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そういや、と彼は身体を案じた

 とりあえずエリとシンヤは自分たちの住むアパートに3103号と405号を伴って戻った。だがシンヤは透けっぱなしで、だんだん現実を受け止め始めた彼は部屋の隅で膝を丸めてうずくまっていた。

 エリは3103号と405号から、事情を面白そうに聞いている。何が面白いんだよ、と、いまのシンヤにはそれすら言う気力がなかった。

「え、じゃあ、名前が3103号っていうの?」

「そうなの。ゼロさまのところで希望すると、番号がもらえるの」

「じゃあ……えーっと、405号ちゃんも、希望したの?」

「うん。3103号と、いっしょだったから」

「一緒……?」

「ゼロさまのところに行ったのが、この子と一緒のタイミングだったの」

「え、それって――」

 エリがさらに聞こうとしたとき、膝を丸めていたシンヤが急に声を荒げた。

「あのさあ!」

「なに、おにーちゃん?」

「なんでそう和めるんだ。俺死んでんだけど!」

「でも死んでませんって言って逃げてきたのはおにーちゃんなんでしょ?」

 お前順応力ありすぎだよ、シンヤは言ってから、

「言ったけどさ! 透けてんだろ俺? そんならやっぱり死んでるんじゃないか! それにそっちのふたり!」

 3103号と405号をご指名した。

「なに」

「はーい」

「俺をあの面接会場に戻すって言ってたな。死神だって言ってたな」

 先程のエリとの仲良し会話で、3103号は確かにそう言った。膝を丸めていても、聞くところはちゃんと聞いていたのだった。

「うん。一応、死神です」

「証拠はあるのかよ」

「ショーコ?」

「死神なんだろ! なんかこう、鎌のひとつも持ってるもんじゃないのか!」

 持ってませーん、と、3103号はあっけらかんと言った。

「死神がみんなカマ持ってるなんて思っちゃだめよう。まだまだシュギョーの身だもの、わたしたち」

「そういうもんなの?」

 えらくなんないとカマはもらえないの、405号は興味津々のエリに説明する。

「へぇー、ゼロさまってひとは、鎌、持ってるの?」

「ゼロさまも持ってないの」

「偉いひとじゃないの?」

「えらいけど、タマシイを刈るひとじゃないから」

「待て待て待て待て話がズレてるぞ! お前たちが死神だったとしてもだ! 俺は信じるつもりないからな‼」

 エリは「それだけ透けてるのに往生際が悪いったら」とため息をついた。

 3103号は「目の前の現実に文句つけられてもねえ」と言い、405号も「ねえ」と相槌を打つ。これでは完全な四面楚歌だ。

「とにかく、あなたはすでに死んでるんです。連れて帰んないと怒られるのよー」

「知らないよ! だいたい何を証拠に俺が死んでるって言う?」

「だって死なないと面接できないし」

 そこまで聞いて、エリが何かに気がついた。

「……あれ、でも、じゃあ、身体は?」

「え? 俺の身体?」

「面接会場から逃げてきたなら、いまのおにーちゃんは幽霊じゃないの? 死体は?」

 この期に及んでとてもドライな妹に、半ば感心しながら、シンヤは記憶をたどる。

「そういや身体はどこだ……?」

「どこで死んだのか、おにーちゃん、記憶、ないの?」

「だから死んでないって。……いや、確か、きょうは面接の予定で、アパート出たあたりでいきなり誰かにぶつかって……それから……それから……」

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