冒険者でいいんです。
悲劇の王子と異世界転生者、異世界転移者のパーティー。
こんなに色々てんこ盛りでも、所詮モブです。 @短編その54
卓球ラケット持って異世界転移したオレがタンクになった件の番外。
異世界と、彼は言う。
異世界と、彼女は言う。
俺は、ここは俺の世界と言う。
13歳の少年は、今まで俺からすると異世界で暮らしていて、いきなり此処に跳ばされたそうだ。
15歳の少女は、今まで俺と同じ世界で暮らしていたが、魂は異世界の記憶を持つ女性とすり替わったと言う。
俺はたまたま其処にいて、突然現れた少年に驚き。
急に蹲って、頭を抱えて苦しんでいた少女が、呆然とした表情で周りを見渡すのを見て。
少女は元の記憶がまだ僅かに残っていて、この世界での名前と歳、住んでいる所、家族の名前を覚えていた。
少年の名は、ノリト・ウキガイ。13歳とは思えない落ち着きだ。
少女の名は、ヴァレット・モードン。子爵令嬢だそうだ。元の彼女はサトミ・イシカワ。享年24歳。
俺はアルハザーレ・ギュレイ。18歳の冒険者だ。12歳から始め、今はCランク。
俺たちのいる場所は、見晴らしの良い山の中腹にある休憩所。
まあ、切り株の椅子があるだけだが、休むにはちょうど良い。
さて。
この二人をどうしよう?
時間に制限はないから、俺は面倒を見てやれる。
一人旅もいいが、人が増えるのも悪くない。
「さて。ノリトは異世界から跳ばされたから、此処にいてもおかしくない。サトミさん、令嬢がこんな山奥にいるのは、なぜだ?」
少女は・・・いや、サトミさん(年上だから『さん』付け)は、前の記憶を読み取ろうとしている。
俺はノリトに飲み物を渡し、サトミさんにも手渡した。
「この子は・・・家族にとって・・いらない子だった・・殺される前に、逃げてきた・・・」
「!!」
俺もノリトも仰天した。
続く話は、さらに驚きで、胸糞が悪くなった。
程々裕福な子爵家に生まれた彼女は長女で、10歳に婚約者が決まった。
だがなぜか婚約者は彼女を毛嫌いし、あろう事か彼女の妹に手を出したのだ。
彼女が15歳、妹はなんと12歳。
妹は可愛く、愛想も良かった。領民にも人気があった。
妹を守ろうと、婚約者を責めると、何故か両親も相手側も、婚姻は妹とという話になっていた。
不満はあったが、婚姻して責任を取るならと思ったら・・
生まれた子供は、姉である彼女が産んだ子にして、不貞を犯して産んだという事にしようと。
妹も、両親や好きになった婚約者の言うままになり、ヴァレットは孤立した。
彼女の唯一信頼出来る叔父の元へ逃げようとして、追手に追いつかれて。
足を踏み外し、崖から滑り落ちて・・・必死で此処まで辿り着き、彼女は気を失い、サトミと入れ替わったのだ。
サトミの魂のおかげなのか、今は怪我も無くなっている。
とにかくドレスでは目立つので、俺の服とニット帽を渡し、着替えさせた。
「ノリトもこれを着て」
フード付きのローブを渡すと、着たがやはり大きいのでダボダボしている。
「とにかく、此処から去ろう」
俺は感知妨害の術を展開、早足で山を下る。
此処から4キロ先は国境だ。
「異世界の転移者、転生者は、国が保護してくれる。どうする?このまま旅を続けるのは、危険だ。自分の身が守れないと」
「そうだけど」
ノリトは悄げた。剣も体術も魔法も知らない世界の子なんだ。
「僕は元の世界、自分のうちに帰りたい」
そして目が滲んで、うるっとしている。ああ、知らない場所に一人なんて、辛いよな。
しかも異世界だ。隣の国に、というわけじゃない。
「よし。俺たちの目的は・・・ノリトを元の世界に戻す手段を見つける事。そして、サトミを叔父さんのところに連れて行く事。・・・サトミって呼んじゃったけど、元の?名前の方がいいか?」
「今はサトミでいいわ。ありがとう、アルハザーレ」
「アルでいいよ」
「アルさん、お願いします」
こうして三人の旅は始まった。
旅をしながらノリトに剣術を教え、魔法も教えた。サトミは回復の魔法に才能があって、途中神殿で加護を貰ってスキルを上げた。ノリトは元の世界で体操をしていて、とても身軽だったので、双剣に変更して稽古を進める。
魔法は火球と簡単な生活魔法が出来るようになった。
身分証を誤魔化して作り、ギルドにも登録した。
偽造なんて簡単だ。
戦争や災害で無くなった土地を書けば大体済む。
過去の経歴よりも、その後ギルドへの貢献度で信用が加算されるからな。
サトミの叔父は、かなり遠くに住んでいて、山脈を越えた先にあった。
世捨て人のような人らしい。
その人は魔法が使え、転送術が使えたからサトミと会うことが出来ていたそうだ。
転送術が使えるなんて、かなりの上位魔法使いだな。
魔法をもっと使えるように、魔術協会にも顔を出し、ふたりを育てて・・・
こうしていつの間にか2年近くが経過していた。
最近はノリトも戻ることを諦めたようで、
「今更戻っても、勉強ついていけないだろうし、何よりこれ」
彼は立ち上がる。
身長が10センチ近く伸び、俺に迫る高さだ。俺は177センチ、この前ノリトの身長を測ったら、170になっていた。
「顔つきも変わってきちゃってるでしょ?親が見てもわからないかもしれない」
15歳の彼は、戦ううちに精悍な表情になっていた。
