表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/130

 インターミッション  望郷のささやき


 スフィア編が終ったところで、

 俺は改めて、盲目の妻の顔をジッと見つめた…


 変わらない… にこやかな顏だ… 


 あの夜、お前から聞いた追憶を全て話したのに…

 この先、朗読を続けても無駄かな… 

 あの闘争心は蘇らないのかな… 俺の文では…

 

 俺はうつむいた時、力が抜け『真』聖騎士伝説の本を落としてしまった。


 パン!っと、やたら大きい音がした

 その音に妻は、ビクッと反応した後に、両目をさするように顔を隠しながら、

「赤い髪のメロディ…」


「アナの赤い髪メロディは死んだ。 妊産死でな」


「悲しい事ですね…まだ若かったでしょうから」


「メロディが死んだ今…世界にもう聖騎士と呼べるのはアヤくらい…実はな…ルカ…」


 俺は落とした『真』聖騎士伝説を拾い、

「スフィアは死んでない…」


 盲目の妻は、まだ顔を隠すようにさすりながら、

「いえ、スフィアは死にました」


「死んでない!! スフィアはまだまだ戦える!!」

 思わず大声を出してしまった俺に、妻は冷静に、


「なぜ言いきれる?」


 俺は、治り草の入っていた木の器を見つめながら、

「大声を出してすまない…きっと薬草を毎日飲んだら良くなったんじゃないのかな…」


「ワタシと同じ様に治り草で?」


「じつは…おまえが」


 盲目の妻は、また話を遮るように、

「続きを」


 両手を離し、いつもは前髪で隠している両目を、隠さず顔をさらした妻と、

 俺は真っすぐと向き合い、

「ああ」


 続きのページを探す…



 もう終盤…


 すべてを読み終えたら…

 

 今、目の前にいる… このままだと…

 ただ邪悪な女として永遠に語り継がれていくスフィアは… 

 

 何を解く…?


 あなたの美しいまでの闘争心は本当に死んだのか?


 俺が好きだった… スフィアの言葉


 《 まだまだ戦える 》


 おねがいだ…


 もう一度、俺に聞かせてくれ…



 願いを込め…


 次のページをめくった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