91話 メロディvsスフィア 1
「聖戦の場所と日時は?」
アナの皇帝の言葉に、スフィアは笑いながら、
「あそこしかないだろう? 2か月後の7月1日に、ドトール闘技場だ」
「ドトール闘技場…」
スフィアは皇帝に右の拳を突き出し、
「承認したか?」
皇帝もスフィアに右の拳を突き出し、
「承認」
スフィアは静かに目を瞑り…
「これで…長い…『犬』のスフィアとしての役目は終わった…」
皇帝から、背を向ける…
背を向け足を引きずり歩くスフィアに、左大臣フレデリクスは皇帝に小声で、
「討ちましょう…スフィアを…」
「待て…」
「はっ」
皇帝は親衛隊の盾ごと…スフィアに近づく…
近づいた、その背に、
「どこへ行く気だ?」
「ドトール女子刑務所…」
「なにゆえ? お前が、あそこに下りれば…もう二度と上がらせない…」
皇帝に振り向き、
「知ってるよ。 もう二度と上がる気は無い」
「なぜ?」
「ドトールの赤い髪…最後に、あれと戦いたい…」
「ドトールの赤い髪?」
「メロディという女だ…」
「最後? スフィアは死期が近かったという事か…」
「皇帝…先に地獄で待っているからな…」
「あいにく、永らく予定はない」
スフィアは城門を出て、馬に乗り走った。
すぐに皇帝は!
「フレデリクス! 大神官に文を書かせ! 聖戦の名の下に世界の聖騎士達をドトールに集結させろ!!」
「は!」
「聖戦に参加を拒否する聖騎士は、アナの名の下に処罰の対象とする!」
「は!」
「それから…ドトール女子刑務所に、オリバーとドトールの剣闘士を向かわせろ…スフィアの首を取り…聖戦に飾ってやるわ‥‥」
「は! オリバーを呼べ!!」
スフィアはひたすらドトール女子刑務所に馬を走らせる…
道中… ドトールの街の、行き付けの高級な服屋に寄った。
入ると…
アナ帝国の大不況の影響か? 店主の高齢のせいか?
店内には蜘蛛の巣があちらこちらに…
座っていた初老の貴婦人が…よいっしょっと立ち上がり、
「あら…スフィアさん? ひさしぶり…なんか今日はいつもと違うのね?」
「おばさん…いつもの香水を売ってくれ」
「え~っと『ルカ』でしたわよね?」
「うん」
「スフィアさんのために、ちゃんと用意してますよ…」
貴婦人は香水を手渡しした。
「これだけいいの? ワンピースは?」
「いらない」
「それじゃ、1金です」
スフィアは布袋ごと、貴婦人に渡す。
「これ受けとって」
貴婦人は中身を見て、
「まあ…こんなに…?」
「もうワタシには必要が無いから」
「ありがとうスフィアさん…また来てくださいね…」
「もう『ルカ』は取っておかなくていいからな?」
「はいはい…ちゃんと取っておきますよ」
スフィアは鼻で笑い…
「じゃ、『ルカ』は向こうで待ってる」
「はいはい、ありがとうございます」
店を出る…
馬を走らせる…
海沿いの高台を走る…
着いた…
終止符に願った相手がいる… この場に…
崖の下の刑務所を見下ろす…
赤い髪がいた…
スフィアがさきほど買った香水をふった時…
男が一人来た。
「なんだ? お前?」
「スフィアだ」
「オレはアブラック。 この刑務所の責任者だ」
「そうか…」
瞬で近づいたスフィアは
アブラックの後方に回り、右腕で首を絞める。
「だれか!! たすけてくれ!!」
すぐに詰所から、屈強な男二人が来た。
「何者だ! 手を離せ!」
スフィアはアブラックを引きずりながら、
リフトの上に乗り、
「この男を死なせたくなければ、リフトを下せ」
屈強な男二人は、
「やなこった! 上から許可なく下ろせば俺ら下っ端が罰を受ける!」
「そうだ!」
「それなら…」
直後、
スフィアはアブラックの首を360回転させた…
「うえ! 看守長!?」
「なにしやがる!!」
「次は、お前たちになるだけだ…」
「いやだ!」
「まって!」
すぐに屈強な男二人は、リフトのレバーに走り、回し始めた。
アブラックの倒れた死骸と共に、
スフィアの足元のリフトはゆっくり下りる…
「ゴホゴホ…」
悪い咳をした後…
手足ブラブラのストレッチをし終わり、
腕を組み、真っすぐとメロディを見下ろし、
「まだまだ動ける…」
下では…
ココ 「あんだ~? ご主人様~? なんか白いフードの新入りが下りてきてみたい?」
メロディは、ココの頭をナデナデしながら、
「ココ、新入りは絶対にいじめるなよ。仲良くするんだぞ?」
「はいにゃん。新入り片目みたいだにゃ?」
周りを見渡して、
「ブロディは?」
「昼寝しているにゃん」
「新入りに挨拶しなくちゃいけないに…ブロディを起こしに行くぞ」
歩くメロディの後ろでココ、見上げながら、
「新入り…手枷足枷をしてない…」