サトミも出会った時よりも少しだけ背が伸びて・・・というより・・・
「ミサ姉(彼はこう呼ぶ)太ったよな」
「太ってません!!」
いや、まあ茶化しているだけだろうけど・・胸がね?たゆんたゆんなんだよ・・・
17歳でお年頃だし。
「ミサ姉、アル兄(ノリトは俺をこう呼ぶ)に惚れてるし〜」
「ばっ、もおぅ!!黙んなさいよっ!!」
・・・うん。気付いている。
こんなに綺麗で可愛い子を振って、妹に手を出した婚約者はロリコンだったのか、それとも妹が魔性の女だったのか・・・まあそれはいいや。前に聞いたところ、12歳とは思えないほど早熟な体だったそうだ。
そういう子いるよね、たまに。
この前狩りに出て、猪を捕獲、晩飯は猪鍋だーと弾んで帰ると、二人がおしゃべりをしていて。
「ま、がんばれよな。おーえんしてるから。でもアル兄はイケメンだぞ?街の女もアル兄に寄ってくるし」
「・・・・そうなのよね。無自覚イケメンだもん、アルは」
「美男子だもんね。オレはアル兄の筋肉に惚れている。細いようで、あの腹筋。マジ惚れる。ああなりたい」
「あんたは何を言ってるの。確かにあの筋肉は・・・綺麗だけどー」
「どうやればあの筋肉になれるんだろうか」
わざと草を踏み締め、音を立てる。
ガサガサ・・・
お前ら、オレのこと本当、好きだな。
「あ!アル兄おかえり!わぁ猪じゃん!」
「さー、捌きましょう。今夜は猪鍋にする?」
「頼む」
猪肉の、異世界の調理法で『スキヤキ』をするのだ。甘辛くて美味い。
でも2年で変わるものだ。
二人とも、まだ出会ったばかりの頃は、猪を捌くのを遠巻きに見ていて、ギャーギャー騒いでいたものだが、そのうちサトミが恐る恐る解体に加わって、ノリトもおずおずとナイフを刺すようになって・・
今では達人技のように綺麗に捌く。
笑顔で内臓を引っ掴んで、『内臓もうまそうだねー』とか言うようになったしな。
「我が家では、おとーさんがすき焼き奉行だった。他の鍋では手を出さないのに」
「オレんちも。すきやきってお父さんが仕切るものなのかなー」
「じゃ、俺も覚えた方がいいのか?」
「うん!アル兄の好きな味にしていいよ!」
「あたしもノリくんも関西系だからね。まあ、割下作るには出汁がいるし」
異世界料理『スキヤキ』は奥が深い。
冬は旅をせずに、街で春を待つ。
この山を越えれば、サトミの叔父の住む場所だが、豪雪で傾斜がきつい。距離はそれほどないのだが、万全を期して滞在することに決めた。
すぐにサトミとバレないように、毛染めをしている。今は明るい銀色だ。
回復魔法が使えるようになって、サトミの瞳の色は澄んだ青に変色した。
まず見ただけでは、『ヴァレット』とは分からないだろう。
ギルドに立ち寄り、依頼の品を納品して、近くのレストランに入って昼食を取っていると、知らない男が紙切れを差し出した。
「この娘に心当たりはないか?」
あるけど言うかよ。ヴァレットの昔の顔だ。でも白黒だと・・・ヤバイな。姿は幼いだけで、ヴァレットだ。
まあ、紙には『鳶色の瞳』ってある。今の彼女と色は違う。
「だれだ?」
「この娘を探している」
「知らん。なんで探しているんだ?」
「山を越えたヴィリジアン国の貴族で、大罪を犯したんだとさ。詳しくは知らんが。邪魔したな」
男は次の席に移って、同じく聞き取りを始める。
「大罪ねぇ・・・12歳の子を孕ませるより大罪って」
暗い表情で、サトミが呟いた。
・・・12歳ならいいじゃないか。
俺が知っている国の王家では、10歳の子を孕ませた。その子が・・・俺だ。
幼すぎて、体力が持たなくて、その上まだ子供には荷が過ぎて、心を病んで、産んだ後苦しんで死んだ。
そんな国、知った事か。
未だ後継が出来ないそうだ。母に呪われたんだ。ザマアミロ。
俺たちは賑やかな街で年を越した。
親愛の日(元の世界のクリスマスのような日)には、サトミとダンスをした。
ノリトは可愛い子をナンパして、その子と夜中まで遊んでいた。
冬の間、街にいるんだからと三人で魔法教会に赴いて魔法漬け。
知らない術を習ったり、試したり、薬作りにと勤しんだ。
そしてノリトはというと、親愛の日の彼女とちょくちょくデートをしているようだ。
俺の方も、サトミとデート?したりしている。
「伯父のところに行って、現状を相談するけど・・みんなと旅を続けたい」
そろそろ春。
そんなある日の夜更、サトミが俺に相談しにきた。
楽しいもんな、今の暮らし。
「サトミが思うままにしたらいい。俺は協力するだけだ」
「ありがとう、アル」
俺たちのパーティーは、実にバランスがいい。
この調子なら、3年後にはAランクに行けるだろう。
どこかを拠点にして、任務をこなして。
此処からはまだ遠いけど、大国セブライに行って、ギルドの任務を受けてさ。
暢気に毎日を過ごす。
辛くない、悩まない、ただ穏やかな日々を過ごすんだ。
異世界転移者と異世界転生者は、『異世界の旅人』と呼ばれて国が保護する理になっている。
いざとなったら、ふたりを国に囲って貰えばいい。それならセブライ国がいいだろう。
あそこは割と良い国だと聞く。
春になり、出立の日にはノリトのガールフレンドが見送りにやって来た。
俺とサトミは『どうするのかな』と心配しつつ様子を伺っていたが・・・
ぱしん!
