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13.(2)

いつもお読みいただきありがとうございます。

今回はちょっと乱暴なシーンがあります。

「おい、嬢ちゃん、起きてんだろ」


 寝たふりを続けたかったセレーナだが、緊張のあまり一瞬足がぴくりと動いてしまった。

 それを見逃さなかった男は、セレーナのすぐ側まで寄りながら声をかけた。

 扉の外から光が入ってきて、眩しさに顔を顰めながらもうっすらと目を開ける。

 両手足を縛られ何も出来ないセレーナに、自分より何倍もあるだろう体格の男に真上から見下ろされると、少し収まっていた震えがぶり返しそうになり、再び最大限の力を込めて抑え込み、努めて冷静に話す。


「なぜわたしをさらったのですか……?」

「今日の祭りの中で嬢ちゃんが一番金持ちそうだったからな。裕福な貴族の娘ってのは体も綺麗に磨かれてるもんだ。だからいい金になるんだよ」


 セレーナの前にしゃがみ込み、ヒヒヒッと下卑た笑いをする男にセレーナは誰の陰謀でもなかったことにひっそりと安堵する。

 扉の外から光が入ってきたが、男が側でしゃがんだことによりセレーナの顔には男の影がかかっている。この暗さでは表情まではわからないだろう。

 皇女だということもバレていないし、セレーナを売ってお金にするということは、今の時点では殺されたりもしないはずだ。

 そう考えたセレーナは、今すぐの命の危機はないだろうと少しだけ緊張が緩みかけるも、もしこのことが公になれば醜聞になりかねないと思い直し、きゅっと唇を引き結ぶ。

 出来れば大事になる前に戻りたいのだが、どうすればいいのかと必死に考えを巡らせる。

 その様子を恐怖で言葉も出ないと取ったらしい男が、光が当たっているセレーナの足を見ながらニヤニヤと笑いながら話しかけてくる。

 転がされた拍子にスカートが捲れて膝から下がむき出しになってしまったらしい細くて白い足を隠そうと試みるが、縛られたままの両足では案の定隠せる訳もなかった。

 男は、もぞもぞと動くセレーナを見ながら可笑しそうに言う。


「嬢ちゃんはまだちっせぇガキだけどよ。中にはそういうのが好きなやつもいるもんだぜ。買ってきたのを殺すのが好きなやつもいるけどな。嬢ちゃんは綺麗な顔してっからまあ、相当歪んだ奴じゃなきゃ可愛がってもらえるだろうよ。よかったな」


 キヒヒッと心底愉快そうな声を無視してセレーナは考える。

 その間も男は勝手にべらべらとしゃべり続けた。


「嬢ちゃんにはまだわかんねぇか。どこぞの金持ちの夜の遊び相手だよ。夜だけとは限らねぇけどな。従順な雌に仕上げてくれるだろうよ。……それにしても、嬢ちゃん綺麗な肌してんなぁ。ガキには興味ねぇけど……まあ、ちょっとくらいならわかんねぇだろ」


 男の視線が気持ち悪く、諦めずもぞもぞと動かしていた足を見ていた男のどこに欲情ポイントがあったのかはわからないが、最後にぼそりと呟くとセレーナの足に触れようとしてきたため、咄嗟に身を引いた。

 それに気分を害した男の声音に怒気が含まれる。


「ああ……? 何してんだ嬢ちゃん」

「……さ、さわらないで、ください……」

「誰に向かってそんな口聞いてんだクソガキがっっ!!」


 拒絶の一言にキレた男は、セレーナの胸倉を両手で掴んで引き寄せると、勢いよく服を左右に引き裂いた。

 いとも簡単に引きちぎられたあまりの力にセレーナは顔面蒼白になる。

 必死に抑え込んでいた震えも、抑制が利かずガタガタと震え出す。

 ガタガタと震えているセレーナを見た男は気を良くすると、怒鳴るのをやめた。


「まあまあ嬢ちゃん、痛い思いしたくねぇだろ? だったら、ちっとばかしイイ子にしてな。なぁに、ちょっと遊ぶだけだからよ」

「っ!」


 そう言って、セレーナのスカートの中に手を入れた瞬間、別の男が声を掛けて入って来た。

 服を引き裂いた目の前の男に比べると随分細いが、身長は同じくらいだろうか。


「おい、何してんだ。そろそろ行くぞ」

「チッ」


 声をかけてきた男が部屋に入ると、胸元からビリビリに服が裂け、はだけているセレーナを見て声を荒げる。


「服が破れてるじゃねぇか! どうすんだよ!」

「暴れたから服が破けたましたーでいいだろうがよ。どうせ服なんか着せてもらえねぇんだろ」

「それは俺達が決めることじゃない。もし疑われたら……」

「っるせぇな! 買うのはこいつが初めてじゃねぇんだ! ヤりゃあ処女かどうかなんてわかんだろうがよっ!! グダグダぬかしてっとぶち殺すぞ!!」

「おい、お前ら! 大声を出すな! 見つかったらどうするんだ! 早く行くぞ!」

「悪い……」

「チッ」


 二人が言い争っていると、もう一人別の男が入ってきて声を抑えて制止する。

 最初の男は気が短くかなり大雑把なのだろう。

 反対に、二番目に入ってきた男は真面目な性格らしくばつが悪そうに視線を逸らしている。

 三番目に入ってきた男はわからないけれど……リーダー的な立場なのかもしれない。

 二番目の男は素直に謝っているが、セレーナに乱暴を働いた一番目の男は舌打ちをするだけだった。

 それでも反抗はしない男に、時間が惜しかっただけなのかはわからないがリーダーらしき男は嘆息するだけで特に何も言うことはなかった。

 気を取り直したリーダーらしき男は他の二人に段取りを伝える。


「さっきも言ったが、ちゃんと段取り通りにやれよ。もうすぐこの家の裏に荷運び用の馬車が来る。そうしたら、その子どもを荷馬車に入れてこの国を出る。関所でバレないように注意しろよ。その後、五十㎞くらい行ったところの森に小屋がある。そこで受け渡しだ。いいな」


 説明が終わるとセレーナは、布を裂いて作ったような紐で口と目を手早く覆われ、体格のいい一番目の男に俵担ぎにされる。

 そして、馬車が到着したらしい音が聞こえると、男達は素早く外に出て馬車に駆け寄った。

 乱暴に運ばれ、舌を噛まないよう必死に歯を食いしばる。


(どうしよう……! このままじゃ……でも一体どうしたら……っ)


 荷馬車に乱暴に積み込まれ、またも床らしき板の上に転がされる。

 積まれた瞬間に板で頬や足を擦ってしまい、ピリピリとした痛みに顔を歪めた。


(痛い……っ。でもそれよりも馬車が走り出してしまったら、本当にもう助からないかもしれない……!)


 助けを求めるラストチャンスかもしれないと思ったセレーナは、口を覆われている布をなんとか外そうと、思い切り首を左右に振って声を上げた。


「んぅーーっ! んんーーーーっっ」

「騒いだら今すぐ犯すぞ!!」


 怒鳴った男がセレーナに襲いかかった。

 勢いよく馬車に乗り込んだ男のせいで、馬車が大きく揺れる。

 目も口も両手足も縛られているセレーナは逃げることも抵抗することもままならない。


(どうしよう……嫌だ……怖い……怖い…………っ!!!)


 セレーナに馬乗りになり、男の下品な舌舐めずりが聞こえた瞬間、すぐ側で男の叫び声が聞こえた。

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