先生vsPTA
ミコトの脅迫もヘッチャラだったカイモン先生は相変わらず間のぬけた表情でミコトに、
「どうしたモォ~ン、話はもう終わりかモオオン?」
と挑発的にけしかける。
この先生のバカにした言葉によって、怒りマックスに達したミコトは眉をつりあげて、顔を真っ赤にしながら先生に向かってこう言った。
「はっきり言ってあなたは教師としてふさわしくありません。私のおばあ様は寛容な方で、おとなしくされてますが、私のママはアナタを許さないわ」
興奮ぎみにほえるように言うと、カイモン先生は、
「どういうことだモォ~ン」
とキョトンとした表情で、ミコトに質問した。ここまで言っても自分の脅しが通用しないからミコトはますます心の動揺を顔にだしていた。
「ど、どう、どういうことって……私のママはPTAなのよ。私がママにたのめば、今すぐにでも臨時の教育委員会の緊急収集を学校に要求してアナタをクビにさせることだってできるわ!」
と言うと、彼女はスカートのポケットからスマートフォンを取りだし、PTAの母親に電話をしようとした。
そこで2年C組の生徒全員が、
「おおおおぉぉぉ~~~」
と嬉しそうな歓声をあげた。
いくらなんでも、これで、勝負はあっただろう。PTAが動いて教育委員会まで巻き込んだら、いっかいの教師なんかすぐにクビだ。それくらい普通の高校生であるボクにだって分かる。
カイモン先生はただ者でないことは間違いないが、しょせんは学校に雇われた職員でしかない。雇い主がクビを言い渡せば終わりだ。
しかし、それでも、カイモン先生は平気だった。
そして、彼はとんでもないことをクチにした。
「そんな事をしてみろモォ~ン。お前のオナカをパンパンにしてやるもおぉぉぉおん」
「~~~~~~ッッ!!!!」
その一言で教室内に衝撃がおこった。
彼は冗談やハッタリでいったんじゃない。本気だった。それはボクだけでなく、この教室内にいる生徒全員が理解した。
それは久米ミコトにも理解できたに違いない。
彼女はあきらめた表情をすると、身の危険を感じて、スマートフォンをポケットに戻し、席に座ったまま下に顔を向けてクチを閉ざしてしまった。