ノリトは何を言ったのだろう。女の子にビンタされていた。
怒ってさっていく女の子を見送り、俺たちも旅立った。
多分ノリトは『待たなくていい』と言ったんだろうな。
俺たちは冒険者で、いつ死ぬか分からないのだし。
でも彼女がくれたペンダントを付けているところを見ると、後ろ髪引かれるって奴か。
兄貴分としては、応援してやるだけだ。
山をようやく越えて、サトミ・・・ヴァレットの叔父が住む場所までやって来た。
半径10キロ範囲に人は住んでいない、本当に辺境の地だ。
「ここかな」
こんな場所に、よくこんな豪邸を建てる事が出来たなと感心した。
魔法で建てたに違いない。
ミサトは意を決し、ライオン頭のドアノッカーでノックした。
ごっ、ごっ。重厚な音が響く。
「ああ、やっぱり。ヴァレットだね!何年ぶりかな」
「叔父様、お久しぶりです」
「もう話は聞いているよ。では、話そうか。・・君たちも入りなさい」
入れてもらえなかったら困った。入るなと言う気だったのだろうか。どうやら合格したようだ。
少し遅れて、執事がふうふう息をついてやって来た。
「旦那様、私よりも早くドアを開けないでください・・・ふう、ふう・・」
「お前の方がじいさんだからね。誰が来るかわかっていたから私が応対したよ」
「お邪魔します」
「失礼します・・」
エントランスホールは吹き抜けで、広々としている。さりげない調度品も、高価なものだろう。
執事と女中三人がやって来て、
「お疲れでしょう。身綺麗になさってください」
風呂に入れてくれたり、新しい部屋着を用意したりと、身の回りの世話をしてくれた。
その後は丁度昼食時で、三人と叔父は共に食事をいただく事となった。
話もそのまま進められた。
「妹はあの時12歳だったそうだね。実は一月前、私はジンライ(ヴァレットの父で叔父の兄)の所へ所用ついでに行ってね。まったく、聞いて呆れたよ。兄にも呆れたが、12歳の子供を孕ませた元婚約者にはゾッとしたね。でも一番呆れたのは、お前の妹だよ」
「あの子ですか」
「ああ。生まれながらの淫売娘だ。あれはもうダメだ。子供を産んだ後、色々な男と通じている」
「今、あの子はまだ・・14歳ですよ?」
「そういう子もいるさ。元婚約者殿は知ってるかは知らないがね」
私の寝床にも入ろうとしたぞ、と彼は大笑いした。
「一発尻を蹴り上げてやったがね。さて、お前を守るもよし、手助けして何処か婚姻をさせても良し。ヴァレット。どうしたいのかな?」
「・・・わたしは・・・此処に来るまで、この二人と協力して旅をして来ました。このまま一緒に旅を続けたいと思っています」
「・・目の色が、変わったね。うーん・・・このままがいいんだね?」
「はい」
「じゃあ、忠告。絶対に、神殿には行ってはダメ」
「どうしてですか?」
「目の色が・・・クリアブルーに変化しているから。クリアブルーは、聖女の色だよ」
「え・・!」
聖女は神聖で、信仰の対象になる。
神殿に捕らえられたら、もう外には出られない。
「私がちょっと細工をしてあげよう」
叔父はヴァレットの目蓋に手を翳し、何か術を唱えた。
彼女が根を開くと、赤い色に変化していた。そして一粒の魔石を手渡した。
「これを絶対に壊さないこと。目の色が戻っちゃうからね」
「ありがとうございます、叔父上」
「それと、この魔石。緊急用。何処かに逃げたい時に使うと、私のこの家に来れるよ。さ、この話は、これでお終い。君の友達を紹介してくれるかい?」
その後はお菓子にお茶を楽しみながら、俺たちも加わって談笑した。
自己紹介から始まり、俺が二人を発見したこと、(ヴァレットはミサトになっている話はしなかった)ノリトが転移者である事、此処を出たら、セブライ国に行こうと思っている事を告げた。
