事だけでも体力が無くなってしまう。そんな感じでした。


 お兄さんたちと、私とその友達との歳の差が結構空いていましたので、その歳の分だけサッカーから離れてしまっている期間が有った事を考えると、それは仕方のない事だと思います。


 仕事などに追われたり、家庭を持つようになると、急に運動をする時間が無くなりますしね。更に言うと片田舎なので、農繁期には農業優先にもなってしまいますし、サッカーだけに集中できる環境では少なくてもなかったと思います。


 だから……という訳ではありませんが、練習に集るメンバーも数人とか当たり前で、それでコンビネーションの確認やフォーメーションの確認なんてできないまま。

 そんな中で行われた初の練習試合は、お兄さん方の後輩さんが立ちあげて数年が経過したチームでした。


 もちろんボロ負けです。

 確かスコアは……。1-8だったかな?

 当時の私はデフェンシブハーフが主戦場でしたが、チーム内部の環境上でウイングかフォワードを任されました。

 しかし、運動不足や練習不足、そしてコンビネーション不足などが原因で、ボールに触る回数が少なく、後半からは体力の落ちたチームメイトのフォローに戻ることが多かったので、得点機を造ることもままならなくなり、先のスコアでの大敗となったわけです。


 ここでまず1度目の断る勇気が試される機会が訪れます。

 実は当時、同級生が入っている別のチームも数チームあり、そこからそれぞれに移籍の打診があったのです。

 このまま今のチームに残るか、それとも別のチームに移籍するか……。

 試合の中身を考えれば話は簡単ですよね。


 はい。

 私は移籍しませんでした。

 そのまま作りたてのチームに残る決断をして、他のチームにお断りの連絡をしました。

 なぜ? そう思われるでしょうね。

 勝ちたいなら、地力を上げるなら、チームの移籍は別に悪い事じゃない。

 でも私はそのチームで這い上がりたかったのです。言い方は悪いのですがこれが一番思った事ですね。そしてその決断に至った背景にある他の理由とは、何もまだ決まっていない事、チームに色がまだない事、自分たちが一番歳が若かった事、チームの所属選手がまだ少なかった事。こんなことが上げられます。


 移籍すれば試合には勝てるかもしれませんが、試合に出られるとは限らない。それに出来上がっているチームの戦術などに自分がフィットするのか分からない。そしてこれから入って来る自分達よりも歳下の人たちが、または自分達よりも経験豊富な方が底上げしてくれる可能性への期待。


 もうこの時の自分には楽しみしかなかったわけです。

 それからもう一つ大事だったのは、自分たちで作りだしたという事実ですね。一つの負け位で逃げ出したりしたらカッコ悪いじゃないですか。だからこそ!! という思いが有ったのは間違いありません。


 こうして所属元を離れないことを決断したわけですが、それからはとても充実していきました。

何とそのまま紆余曲折ありましたが、チームは人数も増え、練習の量も質も上がり、年々着実に好成績を残せるチームへと変わりました。

 チーム事情と共に、わたしの主戦ポジションも変わりました。まぁ私はサイドバック以外は出来るので、対応はそれほど時間がかかりませんでしたけど。


 チームはそのまま勝ち星と自信を積み重ねて、なんと県でプレーできるほどになります。

 この当時が一番強かった気がしますね。

 

 そしてこの辺りで2度目の断る事の勇気が試される時が来ます。

 移籍話……とは違うのですが、選抜チーム入りの打診ですね。

 しかしこの打診を練習に2、3度行っただけで断りました。もったいない? 確かにそうかもしれませんが、しかしその時の選抜チームに魅力を感じなかったので決断は早かったですね。ただ先方からは残ってくれというお話を何度も受けました。もちろん承諾してくれるという前提で話されたことも少しイラっとする要因になったりもしましたが、スッパリとお断りの連絡を入れてからは一切練習にはいかなくなりました。

 それからは連絡は来なくなりましたね(笑)


 これが選手としての最後の断る勇気となった事になりますが、それは選手を続けるという事に対しての断った勇気です。


 勝ち始めてから年々楽しくなり始めていたんですが、ある時から体に異変が起きまして、なかなか思うように動けなくなりました。するとパフォーマンスが落ちていくのと同時に、選手としての自信を失って行ったんです。


 それで、少し早いですが選手としての引退を決断しました。

 周りからは「まだやれるだろ!!」「後輩を育てて欲しい!!」「ウチに来れば――」など、色々と声を掛けて頂きました。それは本当に嬉しかった!!


 でも自分の身体はもう自分が思うようには動かないと知ってしまった。


 わたしはその声に対して断る決断をし、そして短くも濃かった現役選手であるという事を辞める決断をしました。


 最後の現役引退は勇気がいりました。

 本当に未練はないのか、本当にグランドの上、ピッチの上に立てなくなっても良いのかと思い悩んだりもしましたが、結局最後は自分で辞めるという勇気を持ったのです。


 スポーツだけじゃないですよね。人生には色々な岐路があって、そこには誘惑もあって……。

 でも結局は決めるのは自分なので、断る勇気も時には必要なんだと感じました。


 このなろうの世界での断る勇気って何でしょうね?

 こんなエッセイ? を書きながらも思ってしまいましたが、あなたが『断る』と判断した勇気は大切なものだと思います。

 悩み、苦しみ、選択していく中での決断。

 その勇気は失くさないで頂きたいものです。あなたがあなたである為にも……。


 このエッセイはこの辺りで締めたいと思います。

 最後までお付き合いいただきまして感謝です。

  




 

 

 

 

お読み頂いた皆様に感謝を!!


 この作品にて登場する方の中でも、まだ選手をしていらっしゃる方もいます。時折その方ともお会いしたりするのですが、当時の思い出を語ったり熱い時間を過ごす事が出来て楽しいです。


 ただやはり『早かったな……』という様な感想を貰う事もありますが、そこは決断した自分の意思を尊重してくれているからこその言葉だと、今の自分には思えます。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 何かを決断するときって勇気が必要になりますよね。 その気持ちすごくよく分かります。 創作だと、サイトを移る時とか、ジャンルを変更するときとかに決断することになると思います。 ポイントやテン…
[一言] 新しい事を始めたり、今やっている事を継続したり。 そうした行動はポジティブで前向きな物と一般的に解釈されますが、その機会が第三者から提案された物だった場合は、ともすれば「状況に流されている」…
[一言] 興味深く読ませていただきました。 決断って大事ですね!
2022/11/16 23:27 退会済み
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