表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/130

90話 16代聖騎士ググの微笑



 早朝、ホギ国の城門前では…


 馬に乗ったスフィアが、

「では…これでお別れだな…」


 アモンは微笑み、

「スフィア…今までありがとうな…」

「アモンも自分の好きな死に方できるといいな」

「ふふ、ワシには何も思いつかん」


 ラドンはうつむいたままだったが…四つん這いに砕け、

「スフィアさまぁぁ…」

「ラドン、シトリーを頼んだ」

「はい…お任せを…」


 シトリーはうつむいたまま…

「かあさん…」

「シトリー…絶対に死ぬなよ…」

「大丈夫だよ…絶対に…オレには母さんから受け継いだステラジアンがある…」


 最後にスフィアは雷神を見上げる。

「雷神…最後に二人きりで話したい…」

「スフィア…」



 他の仲間と離れ、二人になる。


「雷神、飛竜を手に入れろ…ドラゴニアに最後の飛竜のつがいがいる…」

「承知…」

 スフィアは見上げ、笑いながら、

「雷神…ワタシを恨んでいるか?」

「笑止…」

「厳しくした…それにお前は最高の形で応えてくれた…」

「スフィア…」

「最初で最後に言う…お前は…ワタシの最高の子だ…」

「かあさん…」

「忘れてくれ…」


 スフィアは馬から降り、雷神に深々と頭を下げて、

「この星の全てを統べる最強の神…ワタシは先に戦いに行く」

「行け…己の最後の戦いに『犬』のスフィア…」


 スフィアは、シュッと馬に乗り、アナ帝国に走った…





 3か月後…




 

 アナの帝都城の前…


 馬から降りたスフィアは右足を引きずり城門へ…


 閉じた門の横にいる衛兵を見て、

「ココを開けてくれ…ゴホゴホ…」


「なにようだ?」


「アーネストに用がある…ゴホゴホ」


「皇帝に? お前の名前と要件は?」


「スフィアと言えば分かる」


「スフィア?」


 衛兵は 門の横の小さな穴の向こうに「スフィアという者が謁見したいそうだ。足の悪い隻眼の女だ」と伝えた…


 なかなか、開かなかったが…

 やがて、重たい門は開く…


 その向こうには…

 城中の無数の兵。

 先頭に豪華なアナの法衣を纏った、初老の長いシロヒゲの左大臣フレデリクスが立っている。

 フレデリクスはスフィアの顏を凝視した後に、


「間違いない…スフィアじゃ…」


「フレデリクスか? 老けたな…」


「ハルゴ砦の奇跡からちょうど30年…」


「お前がいなければ…レナはアナから国土の割譲を勝ち取っていたのにな…」


「誉め言葉として受け取ろう」


「皇帝アーネストに会わせろ」


 フレデリクスの死を覚悟した目と口から、

「要件があるのなら、ワシが代理で聞く」


「フレデリクス…お前じゃダメなんだ…」


「なんと言われようと会わせん」


「案ずるな…アナの皇帝アーネストを殺すのはワタシの使命ではない…」


「なに?」


「雷神の使命だ」


「口を慎め…」


 その時…

 兵の群れの後方から、


「陛下がいらっしゃったぞ!」


 親衛隊4名を連れてアーネストが来る…

 兵は道を開ける…

 皇帝の前には親衛隊が剣を抜き構える…


 皇帝とスフィア微動もしない顏で向き合い…


「我がアナの皇帝アーネスト」


「ワタシが『犬』のスフィア」


 フレデリクスは腰の剣の柄に手を置き…

「皇帝…命ずれば一斉に仕掛けます…」

 皇帝はフレデリクスの顏を見て、

「フフ…左大臣よ…スフィアを見て、若返ったな?」


「御冗談を…」


 皇帝はスフィアを見て、

「世界最大アナ帝国の皇帝として要件を聞こう…」



 スフィアは天を見ながら、両手を広げる…


「この星の聖戦だ…」


「聖戦?」


「我々は雷神、『蛇』のラドン、『鷹』のシトリーが参戦する」


 天から、皇帝に視線を下げ、

「我々の目的は、完成したレナの聖水アークの奪取…」


「奪取してどうする?」


「雷神一人が飲む…その分の量しかないだろ? 裏は取ってる」


「くっ…くくく…ぷはは…飲ますと思うか? 雷神に飲ます前に捨てる」


「それならそれでいいよ…その時は、お前の命より大事なアナ帝国だけ世界から無くなるだけ…お前が大嫌いなレナがアナの領地を占拠するだけだからな」


 皇帝は怒る。


「聖騎士ググを連れて来い!!」


 すぐに、現れる。


「陛下! 何用で!」


「その者を切れ!!」


「は!」


 ググはスフィアへ…アナ帝国第16代聖剣ホーリー・ググを構える。


「スフィア! 覚悟!」


 スフィアはググの構えを見て…

「世界の聖騎士序列一位…アナの女聖騎士ググか…」


「うりゃ!!」


 サッと避けられる。

 二の手を放つ!

「うりゃ!!」

 サッと避けられる。

 何度も繰り返す…


「ハア…ハア…避けるな! スフィア!」


 スフィアは哀しい顏で…

「悲しいな…お前…能力が低すぎて…ワタシが殺すと…こっちにとってマイナスになるじゃないか…」


「なに!?」


 フレデリクスは、皇帝からのアイコンタクトを確認して、

 横にいたググの胸当ての後ろを掴み持ち上げる…


「左大臣! なにを!?」


「もうよい…解任だ…」


「は? ワタシが?」


「たった今、世界一位のアナの聖騎士は空位になった…悲しいが聖戦で聖騎士を統べる者は二位のⅩだ…」


「そんな!?」


「お前が雷神と戦うために…聖戦に集うであろう世界中の聖騎士をまとめられるのか? 怒髪天を? ロレディ―ナを? ゲッペルを?」


「できます!」


 フレデリクスは持ち上げてたググを下ろし、

「できますか? できない」


 ググは、フレデリクスにひれ伏して、

「できます! フレデリクス様! 陛下! 聖戦の指揮をこのワタシに! アナの聖騎士の! このワタシに!」


「できぬ…負けが許されぬ戦い…お前の後見人として命ずる…引け…」


「くっ…」


「お前には確かな武の才能があった…ゆえにアナの聖騎士一族からお前を推挙したが…誠に残念だ…」


「フレデリクス~聖騎士だけは~聖騎士だけは~…」


 皇帝はググを見つめ…

「お前には多数の罪状もある…屋敷で沙汰を待て…」


 ググは皇帝に頭を下げ…

「は… (逃げる計画はすでに立てていた…(きん)はたんまりあるし…アナの聖騎士? 聖戦? くだらん…命がけで雷神と戦えるか? 皇帝もフレデリクスもスフィアも…すっかり演技に騙されて…馬鹿の集まり…いや糞溜めよ…)」

 ググはゆっくり歩き去って行った。


 その道中…

 城門から出て…笑う…

「ははは! (聖水アーク…1000億金…笑える…あれで聖戦が起こるの? 今、城の中にあるのはただの水…)」


 後ろの城門を振り返り、


「もうアナがどうなろうと知ったこっちゃないし…ぷっ」


 ドドドっと取り巻き騎士の操縦する馬車が来る…

 サッと荷台に乗って…


 荷台の角に置いてあった、水の入った小瓶を手に取り… 蓋を開け一気に飲み干した。

 空いた小瓶に笑みを向け、



「1000億金…ごちそうさま」



 ググは消えた…




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