セブライ国には彼の知り合いがいるそうで、紹介状も書いてもらった。
この屋敷にしばらく滞在し、魔法を色々と教わった。
1ヶ月ほど滞在して、此処を後にした。
俺は此処にいる間に『空間移動術』を教わった。まあ、シーリッツ(ヴァレットの叔父)さんに比べれば10分の1の距離だがなんとか使えるようになった。いざという時は、これを使う。
山を戻り、街道に出るとセブライに向かう。此処から3ヶ月ほど歩いた所にある。
「アル兄、もうすぐ街だけど、ギルドがある街だよ。何か受ける?」
ノリトが聞いて来た。
「いや、懐具合はいいから先に進もう」
「ほーい」
「ミサトもそれでいいか?」
「いいよ」
「剣のメンテはしておこうか」
「オレ、そろそろ双剣よりも他の武器にしたいなぁー。大剣かっこいいしなー」
「うーん。お前が剣剛か剣聖付きだったら考えるんだけどなぁ。無いなら普通の剣の方がいいぞ」
「そっかー」
最近ノリトはガタイががっしりしてきて、大盾も持てるようになっている。
身長も、ほぼ同じだ。
「タンクもいいかもな。でも、重い大盾持って俊敏に動かなければいけないからな」
「もっと鍛えろって事だね?」
「まあ、そうなる」
俺たちはBランクに上がっていて、それなりに中堅どころのパーティーに成長していた。
もう少しポイントを稼いだら、Aランク昇格だそうだ。
来月ノリトは16歳になる。皆でお祝いをしようと話して、宿屋にチェックインし、各自の部屋に入った。
宿屋の食堂兼休憩所で、三人で食事をしていると噂話が耳に入る。
此処から遠い小国で、大厄災が起こったとか、とある国で王子が婚約者を断罪したとか、聖者様がまた霊障で濁って人が入れない森を浄化したとか、巨大オーガが人を襲ったとか。
そして、あの国の噂も混じっていた。
非業の最期を遂げた、小さな王女に産ませた王子を探していると。
王子を探すのは、王女の呪いを解くためだと。
馬鹿言え。謝罪は無いのか。・・・母と今も言えない、小さな王女にした事に対する懺悔は無いのか。
胸糞悪い奴らだ・・・永遠に呪われろ。
「どうしたの?アル兄」
「怖い顔してるわよ?」
二人が心配するような表情だったのか・・・反省。
「ちょっと眠いなって。すまん、寝るわ」
「うん、おやすみー。オレも寝る」
「わたしも引っ込むわ」
三人で部屋に戻り、オレは一人になってベッドで寝転がる。
「ああ、俺を見つけて・・・何て言う気だろうな」
滅びてしまえ。母を死ぬまで苦しめた国がどうなるかなんて、知ったことか。
思い出すのは、10歳の時に見た母の肖像画。俺は胸が今も痛む。
愛らしい、栗色の巻毛の幼い笑顔。俺と同じ10歳の頃の母の姿だ。
そして間も無く・・・彼女に訪れる狂気の日々。
その日から俺は、栗色の髪を灰色に染めるようになった。
それから一ヶ月後。丁度セブライ国と中間くらいの場所にある街で、ノリトの誕生日を祝った。
サブパーツという重りで、日常は付けて体力強化、戦闘時に外して使うものだ。
手首と足首と腰に付けて使う。ちなみに俺も買った。お揃いだ。
「体力強化に役立ててくれ。重さは魔力を流し込んで調整出来る。大剣持ちになりたいなら使え」
「うわ!さすがアル兄!!ありがとう!!」
「わたしはこれ」
「おお!やった!ありがとう、ミサ姉!」
プレゼントは特殊加工のブーツだ。もうボロボロになっていたからな。
三人の旅は快適だった。
受けたい依頼だけ受け、代金をいただき、宿屋で楽しく食事。
最近はノリトも大きくなったので、ちょっとしけ込んだり。ノリトももう大人の仲間入りだ!
