88話 ースフィア編ー 絵
4年後…
40歳になった…
22年ぶりの母国レナ…
今、ワタシは一人、黒いワンピースを身にまとい、懐かしい服屋の前にいる…
服屋から、青年が出てきた…
シトリーの子だ…顔で分かった。
ワタシの右の隻眼を隠す長い髪は風に、たなびく…
最近、
かなり悪くなってきた右足を引きずりながら服屋の前に来た。
懐かしい井戸から水を引くシトリーの子に、
「名前は?」
「え? おばさん誰?」
結構、化粧したのに… おばさんか…
「お前の父の、昔の知り合いだ。 名前はスフィア」
「ふ~ん、俺はシリウス」
「父はいるか?」
「うん、親父! 客だよ!」
服屋から…
シトリーが出てきた…
思ったよりも老けてない…
それよりも、長い髪をくくってるのと、伸ばした口ヒゲに違和感を覚えた…
ワタシを見て、
「あ? …スフィア?」
ワタシは、懐かしい顏の次に店を見て、
「店を閉めてないか心配してたけど、良かった」
「まあね…数年前はヤバかったけど、持ち直した。 入れよ」
「うん」
シトリーに促され服屋に入る。
もう中は、25年前と全然、違う…
ワタシが手伝っていた時に殺風景から…きらびやかに。
町が栄えだした影響もあるのかな?
品物の数も数倍になっている。
シトリーは椅子を出してくれた。
「足、悪そうだから座って」
「うん…ありがとう」
懐かしい椅子に座る。
ワタシは冷めた茶を木の器に入れてくれているシトリーに、
「妻は?」
「じつはな…この歳で二人目ができて…」
「子か?」
「そうなんだよ…いま実家に帰ってる」
ワタシは、茶を渡してきたシトリーに笑顔を作り、
「シトリー、おめでとう」
「あ? ああ…ありがとう…まだ頑張らないとな仕事…」
ワタシは膝の上の、手に持つ茶を見つめながら、
「ワタシが徴兵に行った…前夜…何に乾杯をしたか覚えているか?」
「覚えている」
意外な答えだった。すぐにシトリーの顏を見る。
シトリーは笑いをこらえる様に、
「スッ…ぷ…ス…スフィア革命だろ? ぷっ…ははは、覚えているよ」
茶を飲み干し、床に器を置いた後、腕を組んでシトリーを見て、
「時は来た」
目を瞑り笑う。
「え? 時? なんの?」
「シトリーが名付けたスフィア革命だ」
「おまえ? 大丈夫?」
「シトリーお願いがある…」
「なに? もしかして…俺と…? それは…」
「ちがうよ、髪を切ってくれ」
「髪?」
懐かしい洗い場、
座るワタシの後ろに立つ、シトリーは、
「いい匂いがするな?」
「ルカという香水だ。ワタシも気に入っている」
「あのスフィアが香水とは…ところで長さは?」
「昔のシトリーくらい」
「べリショートヘア―てのになるけどいいのか?」
「それでいい」
落ちる髪…
途中、
「スフィア? 右目? 瞑ったままだけど…まさか?」
「気にするな」
「ごめん…」
「あやまるな、片目には慣れた」
髪を切るのが丁寧になった…
やがて…
後ろから、
「終わった」
シトリーは手鏡を持って来て、後ろから手を伸ばし、映ったワタシの顔を見ながら。
「奇麗だよ、スフィア」
「やるな、シトリー」
「昔のスフィアみたいだ」
「フフ、若返ったかな…」
立ち、服屋へ行き、店内を見回る。
「なにか買う?」
「アレある?」
「なに?」
「フードのついた白い服」
「あれ? あるよ…倉庫にたくさん」
「全部、欲しい」
「うん…でも…いまスフィアが着ている服すごい高級だぞ?あれは安物だぞ?」
「動きやすい。それに…」
ワタシは真顔でシトリー見て、
「スフィア革命のカラーは白でいきたい」
「え? うん…分かった…取ってくる」
シトリーは外に行った。
一人で待っていると、カウンターの上に絵がかけらていた。
シトリーと、その妻とシリウスが描かれたモノだ。
シリウスはまだ小さい時の絵。
「都市ルーベラにもあったな? 家族の絵を書きますって…」
よく絵を見て、
「幸せそう…家族か…」
すると、シトリーが頼んだ服を持って来て、
「8着あった」
「ありがとう」
1着取り、
「着ていいか?」
「うん」
試着室で、白いフードのついた服を着る。
用意していた白い布を右目を隠すように巻き縛る…
鏡を見る…
目を瞑る…
両手の拳を握る…
「さてと…行くか…」
覚悟を決めて、右足を引きずり試着室から出る…
ワタシの姿を見たシトリーが…
「威圧感…? なんか感じが…」
金の入った小さな布袋をカウンターに置き、
他の白いフードつきの服を持った後に、シトリーを見る。
「シトリー」
「な、なに?」
「この場から革命に動く」
絵を見て、
「安心しろ、シトリーの家族は絶対に殺さないからな」
足を引きずりながら、すれ違いざまに、
「シトリー…さようなら」
後ろから、怯えを隠す声で、
「スフィア…また、いつでも来い…」
無言で店を出て、速く去る。
右足はまだまだ動く…
今回、連れて来た雷神とラドンの待つ、
5キロ離れた大きな木の下へ向かう。




