章の間M・嫉妬と憎しみは隣人
アマランテで狼に襲われる事件直前の短編。町の長老がロマリア夫妻の失脚を企む。
ロマリアの食堂はますます人々の人気を集めていた。私は長老の座をどうにかして自分のものにしたいと、常に頭を悩ませていた。
「モルバ・メスナー、聞いているか!」と、自分の計画を進める方法を考えていると、ある声が聞こえて我に返った。
アマランテの長老として、この地で最高権力者であるはずの私が、この取るに足らない使者を前に怯えている。
さて、目の前にいる青白い死体のようなこの使者は、ただの使者ではない。何しろ、グリムール・サヴィル子爵が遣わしたのだ。彼は非人道的な鉄爪統治で知られる、巨大な反アーサー王派。メスナー家に長老の座を与えた張本人なのだ。
「セヴィル家が首都に上陸した後、サヴィル子爵がその権力と影響力であなたにアマランテの長老の地位を与えたのを忘れるな」
「ええ、おっしゃる通りです」もちろん覚えています。あなたが来るたびに思い出させてくれから、忘れらないでしょう。「ロマリア家を排除すればいいだけですよね?」
言うは易く行うは難し。なぜ彼らは、もはや権力を持たない元貴族を排除することに固執するのでしょうか? だって、男はただの田舎貴族だし、女は叙爵貴族に過ぎないじゃないですか。でも、確かに美人ですね。もし私が全ての権力を手に入れたら、間違いなく愛妾にするでしょう。ふふふ
「子爵はなぜロマリア家にこだわると思いますか?」 質問が口から滑り落ちたようだ。くそっ、殺されそうだ…
「ふーん、当然気になるだろうな」 使者はワインを勢いよく一口飲んだ。「ところで、アーク・アーガス王とハイド・フォン・アリステル・ロマリアの親交の噂はご存知ですよね?」
「ええ、その噂は町中で噂になっていましたからね」 死刑か、少なくとも追放刑が軽減され、爵位だけが剥奪されたあの噂を、どうして忘れられるだろうか。「皆、その冗談に笑ったよ」
「残念ながら、それは真実だ」
何だって? 王と小さな男爵が親しくなったんだ。
「そして、その友情は兄弟愛にまで発展した。かつてハイドが忠告をし、当時王子だった王がそれに従ったという話もある」
こんなことが起こるとは、きっとこれが反アーサーリア派がロマリアを排除しようとしている理由なのだろう。ハイドが口出しして王を元の姿に戻せば、反アーサーリア派の立場は失墜すると考えているのだ。
「話を戻そう。セヴィルスにこの町を奪還させるつもりか?」
「そんあわけ…!」そんなんわけじゃない、セヴィルスに奪われるわけにはいかない。さっきのうっかりミスは、まさにこのためだった。
メスナー家はアマランテの長老となるべきだった。しかし、当時民衆に厚く遇されていたセビル家は長老の座を与えられ、国王からも栄誉を受けた。
メスナー家はその地位を失ったが、我々はいつかかつての権力を取り戻すという信念を決して失わなかった。
「どうしろと言うんだ!?」今や我が手に取り戻した以上、セビル家には絶対に手渡さない。「だが、ここに来る途中で奪って殺すために貸し出した男たちは、簡単に倒せたぞ。」
「我々の手が少し足りなかったな。」使者は冷笑し、指を弾いた。「今回は、頼れる道具をお貸しします。」
Grrrr
指を弾くと、檻が運び込まれた。檻の中では、5メートル近い怪物が唸り声を上げた。
「ここはもっと奥地だ。森から何かが出て来て、町を襲うかもしれない。そうだろう?この笛を使えば、あの獣を制御できる。」
震える手で笛に手を伸ばした…これで、この町の真の支配者になれる…