勿論、ミサトには内緒だ。
確かに可愛いし、最近は綺麗になってきたし、ちょっとエロくなってきたが、冒険者たるもの、パーティーメンバーには手を出さないが鉄則だ。仲間同士で仲違いは嫌だからな。戦闘中に『やり返し』されたら怖い。
途中、不思議な出会いがあった。
野宿をしている時・・・
ギャギャ・・・ピイッッ・・・・ギャギャ・・・
変な鳴き声を聞いた。
此処は、4ヶ月前にスタンピードで壊滅したアジュレア国だ。
「ま、魔物かな」
「どうだろう。ノリト」
「おうっ」
俺とノリトで探索に向かうと、いた。
ちっこいドラゴン・・・ドラゴンパピーだ。
「なんだこれ!かわいい!!」
「お。認識章が付いてるな。飼われているぞ」
「でも飼い主と逸れたのか?」
「・・・・死んだかもな」
「可哀想だな」
「言うと思った。ノリト、責任持って飼えよ」
「えー」
野営場所に戻り、ミサトに見せると大はしゃぎだった。
「言っておくが、飼い主が見つかったら返すからな!こいつの名は『ピー助』だからな」
「はーい」
二人は生返事、楽しそうにドラゴンパピーにチョッカイをかけている。
認識章に上質な魔法石を使用しているので、かなり高位貴族の飼いドラゴンだ。
魔石には何かの番号と、名前が彫られてあった。持ち主の名も彫っておいて欲しかった。
この国で起こった大厄災、スタンピードでたった一人しか生き残らなったという。
セブライ国を目指す俺たちは、大国ロットランドに入国した。此処を抜けると、セブライは間も無くだ。
だが、険しい上に細い山道をいかなければならない。
その途中に村があったのだが、盗賊団により壊滅して無人だとか。
休む場所も少ないが、今は初夏だから野宿もなんとかなる。
「ピギャ」
「ん?どうしたピー助」
「ピー助はドラゴンレーダーだなー」
「れーだー?」
「探知装置だよ」
とノリトが言う。異世界用語かな。
「何か分かったようだな。何か意味が分かればいいんだけどなぁ。ドラゴン語では、さっぱりだなぁ」
「ぴぃぃ・・・」
残念な探知装置だ。
なんかきた、程度だ。それなら俺の感の方が早いじゃないか・・・
「ピー助はそこにいろ。出てくるなよ」
「ピーーー」
俺の頭に乗るな!!動きが取れねーぞ!!
なんとか魔物を倒し、頭のピー助を引っ掴んで頭から離す。
「こら・・・俺が死んだらどうする!!」
「ピイィ・・・」
「この子、頭が定位置なのかも。飼い主がいつも乗せてたのよ」
「はぁ?こんなのを乗っけて戦えるのか?!」
「そうね・・・剣聖で、聖騎士なら」
「え!あの生き残った子?!」
「まあ、とにかく・・・生き残った彼に、会わせてみるか。もしかして、知り合いのペットかもしれないからな」
生き残った子は、侯爵家の後継だったそうだ。ええとこのボンボンと思いきや、剣聖と聖騎士の称号があると知るなり、騎士団に入団したそうだ。その時8歳くらいだったとか・・・
なに、その子。貴族の矜恃?ノブレスオブリージュってやつなのか?
「まあ行くしね?セブライ行くしね?丁度いいよね?」
またあいつは、ちっこい羽で羽ばたいて俺の頭に乗っかっている。
そこが定位置か。首が凝るわ。
「ノリトに背を越される、縮む」
もう3センチで同じなんだよ!しかも既に、胸囲は6センチ越されたんだよ!!
「オレは剣がメインで、アル兄は魔法メインじゃないか。しかたがないじゃん」
「ううう、悔しい・・・」
「アル兄は、オレなんかよりも美男子だからいいじゃん〜」
「イケメンと言われたい。美男子って、軟弱なイメージだよ」
「美男子って普通言われないもんだよ?美男子だよ?いいじゃん!」
「へなちょこイメージだっ!!断然抗議するっ!!」
「もうー。アルはー・・・わたしより綺麗よ・・・ぅぅぅ」
「なんでヘコむんだ?ミサトも、ミサトも・・・うん、可愛い、かな?」
「疑問形?」
ああ、ごめん・・・俺、正直者で・・・君は別に不細工では無い。
美女では無いんだ。中途半端に可愛い顔なんだ。ただ、すごく肉感のある体型で・・デブじゃ無いぞ?
