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プロローグ

初投稿でドキドキです。。!

「お兄様……! 何故このような事をなさったのですか……!」


 彼女の私室で二人の騎士に床に両膝をつくように捕らえられているのは16歳の皇女、セレーナ・ウィンクルム・インペーリオ。

 セレーナの見上げた先に、お兄様と呼ばれた皇子、スフィーダ・ウィンクルム・インペーリオは剣を右手に持ち、反対の指で眼鏡のブリッジを上げながら彼女を嘲笑った。


「何故、だと? お前は本当に馬鹿だなぁ。頭が足りなさすぎて兄として恥ずかしいよ」


 呆れた様に言った直後、表情を消したスフィーダの聞いたこともない冷たく憎悪に満ちた声が部屋に響いた。


「……それなのに、皆、お前が次の皇帝の座に相応しいと言う。馬鹿な貴族も、城で働く者達も、国民も! 父上でさえも……っ! 皆、皆だ! 何故だ!!! 何故僕じゃない!? 僕の方が皇帝の座に相応しいのに!! ……そう思わないか?」


 歪な笑みを浮かべたまま問いかけたスフィーダだが、特に答えを求めていたわけではないようでそのまま話を続ける。


「そうだ。お前が許しを乞うのなら、お前の側付きの騎士だけは助けてやろう。アレの能力は失くすには惜しい。どうだ?」


 何に対して許しを乞うというのか。

 何もしていないのに。いや、何もしていないからか。

 もう思い出せないけれど、どこかで兄とは疎遠になっていた。

 幼い頃は優しかったはずの兄に、いつからこんなに恨まれていたのか。

 今となってはもうわからないけれど。

 元々皇帝の座にも権力にも興味はなかった。今だってそうだ。

 自分はいつか有力な貴族や隣国へと嫁ぐのだとばかり思っていた。

 皇帝に相応しいなどと言われていたなんて露程も知らずに。

 今更考えても仕方がない事だけれど、自分が何もしなかったばかりに兄の変化にも気付けなかった。

 だが、彼だけは。唯一、ずっと側に居てくれた、優しさをくれた彼だけは守りたいと思った。

 セレーナは、額を床に擦り付けて許しを乞うた。


「許して、ください……。彼だけは助けてください……お願いします。」

「そうだなぁ……。靴でも舐めて貰おうか。出来るだろう?」


 態とらしく考える素振りを見せた後、床に這いつくばっているセレーナの前にスフィーダの足が差し出される。

 それに唇を寄せ、あと少しで唇が触れるという所で後ろから大きな音を立てて扉が開いた。


「姫様……っ!!」


 自分の何を犠牲にしてでも助けたい彼、セレーナの護衛騎士レオが剣を片手に傷だらけの姿で飛び込んできたのだ。

 セレーナが驚いたと同時に顔に脳が揺れる程の凄い衝撃を受けて視界が反転した。

 一瞬何が起こったのか、理解が追い付かなかった。

 一瞬の間の後、頬骨から口の辺りにかけて激痛が走り、ガンガンと痛む頭で蹴り飛ばされたのだと理解した。

 口の中が血の味がする。何本か歯も折れたようだ。

 痛みで唇が勝手に震える。歯がカチカチと鳴り蹴られた骨や折れた歯に響き激痛が走る。

 両手を握り力を入れて落ち着けようとするけれど、震えは止まらない。


「貴様ァァ!! 何を……! 離せ……っ! 離せぇぇえええ!!」


 激昂したレオがスフィーダに斬りかかろうとするも周りの騎士達に囲まれ取り押さえられる。

 それでもセレーナを救おうと、守ろうとたった一人で戦っている。

 それが嬉しくて、悲しくて、その優しさが温かくて、痛くて、涙が溢れた。

 その様子を見ていたスフィーダが、はぁー、やれやれ。と嘆息すると、


「あーあ、興醒めだよ。僕に許しを乞うている時に余所見するなんて、どこまで僕を侮辱すれば気が済むのかな。もういいや、バイバイ」


 さして興味も無くなった様に、彼は冷たく言い放ってセレーナを貫いた。

 レオが一瞬驚きに目を見開いた姿が見えたけれど、セレーナが倒れていく中、周りの騎士達を振り切りこちらに走って抱き止めてくれる彼が視界に入った。


「姫様……っ!! 姫様!!! しっかりしてください!! 今……今医者に……!!」


 段々声が遠くなっていく。

 彼の低く落ち着いた優しい声が好きだった。

 私の事を見てくれる温かい眼差しが好きだった、柔らかな笑顔が好きだった。

 血は繋がっていなくても唯一の家族の様に想っていた。

 大好きな声を、聞きたいのに。

 大好きな瞳を、見たいのに。

 聞こえなくなっていく。

 見えなくなっていく。

 もっと一緒に過ごしたかった。

 ただ穏やかな毎日をのんびりと過ごせるだけで良かったのに。

 血に濡れた手でレオの頬へ手を伸ばして微笑む。

 こんな事に巻き込んでごめんなさいという想いを込めて。

 それでも……。


「あな、たは……生き……て…………」


 ヒューヒューと鳴る喉から声を絞り出す。

 せめて、最後に感謝を伝えたいのに、声が出ない。


「あ……り…………と…………」

「もう喋らないでください!!」

「いま……で…………」

「姫様!! おやめくださいっっ」


 レオが涙ながらに制止するけれど、構わず口を動かした。

 せめて最後に、伝えられる限り伝えたい。

 まだまだ伝えたい事はあるのに声が出なくなっていく。

 口ももう思うように動かせない。

 それでも、最期の一瞬まで。


「あ……り……が……………」


 腕が重力に従ってだらんと床に落ちた。


「姫様! 姫様……!! 何故……何故私も一緒に連れて逝ってはくれないのですか……っ」


 徐々に冷たくなっていく彼女の体を抱き締めながら涙ながらに呟く。


「呆気なく死んじゃったねぇ。まあ、殺したのは僕だけど。あはははっ」

「き……っさまぁ……っ!!!」

「愚妹の命に免じてキミだけは助けてあげるよ。良かったねぇ、これからは僕の従僕として使ってあげるよ」


 スフィーダが何か話しているがレオの耳には入らない。

 壊れやすい宝物を置くように、そっとセレーナを床に横たえる。

 ただただ悲しい。

 今まで側で見守ってきた愛しい人を守れなかったことが。

 みすみす死なせてしまったことが。

 独りで……逝かせてしまったことが。


(それならば、少し遅れてしまったけれど俺も逝こう。あなたは最期まで生きてくれと願ってくれたけれど。あなたのいない世界など生きている価値などありはしない。)


「……ずっと、お側に。」


 セレーナを抱きかかえる時に横に落ちた剣を拾ったレオは、それで自らの心臓を貫いた。


「なっ!?」


 スフィーダが驚きの声を上げ、周りの兵士もあまりにも躊躇い無く己を貫いたレオに驚いて動けなかった。

 レオがあまりの痛みに顔を歪めたのも一瞬、セレーナに覆い被さる形で倒れ込む。まるでセレーナを守る様に。

 眩い黄金の光が二人の体から部屋全体へと広がっていった。

 温かくて優しい何か……母に抱き締められたような、愛しい人に抱きしめられたような感覚。

 心が体が、思考が溶けていく感じがした。

 あぁ、これで終われるのかーーー……。

初投稿なので、読みにくい等あるかもしれません。

これから試行錯誤しながらやっていきたいと思います。

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