エロい。胸がたゆんたゆん。そっち方向の方には需要があると思う。
でも、もうちょっと痩せるべき。ちょっと心を鬼にして、言う。痩せろと。
俺は最近スナックをもりもり道中に食べているミサトに、苦言を言おうかどうしようか悩んだが・・・
「痩せろ」
俺はキリッとした表情で言った。
ミサトはうぐぐと呻いて・・・ダッシュで逃げ出した。
「追え!!」
「ほいっ!!」
あっという間にとっつかまり、ミサトがノリトに引きずられて戻ってきた。さすがガチムチ弟。
「スナックは食うなとは言わん。だが、限度を超えてる。だから・・・」
ごくり、ミサトの生唾を飲む音が聞こえた。
「スナックはセブライに着くまで、禁止!!!」
「ぎゃあああ」
「貴族のお嬢様の声じゃ無いね・・・そんなだからアル兄が寄り添わないのに」
「だから、パーティーメンバーには手を出さないって」
「す、ストレスでぇ〜〜ストレスがいけないんですぅ〜〜」
「ミサ姉のどこにストレス要因があるってんだよ」
俺はすとれすと言う単語にきょとん。
「すとれすとは?」
「外的刺激・・精神的、物理的な不快な刺激でイラッとしたり、過食に走ったりと、まあ・・いいわけ、かな?」
「いいわけ」
「わーーん、アルがいけないんだもん!!」
「俺のせい??」
俺に相手にされないから?でも過食に走るのは?俺はかつて無い、本気で呆れて溜息を吐いた。
「はあぁ・・・本当だ、いいわけだ」
「うわーーーん!」
「反省しろ。そして痩せろ」
「うわ、アル兄マジ顔だ。これは痩身不可避」
俺はまたも懲りずに逃げようとするミサトを羽交い締めにし、ノリトにスナックを探させた。
こうしてバッグやリュック、そして彼女の服のポケットからスナックを取り上げた。
そして立ち寄った村の子供にあげた。
「おにいちゃんありがとー」
大変喜ばれました。ミサトは野獣のような目をして俺を睨んでいます。
「ダイエットだよダイエット!痩せて綺麗になって、アル兄をギャフンと!」
ノリトが妙なことをミサトに吹き込んでいる、だから、パーティーメンバーでいるうちは、手を出さないって。
だからって、あの体型は自堕落の結晶。不摂生。不健康。甘え。気の緩み。だから断罪する。
ダイエットのせいで胸が少し縮んでもいい。俺はくびれが好きだ。
と言うか、お姫様抱っこ出来る重さになれ。
・・・熱く語ってしまった。
そんなこんなでまた親愛の日が近付いてきた。
まだセブライ国の国境は越えたが、さすが大国、王都まではまだ遠い。
立ち寄った街で、親愛の日を祝う事にしてダンスの練習をする。
主にミサトのダイエットのために。肩で息をついているが、まだまだだ。まだ親愛の日には5日ある。
「さあ、もう一度!」
「勘弁してーー」
「ダメだ!ほら!!」
「鬼だ鬼が此処にいるーー」
俺とミサトでダンス訓練をしている間に、ちゃっかりノリトはダンスパトナーをナンパしに行き、今回も可愛い子を連れてきた。
そして親愛の日当日・・・
午前は街の人々が楽しげにダンスに興じていたのだが・・
「王都で大変なことが起きた!!」
空間移動が出来る魔法使いが、王都で起きた大事件を公表した。
事故か企みかはまだ不明だが、国王夫妻が乗るパレード車に火薬が仕掛けられていて、爆発未遂事件が起こったのだと言うことだった。そのため、この大騒ぎで自粛となり、お祭りは中止となった。
なんでも火薬の爆発を、ひとりの少年が身を挺して防いだそうだ。王子様の護衛だそうで、国中の人々が、彼の善行を称賛したのだった。
すげえな。でもお祭りが中止はなぁ・・まあ国王夫妻が大変な事に巻き込まれたなら、当たり前か。
そして話を聞いていると、この護衛の少年はドラゴンキラーで、王子様の護衛兼御学友で、成績もトップという。
王子や国王夫妻、そして妹姫にも信頼されていて、帯刀を許されている・・
なにそれ。凄い子じゃないか。
俺たちはそのまま新年もこの街に滞在し、年明けて出立した。
また王城での噂が食堂で耳に入った。
王子様と噂の護衛がなんと・・・エンシェントドラゴン討伐に出たそうだ・・・二人で。
「ひえっ」
「本気?本気なの?!」
ノリトとミサトもビックリだよ。もちろん俺もだ。
確かに最近ドラゴンや魔物がよく現れるから、ギルドの依頼もそういったものが多くなっている。
1年近く前に、どっかの国でスタンピードがあったし。
王都に近くなると、王子様と護衛の少年の絵姿がどーーーんと看板になっている。
美しい金髪の王子と、黒髪の護衛の少年は、この国のヒーローだ。
「へえ・・どちらもなかなかの美男子だね」
「いやいや、アル兄のが美男だよ!」
「本当、どいつもこいつも・・・わたしよりも綺麗・・・」
「痩せたらミサ姉もイケてるよ!」
そうなのだ。まだこっそりとスナックを食べるから、ちっとも痩せないんだ・・このお馬鹿は。
でもノリトは、まあまあイケメンに成長している。
ミサトは絵姿をじっと見ている。
「ああ、アールヌーボーチックな絵・・・綺麗、尊い・・・」
売店ではこの絵の他にもクリスタル画(薄いクリスタルに魔法で写真みたいな加工をした物)も売っていた。
クリスタル画のふたりは、絵姿よりも美男子だった。ちょっとミサトさーん。結構お高いのに買っちゃうんですかー?
それからというもの、ミサトは時々クリスタル画を取り出して眺めては、
「はあ、尊い」
と、毎日拝んでいます。彼女が楽しそうで良かったです・・・
宿屋に到着、食堂で夕食をとっていると、またも噂話。
「王子様とサトクラ、王城に帰って来たってさ!」
「エンシェントドラゴンの頭を持ち帰ったそうだぞ!」
マジか。
俺たち三人は呆然とした。
何王都の人達、さも当然な言い方してるが?
ドラゴンキラーの名を欲しいままにしている王子の護衛、サトクラは毎週ドラゴンを狩っているそうだ。
不思議な武器を使って戦うらしい。そして愛刀が『天叢雲』・・・
「あ。その人、俺と同じ異世界転移者だわ、多分」
ノリトがボソッと呟いた。
なるほど。
「多分彼は『出来る方の』異世界転移者だね。聖者様みたいな。オレみたいな普通枠の転移者じゃなくて」
「そう卑下すんな。ノリトも出来る子だと俺は思いますぅー」
「アル兄ありがとー」
「ぐえ」
俺に飛びついてくるノリトは、遂に180になってしまった。俺の身長を越してしまったので、体当たりでしがみ付かれると苦しい・・・この世界に来た時は160センチくらいだったのに、3年近くで伸びやがりました。
そして出会った頃は、薄幸の美少女で子爵令嬢だったヴァレット・・ミサトの魂の所為だな。
ちっとも痩せない。あ。また肉を喰ってる。俺は彼女の目の前の唐揚げの皿を取り上げた。
翌日。
「さて、なんとかピー助を生き残りくんに見せたい!」
「ジャスティンさんだよ。呼び方酷っ」
ピー助は俺の頭にまた乗っている。
通行人にじろじろ見られて恥ずかしい。
彼らはきっと、『イイ歳こいてあんな被り物してる』と思っているに違いない。
くそう・・・
「此処は素直に王城に問い合わせるのはどうかしら」
「それしかないよな」
街から出ている王城城門前行きの乗合馬車に乗り、さっそくアポを取る事にした。
城門前通りは、王城勤務者や王城の人御用達の店で賑わっている。
さて城門警備詰所に行くか。
巨大な城門側にある詰所にいる警備騎士に声を掛ける。
「すみません。この城に勤務しているジャスティンさんに伺っていただけますか?」
「彼は他国の客員だ。取り次ぐ事は出来ない」
「いや、ちょっと聞いて頂けるだけで良いんです。ドラゴンパピーを」
「うるさい!取次は出来ない!帰るんだな!」
小窓をピシャリと閉じられてしまった。俺たちはとぼとぼと詰所から離れる。
「うわ、取りつく島無しかよ・・どうした?」
頭の上のピー助が落ち着きがない。そわそわしている。
「どうした?ピー助」
すると先ほどの詰所にふたりの人影・・・
ひとりはクリスタル画にいた・・・サトクラで、もう一人は背が低い少年。
「ピイイッ!」
「おい、ピー助」
ピー助が飛び出す・・が、よろよろと羽ばたくばかりで進まない。あのちっちゃな羽だからな。
俺はピー助を引っ掴んで、走った。
だが、到着前に二人は城門を潜り、扉は閉められてしまった。
なんてこった・・・もう少し粘っていたら良かった・・・
ピー助は何度か鳴いたが、しょんぼりと項垂れてしまった。
「おや。ドラゴンパピーじゃないか。もしかして、ピー助くん?」
「え」
声がした方を見れば、そこに長い黒髪の男がいた。
不思議な雰囲気の男で、柔らかい微笑みでこちらを、というかピー助を見ている。
「なぜその名前を」
「僕はジャスティンくんを知っているんだ。その子、渡しておこうか?」
「えっと・・あなたは?俺はアルハザーレ」
「俺は・・・ヒデタダ。ん?もしかして、君、転移者?」
聞き覚えのある名だな、なんて思っていると、ノリトを転移者だと当てた?!
あ!聖者様は異世界転移者で、長い黒髪で、ヒデタダって名だったよな?!
「まさか、聖者様ですか?お一人で?」
「しーーー」
口元に人差し指を立て、『しーー』という仕草をした。
彼が泊まっている宿屋に空き部屋があるので、そこに泊まる事にして四人で夕食を取る事になった。
予想通り、彼はかの有名な聖者様で、この国に大厄災が起こる予見をしたのでその時を待っているんだそうだ。
今回は非公式で勝手に参加するつもりだとか。そこは政治的な事が関わるらしいので、内緒にしてくれと言われた。
なんでも一年前の大厄災前後、彼ら移転者はよく知る病気、インフルエンザにかかり10日近く寝込んでいて、予見出来ずに滅亡させたことを後悔しているのだそうだ。
そして彼は、ミサトを見るなり『おや。聖女の力を少し持っているんだな』と当ててしまった。
「正統な聖女の10分の1くらいの力だが、神殿は欲しがる力だ。気をつけなさい」
「ということは、わたしは野良聖女ということですか」
するとプッ、と聖者様は吹き出した。
「野良というよりは、端くれ、かな?神殿に閉じ込められたくないなら、叔父さんのいう通りにしなさい」
少し厳しい顔をして、忠告してくれた。
「でも君のパーティーは面白いな。異世界転生者、異世界転移者、そして・・・言わないほうがいいよね?」
聖者様には俺の本当の姿が見えるらしい。
ふいに、聖者様が俺の頭を撫でて何か呟く。
「・・・・・はい、これでよし。ちょっとアルくんおいで」
俺だけ立たせて外に連れて出る。
建物と建物の間に連れてくると、今度は肩をぽんぽんと叩いた。
「君の可愛い・・・え?ああ・・お母さんなのかい?なんて幼い・・こんなに幼いなんて・・・」
彼には分かるんだ。
小さな少女が、なぜ母親になったか。
むりやり子供を生した事も。
大粒の涙をポロポロ溢し、何かを大事そうに抱き寄せた。
「うん、うん。仕方がないね。君の苦しみは、俺が癒そう。よくぞ此処まで頑張りましたね」
聖者様の腕の中に、ぼんやりとした少女の姿が見えた。
「もう彼は大きいですよ。ずっと見守っていたのですね。あなたは素晴らしい母親です」
その言葉に、俺は、俺は・・・俺は・・・
くそっ、ずっといてくれたのか?俺を見守っていたのか?あなたは子供だったのに、苦しんだのに。
「お母さんを、成仏させます。神の国に送る、この世界ではそう言うんですかね?最後に言いたい事は?」
「急だな・・」
「ただの憑依霊と思ったんですよ。君も苦しみましたね。ずっと側にいるしか出来なくて済まないと言っています」
「側にいてくれたのを知っていたら、もっと感謝出来た。とりあえず、ありがとうと。そして」
母の人生を思うと、胸が苦しい。僅か10歳で手篭めされ、望まない懐胎をした哀れな少女。
「俺を産まなくて良かったんだぞ。貴女が苦しむ事はなかったんだ。俺を道連れに死んで良かったんだ」
狂気と恐怖で気が狂ってしまった少女は、高い建物から飛び降りて死んだ。
「出来なかったそうだよ。君があまりにも・・可愛くて」
「だったら・・一人残さないでくれよ・・狂ってていいから、いてくれよ・・」
「咄嗟に起こした行動だったそうだ。赦してあげなさい、アルくん」
涙を流しながら、聖者様が諭す。
「勿論だよ。赦すなんて・・ずっと見守ってくれて・・ありがとう、かあさま」
聖者様の腕の中の少女が音もなく弾け、淡い光の粒になって消えていく。
「転生しなさい。次の転生では、幸せが訪れますように」
一つだけ大きな光は、蛍のように輝いて空に上り、消えた。
「王子様。お母様は天に召されましたよ」
「ありがとうございました・・・母は、俺を身篭った所為で苦しみました。開放されて良かったです」
本当に、ありがたい。
母には、次は良い転生をして欲しい。
そして聖者様って・・・本当に聖者様なんだな、そう思って感心した。
「そうだ。君達、俺と行動を暫く共にしないか?大厄災の日まで」
「え?まさか」
「うん。手伝って欲しいんだ」
翌日まだ夜明け前、聖者様の聖獣には俺とノリト、そして聖者様が乗って、王城へ向かう。
俺の頭にはピー助。成獣は大きなサメの姿で、空を飛ぶのだ。すげえ。
「シャークさんって、まんまな名前ですね」
ノリトがツッコミを入れてる。シャークって見たことがない俺は?だったが。
空を飛んで、目指すは王城。手前には騎士団宿営地があって、練習場が見える。
広い騎士団練習場に、人影がふたつ。
ようやく日の出、辺りが照らされて・・・二人の姿が見えて・・
「ピイッ!」
ぱたぱたとピー助が飛ぶ・・と言うよりヨロヨロと落ちていく。その先には、背が低い少年がいて。
背の高い方が、俊敏にダッシュ、背の低い方の懐に入って、二人の間にピー助が落ちていく。
あ、地面にバウンドした。あらら、泥だらけだぞ!
「おい!ピー助!」
慌てて叫ぶノリトだが、
背の高い方がピー助に気が付いて剣をなんとか違う方向へ流した。
そして背が低い方が、ピー助を抱き締めているのを確認。俺たちは飛び去った。
「やっぱりジャスティンくんが探していたピー助くんだったね」
「ありがとうございます、聖者様」
「俺の事は、ヒデタダでいいよ」
「じゃあ・・ヒデさん」
「それそれ!聖者様って堅苦しいからね。そう呼んでくれ」
・・・こうして俺たちパーティーは、聖者ヒデタダ様専属となったわけだ。
ミサトのダイエットに、檄を飛ばすのがヒデさんの趣味、いや日課となった。
「お前ほんっと、痩せねーな!!」
「聖者様ー、お力で痩せさせてください〜〜」
「甘えるな!お前は頭ん中まで糖質か?」
「ぎへぇ、イケメンに詰られる・・尊いぃ」
「ミサ姉キモっ!!」
腐女子、だっけ?お前マジでミサトそのものになっているぞ・・カムバック、ヴァレット様。
そんなわけで。
ヒデさんの無茶振り、振り回されっぱなしの人生を歩む事になるわけだが、この辺で一旦終わろうと思う。
大厄災は、すぐそこだ。
サトクラだけでは戦えないので、強い味方が合流する話、その2。